パレード
それからすぐにパレードの準備が進められ、私とティニーも着替えさせられた。
大司教様に色々と手伝いたいと伝えると、快く賛成してくれた。
簡単に出来る事を伝え、計画を立てる。
この計画はティニーには内緒との事だ。
いつも驚かされてばかりだから、たまには驚かせたいらしい。
やる事自体は単純で、祝いの場で壁を作ったり結界を張ったりするだけだ。
ティニーは皇国に行かなかったし、実際に見れば少しは驚くだろう。
「ディノス!最高にカッコ良いわ!やっぱりディノスには神聖な白もよく似合うわよ!!…あ!いつもの黒っぽい服も素敵よ!もー、なんでも似合うんだから!」
ティニーがハイテンションに肩を叩いてくる。
私は今、白のタキシード服を着ている。
その上に聖国の紋章があしらわれたローブを着ている。
かなり上等なローブで、白というよりは白金のような光沢を放っている。
「ティニーも綺麗だよ。花嫁衣装みたい、というか、花嫁衣装なんだよな?」
肩と背中が大きく開いた衣装で、スカートが足元にいくに連れ大きく広がっている。
こちらも白金のような輝きを放ち、しかも細部に至るまでしっかりと縫製されている。
光沢があって滑らかな質感で…見てるだけで心が奪われるようなドレスだ。
(大司教の娘が着るとなると、かなり気合を入れて作ってそうだな…。)
ヴェールをつけて大人しそうにしているティニーを見ていると、別人のように感じる。
話せばいつものティニーだと安心するが、そのギャップに戸惑う。
「…それでは婿殿。」
「はい。」
ティニーと一緒に大聖堂のバルコニーに出る。
目の前には既に大勢の観客が集まっていた。
「本日は新たに聖女となったティニー様を祝福し、祝いの日とします!
聖国の長年の悲願である聖女が誕生したのです!皆で祝いましょう!!
更に!ティニー様のお隣にいらっしゃるのは最近噂になっている『神の使い』様です!!
この度聖女様と婚約されたという事で、聖国までいらして頂きました!!」
司会が私達の説明をしてくれる。
私は名前を言う訳にはいかないので『神の使い』だ。
結婚の時はしっかり名乗れるようになっておこうと思っている。
「今、紹介して貰った『神の使い』だ!名を告げられない事を許して欲しい!だが!!
今回来た目的は婚約発表をする為だけでは無い!
聖国を守る為だ!!
出でよ!『守護天使』!!」
天使を召喚する。
天使と言っても外側だけで、中身は龍の化身だ。
聖国の秘宝の中に天使を召喚するアイテムが有ったので、それを使わせて貰っている。
アイテム自体は使い終わってガラクタになっていたので、力を注いで使い回しているのだ。
(本来の天使とは性質が変わっているが、力有る存在という事に変わりは無い。)
「「「「「おおおおお!!!!!」」」」」
「更に!あちらをご覧下さい!!
広場に城壁外の映像を映しています!!」
受信機を使って映像を届けているらしい。
白都の城壁の外の荒野が映し出されている。
「『天壁』!……『天壁』!」
皇国で作ったように、天まで届くような高さと分厚い壁を作っていく。
映像はぶれているようだが、しっかりと追って来ているようだ。
「『守護結界』!!」
全ての壁作り終えた所で結界を張る。
壁が輝きを放ち、目に見えて存在感が増していく。
(離れた位置からでも余裕で出来るな。……しかし、途中で静かになってしまったが、どうしたんだ?)
観客どころか司会や大司教、それに居並ぶ神官が口をあんぐりと開いている。
…どうやら驚いているだけのようだ。
「みんな!!この人が私の旦那様よ!!みんなを導いてくれるのよ!!!」
「「「「「「「「おおおおおおおお!!!!!!!!」」」」」」」」
ティニーの言葉に、割れんばかりの叫び声が轟く。
神官達も我に返ったようで、口々に喜んでいる。
「流石はティニー様!私は幼少の頃から信じておりましたぞ!!」
「儂の方が信じておったわ!!シェール家に行くと白都を去った時は、この世の終わりかと思ったぞ!!」
「あの天使……まさか伝承の…。ああ…。救世主が降臨されたんだ……!!」
「……どうやら、これからは婿殿にも驚かされる事になりそうですな。」
「ふふーん!お爺様!これがディノスよ!!最高の旦那様なんだから!」
一応事前の話で伝えていたが、話半分で聞いていたみたいだ。
(いや…普通は信じられないか…。)
自分でも非常識だと思うしな。
「あ、ああ!!すみません!!目の前の光景に心を奪われていました!!
これより『救世主』様、聖女様、大司教様は聖国中を周って、神の御技を行って貰います!
ですが安心して下さい!最後には白都でパレードを行います!!
是非!是非!!聖国の救世主様を!!一目ご覧になって下さい!!」
司会が大声で叫んでいるが、観客にどこまで届いているか不明だ。
ずっと歓声が鳴り響いている。
(一瞬で『聖国』の『救世主』に変わっていたしな…。まぁ、ティニーの故郷だし見捨てる事はしないが…。)
神官と言っても国を経営していく以上、綺麗事を言ってるだけじゃ駄目なんだろうな…。
「楽しかったーー!!聖国中がワタシ達を祝ってくれたわ!!もう!最高の気分!!」
「私も楽しかったよ。皆が心から聖女の誕生を、ティニーを祝っていた。……本当に良い国だ。」
私の魔法を見せるまでは、皆が心からティニーを祝福していた。
自分の好きな人があそこまで崇拝されているなんて誇らしい限りだ。
「それを言うならディノスも同じよ!……もう!ワタシに黙ってあんな楽しい事を計画していたなんて!…でも最高だったわ!!」
ティニーが抱きついて来る。
結局ティニーに黙ってやった事を、ティニーにフォローされた感じになってしまった。
格好つかないが、喜んでくれたみたいだし良いか。
「白都のパレードは大勢の人が並んでいたな。建物の屋根にも登っていたし。…初めてのパレードだったが、皆が喜んでくれて良かったよ。」
「ワタシはずっと前にあるけど、その時は退屈なだけだったわ。やっぱり誰とやるかが重要よね。」
ティニーと抱き合ったまま会話する。
今は全ての事が終わり、二人っきりだ。
「そうだな。ティニーとならどこへ行っても楽しそうだ。」
ティニーにはいつも元気を貰っている。
「そうね!目指すは世界一周よ。」
夜も更けて来て、肩を出しているティニーは少し寒そうだ。
ティニーをローブで包み、一緒にベッドに座る。
離れるのも嫌だったので、ティニーの位置は私の膝の上だ。
「ねぇ……。今日のワタシ、綺麗だった?」
「ああ。何度も見惚れたよ。」
「そう…。ありがと…。この衣装、お母様の花嫁衣装なんだ。小さい頃に見つけて、ずっと着たいって思ってたの。」
「そうなのか。…その割には綺麗だな。」
「…ふふ。当たり前でしょ?高価な衣装だし、年に何回か点検に出してるみたいよ。」
「なるほど…。」
「今日はずっと昔からの夢が三つも叶ったわ。…聖女になる事。…花嫁衣装を着る事。…素敵な旦那様と、過ごせる事。」
「…それは光栄だ。私の夢は…なんだろうな。ゆっくり過ごすとかかな?」
お互いの夢の話をしながらゆっくり過ごす。
私の夢については皆を交えて決めましょうと言われ、却下されてしまった。
笑いながら夜遅くまで話し合い、一夜を共にした。
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