夢か現か
ーーー???ーーー
「……そろそろ話は終わりだな。では、始めようか。」
「お待ち下さい。父上。……本当に、戦うしか道は無いのでしょうか?」
「何を言うかと思えば……。貴様は戦いに来たのだろう?この公都に。余を打ち倒して邪神の復活を止めるのでは無かったのか?」
「それは……。確かに、そうですが……。」
「ならば道は一つだ。…手加減はせんぞ。」
ーーー
……なんだ、これは。
夢?それにしてはリアルだ……。
ーーー
「剣は……抜かないのですか?」
「……ふ。シェールの戦いは結局の所、どちらの魔法が強いかだ。貴様はシェールの魔法を使えんようだし、余の魔法を受け切ったら勝利としてやろう。」
(それは…有り難いのか?接近戦の方が有利な気がするが…。それに…。何だ?何か、違和感が……。)
私の答えを待たず、父が魔法を行使する
父に禍々しい魔力が集まって…いや、違う。
父から禍々しい魔力が放出されているのだ。
…それも無尽蔵とも言える量と、触れただけで絶望に染まりそうな密度だ。
『奈落』
私を中心に虚無が広がっていく……!
なんだこれは…!
威力だけなら欲望の魔法より遥かに強い!
「神剣よ!!!……ック!魔力が……!!要石よ!!!!」
神剣を使って虚無を抑えるが、全然魔力が足りない…!
鞘が…僅かに邪魔をする…!こんな事なら抜刀しておくんだった!
要石から際限無く魔力を吸収する。
(……なんて威力だ!これがシェールの魔法か!!)
大地が死んでいくのが分かる。
…周囲一帯は長い間、死の荒野となるだろう……。
「……見事だ。よくぞ耐えた。」
「はぁ……!はぁ……!」
何とか耐えきったが、魔力を使い過ぎて限界が近い…。
神剣を支えにして、何とか立っている状態だ。
「終焉だ。余の望みは叶わなかったが、悪くはない終わりだ。……殺せ。」
「…………。」
「シェールの血に溺れた人間を討つのはシェール家の定めだ。…早くするが良い。」
「……は、い。」
神剣で父を斬り、絶命させる。
(……次は、兄を…。)
「……来たか。…父との戦いも終えているようだな。」
「後は…お前だけだ。」
後はこの男を倒すだけで終わる…。
早く、殺らなければ……。
「……ふ。少しは楽しめそうだな。」
アイズが神速で剣を振ってくる。
距離は離れているのに、当たり前のように斬撃を飛ばしてくる。
その斬撃を斬って消滅させていくが、思った以上に重い。
(なんだ…?ただの斬撃じゃ、無い……!?)
「…不思議に思っているようだな。私の持つ『星剣』の効果だ。」
「星剣?」
「貴様の持っている剣と同じだ。…貴様は浄化して神剣としたようだが、本来は個人の特性に合った剣となるのだ。…お喋りは終わりだ!行くぞ!」
『全てを星に』
アイズから爆発的な力が吹き出してくる。
これが星を相手にする感覚か……!
(だが、その対策は考えている…!)
躊躇せずに大地から力を吸収する。
この周辺の大地が死んでいるなら、他の大地から、大陸中から集めてやる…!
「……ほぉ。素晴らしい。……行くぞ。」
「ああ。」
アイズの踏み込みと同時に本邸は崩壊した。
私が剣を受けると、公都の半分が衝撃で崩れていく。
(早めに決着をつけなくては…!)
今度は私から攻撃する。
公都のもう半分が消し飛んだが、必要な犠牲だ…!
ーーー
……なんだ、これは。
何故、兄と躊躇いなく戦う…?
必要な犠牲…?街半分を消し飛ばして、それだけか…?
ーーー
全ての建物が消滅しても尚戦いは止まらず、大陸から緑が失われていく…。
(…そろそろ、決着をつけなくては!)
この大陸が枯れたら少し面倒だ。
「行くぞ!」
「ああ!!」
私の考えに呼応したように、アイズが渾身の一撃を放つ。
私もそれに応えて…!!
「……終わりか。最期に中々の戦いが出来た。」
「……。」
「……さらばだ。」
アイズが崩れ落ちていく。
まるで砂のように足元から崩れ、そのまま風に流されていく。
「終わった……。」
そして、公都からは全ての人が消えていた。
「……辺りが、暗く…。…眠くなって来たな。」
目を瞑ると、全てが消え去っていく。
記憶も……。想いも……
ーーーディノス視点ーーー
「……はぁ!」
慌てて飛び起きる。
何か、とても嫌なモノを見た気が……。
「あん…!……ん〜。…おはようございますぅ。……また、続きをしますかぁ?」
隣で寝ていたジュリに手が当たっていたようだ……。
…どことは言わないが、柔らかい感触だった。
「…昨日はずっとだったし、流石に止めとくよ。」
熱いシャワーを浴びに行く。
(なんだ……?昨日は、我慢出来なくなったジュリに襲われた…はず、だよな?)
夢か…?…いや……。
夢では無い、と思う…。
何を見たのかも覚えていないが、何となくそう思う。
それも一度だけで無く、何度も……。
(分からん…。だが…。)
リサが以前言っていた事を思い出す。
「私達が見落としているもの……。」
その片鱗に、ようやく触れられた気がした。
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