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最後の男

……『黒衣の軍師』と名乗った男は、その名の通り全身黒ずくめだった。

黒いローブを着てフードを被り、顔も黒い面で隠れている。

その上、気配を遮断するアイテムを使って、魔力も隠蔽しているようだ。


正直、何でこんな怪しげな人物を雇ったのか謎だ。

恐らく、『裏切ったら殺すだけ』と言う感じなのだろうな…。


私と兄以外は全員席から立って構えている。

…かなり怪しげな男だからな。


「貴様、オレの物に何をしている?」


兄が黒衣を詰問している。

兄は正統後継者だから、『(いずれ)オレのはいか(になる男)』と言う意味で言っているんだろう。


黒衣はトバスリーの首を片手で掴んでいる。

血塗れだが、ちゃんと息はしているな。


「此奴が、シェール家に入り込んだ虫です。お二方、どうか気をつけて下され…。」


「うるさいですねェ。」


…黒衣がトバスリーの首を締めて気絶させたようだ。

……この男、全く魔力が探れない。

ある程度までは探れるのだが、それ以上は黒いモヤで隠されてしまっている。


「貴様、聞いているのか?」


「貴方も、うるさいですよォ。」


黒衣が兄に指を向けると、兄が固まった。

…僅かに黒い影に覆われ、身動き一つしなくなった。


「……何をした?」


ゆっくりと立ち上がる。

ただ指を向けただけに見えたが…。…禍々しい魔力を感じた瞬間に兄が固まってしまった。


「時は満ちたんですよォ。貴方もお遊びは止めて、早く覚醒しなさい。」


そう言って、黒衣はフードと仮面を取る。

銀髪、銀目の、尖った耳が目に入ってきた。


「ヴァイス……。」


「んーー。そうですよォ。」


やはりコイツか…。

ハイエルフにして邪神の使徒…。


セバスに合図して、母上を下がらせる。


「…時が満ちた、とは?」


コイツは私を誰かと勘違いしているようだし、このまま出来る限りの情報を引き出してやる。


「邪神復活に決まってるでしょォ?」


「……そうか。そうだな。」


「わざわざ異界の門を開いた甲斐が有りましたよ。…大変でしたがねェ。…それもこれも、貴方のせいですよォ?何を血迷ったか、迷宮都市ペイス暴走スタンビートを止めてしまって…。お陰で死都を作れなかったじゃ無いですか。どうせ異界門を作るなら、やはり怨念渦巻く都の方が良いに決まってるでしょォ?」


コイツが…。迷宮地下に現れたと言う、白都滅亡の黒幕か……。


ティニーが暴れそうになるが、アリスが何とか止めてくれたようだ。


「……。」


「シェールの血に翻弄されるのは分かりますけどねェ。少しは私の苦労も分かって下さいよォ?」


「……邪神復活には何が必要なんだ?」


「んん?その辺りの事は知らないんですかァ?シェール家の人間の魂に決まってるじゃ無いですかァ。正確には魂では無いのですが、似たようなモノですね。」


「……そうなのか。」


…道理で、儀式のキーアイテムが見つからない訳だ。


「そもそも、何故シェール家の人間が、あれだけ超越した力を持っていたと思いますかァ?それは、邪神の器だからです!邪神の依代だからこそ!あれ程の力を持っているのです!!」


「……なるほどな。」


「そして、邪神の器で有るからこそ、邪神の力には決して逆らえないのです。私達使徒は邪神の御力を借りた存在。シェール家の者は絶対服従ですよォ。」


私達、か……。


「んんんーー。どうやら、まだ覚醒には時間がかかるようですねェ。良いでしょう。色々とお話をしてあげます。」


「ああ。」


「シェールの器は、お互いが殺し合う事でより純度を増して行きます。普段はそれにリミッターがかかっていて、同族殺しを忌避しているようですねェ。まァ、力にむしばまれて、正気を失っていくらしいですし、生存本能のようなモノでしょうねェ。」


なるほどな。同族での戦いを避ける訳だ……。


「ですが、今代は別でした。ヌルドが二人も仕留めてくれたお陰でェ、六つもの器が集まるのですよォ!これで、邪神はより完璧な姿で蘇るでしょォ!!」


「六つ?ドリスも含めるのか?」


「勿論ですよォ!未熟なれど、魔王として覚醒させれば器は取れます。フィアスが欲望の魔法を覚えてくれたお陰で、未熟な未熟な器が取れましたよォ!」


「……フィアスが魔法を覚えたのも?」


「んんーー。私の功績は半分程度ですねェ。マイハや貴方への敵愾心てきがいしんを煽り、適度に魔法と相性の良かった馬鹿ディーガンを送ったくらいです。下地は作りましたが、結局は本人の資質次第ですからねェ。」


…空気が震える。

固まっているはずの誰かが、今にも牙を剥こうとしているようだ…。


「器を集めてどうするんだ?」


「それは勿論、貴方が使うんですよォ。六つもの器なんて、人の身では耐えられませんからねェ。使徒である貴方しか使えません。」


「……私は、使徒なのか?」


一番聞いておきたかった事だ。

何故使徒だと断言出来る?

私はコイツにシンパシーなど感じて無いぞ?


「んんーー。そこからですかァ?貴方は使徒以外有り得ないのですよォ。貴方の体がこの世に生まれ落ちた瞬間、元々有った魂は邪神への生贄に捧げられました。ですから、今居る貴方は使徒以外考えられないのですよォ!」


……ちょっと、待て。

コイツ……もしかして……。


「その儀式は……貴様が?」


「勿論ですよォ!マイハは善神に救われたようですが、本命たる赤子の魂は邪神の身元へと送られました!ですから、早くシェールの血に覚醒し、『純魔法』を習得するんですよォ!」


…………頭が沸騰しそうになったが、黒衣ヴァイスが気になる事を言ってくれたお陰で何とか踏み止まれた。

深呼吸をして、何とか心を落ち着けよう……。


「……純、魔法とは……?」


「貴方に与えられた、シェールの魔法ですよォ!あらゆる魔力を支配下における、この世界でも最強の魔法です!貴方は劣化版を使ってる様ですが、早く覚醒するのです!そして私の『魂魄魔法』を完成させるのですよォ!!」


……ようやく、冷静になってきた。

しかし、純魔法か……。やはり、私の『魔力操作』はあくまで劣化版だったか…。


「魂魄魔法?」


「私が邪神の使徒になった時に頂いた魔法ですよォ!…ですが、欠陥品で、上手く使う事が出来ないのです!!全く!邪神ももっと使える魔法をくれれば良いモノを!」


…普通なら『お前が未熟だからだろ。』と言ってる所だ。

だが、コイツはハイエルフだ。亜神級の力を持ち、魔法に長けた種族であるのに使えないとなると、本当にハズレを引いたのか……?


「……ドリスはどうなった?」


最後に、気になっていた質問をする。

もう聞きたい事は大体聞けただろう。


「ドリス?ガキならその内死にますよ。魔法が劣化版だったせいで魔王化も弱く、器も小さかったですからねェ。即死は免れたようですよォ。」


……気配を探ると、別邸の方に居るようだ。

私達が住んでいた場所では無く、別の別邸だ。


『パリィィィン!!』


すぐ近くから、何かが壊れる音がする。


「道化よ。消えろ。」


兄がヴァイスを斬る。

……フィアスの話が出た時から、ずっと待ち侘びていたようだ。


本当は私がやりたかったが、私は救えたからな……。

ここは兄に譲っておこう。


「ば、馬鹿な…。何故、動ける……。」


ヴァイスが呻き声を上げながら倒れる。


(これだけしても、まだ魔力を隠蔽しているのか……。)


「クソッ!どうなっている!?早く覚醒するのです!同胞よ!」


私に叫んで来るが、無視しておく。


そうしていると、リサの方を向いて叫び出した。


「えェい!仕方無い!貴様が動きなさい!我が配下の魔人よ!その肉体をやったのを忘れたのですかァ!?貴様程度の強さでも、一時の時間は稼げるはずです!」


「……私が?ご冗談を。」


リサが鼻で笑っている。


(……どうやら、リサが魔人種になってるのもコイツが原因か……。魂魄魔法とやらで、無理矢理魔人の魂を入れたのか?)


ただ、リサはずっとリサのままだ。

リサの中に宿った魔人とやらは、早々にリサに屈服したんだろうな……。


魔力暴走については不明だが、魔人の力を宿した事でリサの苦しみが増していたのは間違いない。


(この男…。どこまで地雷を踏んでいくつもりだ?)


私もキレそうになっている。

母上だけで無く、リサまでにまで…!


「私に命令出来る方は、未来永劫ディノス様お一人だけです。私に何かさせたいのでしたら、ディノス様をお通し下さい。」


…リサの声を聞いて、少しだけ落ち着く事が出来た。


(…そうだ。じっとしている場合じゃ無い。)


母上とセバスに目線で合図する。

ドリスはまだ死んでない。

まだ罪を犯してないようだし、救えるなら救うべきだ。


「クソ!どうなっているのですかァ!?皆、シェールの血に汚染されてるとでも言うのですかァ!?」


ヴァイスが叫んでいるが、無視する。


(これで……。兄との戦いも避けられたか……。)


今の話を聞いて、わざわざ戦おうとは思わないだろう。


安堵している私に、兄が話しかけてきた。


「では、続きをやるか。残すはオレと貴様の戦いだけだ。」


……何故か、剣を構えて…。

誤字脱字報告ありがとうございます。


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