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最後の戦い

「戦いだな。」


「敗北者が相手とは些か興醒めだが…今やオレも敗北者か。リベンジまでの肩慣らしにしてやろう。」


父と兄が虫共に突っ込んで行く。

…あの二人、本当に自由過ぎだろ……。


「お二人共!シェールの魔法は使わないで下さいよ!」


「……良かろう。弱者相手にはちょうど良いハンデだ。」


「……つまらんな。だが、暴れられるなら我慢してやるか。」


…不服そうに返事をして、また暴れ出す。

あの虫共はそれぞれがEx級に相当する強さなのだが、軽く四、五匹を相手取っている…。

やはり化け物級の強さだな…。


シェールの魔法を使わないと承諾してくれたのは本当に助かった。

使えば魂ごと消滅させてしまうからな。

折角全ての魂が虫共に食われるまで待っていたのに、消滅したら何の意味も無い。


(ヴァイスに封印されていた魂はどれも汚染が酷過ぎたった。虫と融合した方が怨念が薄まるとか、どれだけ深い憎しみなんだよ…。)


最初は魂を回収しようとしていたが、出来なくて正解だった。

あのままだととても浄化なんて出来なかっただろう。


後は適度に暴れてくれればもう少しマシになるはずだ。


(この魂達もシェールの犠牲者だからな。全員救ってやろう。)


そう考え、皆に指示を出す。


「リサ達はすぐに動き、敵を無力化してくれ!その後はここへ連れて来るように!母上はここで浄化をお願いします。」


「「「「はい!!」」」」


リサ、アリス、ティニー、ジュリが敵へと向かって行った。

あの四人なら安心だな。


黄金郷エルドラドは…。イヴ!ミリーナ!覚醒珠を与える!キリとアイネは二人で常に行動しろ!」


「「「「「「はい!!」」」」」」


あの虫の強さはEx級の強さを持ち合わせている。

まだ年齢の低い獣人組には少し厳しいだろう。


それでも、私の目の届く範囲で戦ってくれればフォローは出来るから、頑張って欲しい。


イヴとミリーナは『魔王』へと覚醒し、すぐに敵へと向かって行った。



皆の戦いを見ると…。


父と兄は、見る必要が無いな。

剣を振るごとに虫が吹き飛んで行く。

二人の居る場所はどれだけ離れていてもすぐ分かる。


(本当はあの二人には戦って欲しくないんだけどな……。)


その内父から…。


「余を使った対価を払え。なに、余と戦うだけで良いぞ。」


…と言って戦いを挑まれる気がする。

私の命令も、意思の力で無視してしまいそうだ。


兄は…。


「…ふむ。聖霊化の仕組みは大体分かった。後は好きにさせて貰う。……まずは貴様との再戦だな。」


…と言って本気の戦いを挑まれそうだ。

時魔法による未来視などして無いが、その光景が簡単に浮かんでくる。


聖霊化した時点で避けられない気がするが、この戦いが終わったら厳重に封印させて貰おう…。



(…リサはどうだ?この程度なら余裕は有ると思う……が。)


「リサ!ちょっと来てくれ!」


「はい!何でしょうか?」


数百M先で戦っていたリサが一瞬で私の前にやってくる。

……対峙していた虫は一瞬遅れで真っ二つになったみたいだ。


「…少しだけ、力をセーブしてくれ。リサの力が強過ぎて、敵の魂が傷ついている。」


傷ついていると言うか、完全に戦意喪失している…。

それ自体は良いんだが、このままだと無に帰ってしまうぞ…。


「御心のままに。」


私に一礼した後、また数百M先の虫を斬り始める。

……今度は地のクナイも使い、十匹程まとめて倒し始めた。

…手加減と言えるのかは微妙だが、結果としては問題無いだろう。


(…まさか、手加減しろと言う事になるとはな…。)


恐る恐る他の三人を見てみると、思った通りの惨状だった。



「アリス!」


「はい!!」


「……雷剣か、龍剣、片方だけの使用にしてくれ。両方使用すると、魂までダメージを負ってしまうようだ。」


「分かりました!」


アリスの相手は魂まで黒焦げになっていた。

……魂が焦げるなんて初めて知ったぞ。



そして、もっと問題なのが…。


「ティニー!!」


「なに!?」


「魂が融合したまま昇天させるんじゃ無い!あれじゃ浮かばれないぞ!?」


「そうかしら?自分の意思で融合したんだし、自業自得じゃない?」


ティニーは少しだけ浄化した後に、無理矢理魂を昇天させていた。

あれだけの強い怨念をそのまま昇天させるなんて意味不明だが、ティニーにとって不可能など無いのだろう。


実際昇天した後はどうなるか不明なので、浮かばれるかどうかは不明だ。

でもティニーが自業自得と言ってるし、良い結果にはならなそうな気がする。


「……ともかく、昇天はこちらでさせるから、浄化までにしといてくれ。」


「はーい。…やっぱりディノスは優しいのね!」


私の言葉に満面の笑みを浮かべ、また戦場へ戻って行った。

……少しは常識を守って欲しいものだ。



「ジュリは……。」


「どうしましたかぁ〜?」


「その……賢者の石か?それを使った攻撃は防御不可能なようだな。」


ザダの時に言っていた原種とやらの特性だろうか。

賢者の石を通して放つ魔法矢は、敵の攻撃を軽々と突破し、魂を拘束している。


(…とは言っても常識の範囲だ。流石に経験豊富なだけ有る。)


「……本当は別の使い道が本命なんですよぉ♪ 今度お見せしますねぇ〜。」


「……そうか。」


地雷を踏んだ気がする。

まさか、経験豊富と言う単語に反応したのか?いくらジュリが年を――

「ご主人様ぁ♪ それ以上は『メ♪』ですよぉ?」


「……ああ。そうだな。」


…最近はジュリも当たり前のように考えを読んでくるな…。

目も少し光って魔眼を発動しそうになってるし…。本当に注意しなければ。


…一応こうしながらも、お互いやる事はやっている。

私は虚無之星を使ったままだし、ジュリも色とりどりの魔法矢を放っている。



(……ジュリは問題無さそうだな。黄金郷エルドラドも…。大丈夫だな。皆で連携してしっかりと対処している。私達は個人で戦う事が多いし、ああ言う連携は憧れるな…。)


キリとアイネのフォローをしながら、数的不利にならないように注意して戦っている。

あの年で歴戦の風格を思わせるような戦いぶりだ。


母上も次々と浄化を進めてくれているし、セバスもこちらへやって来る虫共を排除している。

セバスもまだ覚醒はしていないのだが、技術力でそれをカバーしている。

トバスリーと言い、老練の域に達している達人は本当に底が知れない。



そして……。


「ヴァイス。そろそろ眠れ。お前は好き放題し過ぎた。」


「そんなァァ!お助けをォォ!!慈悲ヲオオ!!!」


最後にもう一度聖句を唱え、ヴァイスを虚無に葬る。

邪神の使徒なら死ぬ事は無いだろう。…永い眠りになるが、反省していろ。



虚無之星ブラックホール



…全てが消え去る頃には、皆の戦いも終わっていた。

誤字脱字報告ありがとうございます。


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