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エピローグ

「ようやく落ち着いて来たな…。」


「そうですね。最近では公国への移住希望者が増えていると聞きます。ようやく、世間もディノス様の魅力に気付いてきたと言えるでしょう。」


何となく呟いた言葉にリサが返事をする。


公国の運営もひと段落してきた頃、いつものメンバーでお茶を楽しんでいる。

いつものメンバーとはリサ、アリス、ティニー、ジュリ、そして母上だ。


ちなみに給仕はセバスが担当している。

王国貴族からも引退しているようなので、現在は私が個人的に雇っている形だ。


「兄上の子供達も、みーんなディノス様に仕えるって張り切ってるようですよ!?お陰で本家を継ぐ人間をどうするかで悩んでいるようです!」


アリスが元気に伝えてくれる。

セバス一人に給仕を任せているので、少し落ち着かないようだ。


「お爺様も近い内にペイスに来るって言ってたわ!もう大司教は引退するみたいよ!」


ティニーの言葉に驚く。

確かに結構な高齢だが…。かなりの大物がやって来る事になるな…。


「世界樹のエルフ達が来た事で各地から亜人や獣人が集まって来てますし、まだまだ人が増えそうですわねぇ〜。」


ジュリの言う通り、世界樹の麓に住むエルフ達は特別な存在だったようだ。

この世界と世界樹を繋ぐ存在であり、大陸中の亜人や獣人から尊敬されているらしい。


現在でも多くのエルフ達が残っている事から、世界樹に認められた街とも呼ばれている。

……エルフ達の間では不思議な踊りが流行しているようだが、三つ子の踊りとは関係無いはずだ。


「ディがみんなに認められて私も嬉しいわー。たくさんのお嫁さんを作って、王様にまでなっちゃうんですものー。」


母上がヨシヨシと頭を撫でてくる。

……もう私も子供じゃ無いんだが…。


避けるとショックを受けてしまいそうだし、仕方無く撫でられておく。


「…お二人とも、嬉しそうで何よりですな。」


セバスが微笑ましそうに感想を述べるが…。


(二人とも…?私は仕方無く撫でられているんだが…。)


何とも納得いかない感想だ。

それではまるで、私がマザコンみたいじゃ無いか。


(母上はずっと眠りについていたし、どうしても気になってしまうのは当然だ。……何より、邪神を宿している事で親の愛というものには弱いんだよな…。)


だから仕方無いはずだ。

決してマザコンじゃ無い。


そもそも邪神が私にくっついて来たのは、母の愛を私から感じたからだと思っている。

リサは邪神が私に惚れたからと言っているが、邪神の元に行った時の私は0歳だぞ。

いくら何でもあり得ないだろう。


「公都の悪党どももようやく一掃出来た。…結局、アレの後始末が一番大変だったな。」


公都で行われていた犯罪は思った以上に根深かった。

実行犯はあの街の人間なのだが、資金や素材の提供が多くの有力者から行われていたのだ。

もちろんその中には貴族も含まれる。

それも王国だけで無く、周辺国の貴族達だ。


公都で集めた証拠は関係国にも渡したが、どれだけの人間が裁かれるかは不明だ。


「結局、本当に怖いのは人間かもな……。」


ふと、そんな事を思う。

異界虫を倒すように簡単に終わらないのも厄介な所だ。


「……そう思うのは、ディノス様だけかと。ディノス様がいらっしゃらなければ、大陸は滅亡していました。異界虫を簡単に倒せる人間は滅多におりませんので…。」


リサが『困った人ですね…。』と言う表情で見つめてくる。


……そう言われてもな。

未だに貴族の狡猾さにはついていけない。

公国を建国する時も多くの助けがあったお陰で何とかなったんだ。


(その辺りの事は得意な人間に任せるしか無いか。)


ナーナシは得意なようだし、他にも王都の学生から勧誘してみるか。

家や王家に話を通せば問題無いだろう。



「そう言えば、また面白い事を思い出したんだ。どうやらこの世界にはいくつもの大陸が有り、そこに多種多様な人々が住んでいるらしいぞ。」


別の大陸が有ると言うのは昔から言われていたが、それを確認した者はいない。

誰も海を越えられなかったからだ。


「今度、別の大陸を目指して旅をするのは面白いそうだな。」


でも、今の私達なら可能だろう。

まだ見ぬ世界……。ワクワクするな。

邪神もこの世界に来た時はこんな気持ちだったのだろうな。

これでこの物語は完結となります。

お読み頂きありがとうございました。

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