ヒメとの話し合い
ギル達の魅了事件も無事?解決し、ようやく落ち着いてきた。
シルフィはあの後訓練でしごかれたらしいが、回復してやる事くらいしか出来なかった。
被害者の生徒達も意識を取り戻し、日常生活に復帰している。
魅了された間の事は夢のような感覚だったらしく、余り覚えていないらしい。
私もその間遊んでいたと言う訳では無く、戦乙女の皆に龍の力を与えていた。
彼女達は圧倒的な力に驚いていたようだが、早速力に慣れる為に訓練を始めている。
朝早くから夜遅くまでずっと頑張っているようだ。
後は古都から貰ってきた至宝を整理している。
兄との戦いで力を失ったアイテムや、壊れていて使えないガラクタだ。
後者の方は私が古都の守りを固める時に力を貰っているので、殆どがただのゴミだ。
前者の方も貰って来たのは殆どが使い切りのアイテムなので、普通なら使えない。
ただ素材としては一級品なので、これらを利用して新しい武器を作ろうと思っている。
(私には鍛治や錬金術の技術は無い。作ると言うのは大袈裟か…。要は力を失った武器に力を注ぎ、使えそうなアイテムをくっつけるだけだ。)
使い切りのアイテムでも、容れ物が残っているなら使いまわせる物もある。
魔力的にも無理矢理繋げ、擬似的に一つのアイテムとするつもりだ。
初めてやるが、恐らく出来ると思う。
(作ろうと思っているのは『龍剣』。アリスの二本目の剣だ。…これで私達の武器は全て完成する。)
折角手に入れた龍の化身を剣に宿らせるつもりだ。
かなり無茶な行為だが、皇国に眠っている武器の中には相性の良い物が有るはずだ。
その他にも、セバスを通じて大陸中へ転移出来るように準備している。
異界虫に対抗する為、各地に龍の化身を配置する予定だ。
「そして…ようやくやって来たか。」
「ええ…。ギル達も元気になったわ。……本当にありがとうございます。」
やっとヒメとの会談の席を設ける事が出来た。
一学期の頃から待ちわびていた話し合いだ。
「今回の話は聞いている。…本当に助かった!ヒメに対して酷い事をしてしまったようだし、これからは一層ヒメに尽くすつもりだ!」
「私達が未熟なばかりにヒメを悲しませるなんて…。ディノス。貴方には感謝してもしきれません。何かあれば言って下さい。」
「俺がヒメの美しい柔肌を叩いていたなんて!!この腕を切り落としたいくらいだ!!…だが、そんな事をしても自己満足するだけだ。今後一生をかけてヒメに償っていくぜ。…だからお前もこっちに加われ!五人目の席はずっと空けておくからな!!」
黄髪、青髪、赤髪も元気になったようだ。
…相変わらずエドガーは人をイラッとさせるのが上手いな。
黒髪もいるが、ヒメの後ろで控えている。
「それでヒメ。物語の話もしようと思っているが、大丈夫か?」
私の方はリサ、アリス、ジュリとエルフ娘達だ。
こちらは全員知っているので問題無い。
「…ええ。皆には後で説明するわ。」
私の従者達を見回した後、決意を固めたようだ。
受け入れられた前例を見てホッとしたのかも知れない。
「じゃあ、まずは私から話そう。…と言っても、そこまで話せる事は無いかな。」
ゲーム知識を持っている事、邪神復活を阻止する為に動いている事、シェール家とは敵対する予定である事を話す。
「悪いが私の能力については言えない。君達の力では黙っている事も難しいからな。」
「それは…当然ね。むしろ話さないでいてくれて助かるわ。…私の方も話すわね。」
そう言って、ヒメの話す内容は予想通りのものだった。
唯一気になるのは…。
「転生時、神々に会って転生特典を貰った、か……。」
「ええ。私の特典は『豪運』。後、『簡易鑑定』と『簡易アイテムボックス』よ。貴方も同じで……ごめん。何でも無いわ。」
下手に聞いて戦いに巻き込まれるのを避けたいんだろう。
青い顔で言葉を引っ込めた。
(やはり、私とは違うみたいだな。私は神に会わなかったし、鑑定やアイテムボックスも貰っていない。)
こうなると母上の言った言葉が正しそうだが、もはやどちらでも良いだろう。
鑑定も似たような事は出来るし、アイテムボックスは習得済みだ。
「そう警戒するな。別にシェールとの戦いに巻き込むつもりは無い。」
「…それなんだけど、本当に戦う必要が有るの?私がギル達とハッピーエンドを迎えれば、それで済むんじゃ無いかしら?物語では呆気なく邪神が倒されたわよ?」
「……残念だが、そうもいかないな。既に物語とこの世界は違う道を辿っている。…何より、私は物語の部外者だ。ハッピーエンドを迎えて欲しいと思っているが、自らも動くつもりだ。」
今となっては不確定要素が多すぎる。ハッピーエンドで全てが終わるとはとても思えない。
主人公の位置にヒメが居るし、ゲームとは違う事が起き始めている。
「物語とは既に大きく乖離しているぞ。」
ヒメにバッドエンドルートに突入しかけた事、ヒメが聖女になっていない事、…そして、近い内に異界門が開かれる事も話す。
「バッドエンドに…聖女じゃ無い…?…そんな。…それに、異界門って何だったかしら?物語に出てきた?」
(そう言えば、異界虫なんかの強力な敵は派生作品でしか出てこなかったか。…ヒメはメインの乙女ゲームしかやって無いようだな。)
説明しようとした所で、ギルが興奮気味に話し出す。
「邪神に……異界門だって!?…ヒメ、すぐに逃げよう!地の果てまで逃げるしか無い!!」
ヒメに異界虫の怖さを説明しているが…。
(王族が一目散に逃げ出すなよ…。らしいと言えばらしいがな。)
「…逃げるのか?」
ここでコイツらが逃げるなら、乙女ゲームは完全に破綻する。
ハッピーエンドを迎えてくれるのが一番だったが、それも叶わずか…。
「…………逃げるわ。ただし、ギリギリでね。今回のお礼も有るし、出来る限り王都に居るわ。転移石さえあればすぐに逃げれるしね。……だから、勝ちなさい。」
「…ああ。君達にも力を与えるから、精々活用してくれ。」
龍の化身を呼び出し、五人に預ける。
使いこなす事は出来ないだろうが、それでも力にはなるはずだ。
「わぁ!凄い!!やっぱり時代は無双よね!!そろそろ内政チートだけじゃ飽きてきたのよ!」
ヒメは無邪気に喜んでいるようだが、ギル達は真剣な表情のままだ。
「これだけの力……。オレ達の手には余るが、お借りするよ。……絶対ヒメは守る。だからこっちは安心してくれ。」
「ああ。戦後はそこのお姫様の力に頼る事も多いだろう。……だから死ぬなよ。」
ギル達は最初に比べれば自分の力を把握出来ているようだ。
…だからこそ、すぐに逃げようと言ったのかもな。
その後、今後の事を少し話してから別れた。
戦乙女の訓練に参加させて貰い、少しでも鍛えるらしい。
ヒメは「脳筋いやーー!」と言っていたが、皆に担がれて行った。
「…行かれましたね。」
「中々面白い奴らだろう?とても貴族とは思えない奔放さだ。」
リサの言葉に返す。リサはヒメ達の言動に呆れているようだ。
「王族が逃げるなんて…。やはりニムド家は王家から離れて正解でした!」
…アリスが一番怒っているようだ。
ニムド家は王家から取り潰しを言い渡された事も有り、王家に忠誠を誓っていない。
当初から陪臣の地位を求めていたのだ。
ファリアの事は好きみたいだが、ギルみたいな王族は許せないんだろう。
「面白そうな方々ですが、ご主人様を逆ハーレムに誘う感性はちょっと頂けませんわぁ。それも私達の目の前で。最初は喧嘩を売られているのかと思っちゃいました〜。」
ジュリも…意外と怒っていたんだな。
エドガーは本当に考え無しだからな…。
戦乙女に厳しくして貰いましょう、と3人で話しているのを横目に、エルフの踊りに癒されるのだった。
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