龍脈之要石
「ソイツが『神の使い』?壁を作るから『龍脈之要石』を寄越せ?…本気で言ってるの?セバス、貴方騙されてるわよ。」
古都の城に招かれ一人の女性と会見する。
皇国の武の頂点たる四騎士の一人にして、古都の管理を任されているミアという女性だ。
この都を任されるだけあって、かなり高貴な人物らしい。
「ミア様。決して皇国にとっても悪い話では無いはずです。あくまで壁が完成したらの話ですし、お貸し頂くだけですので…。」
「まぁそうだけど…。(…そういえば、セバスは他国の人間よね。だったら知らなくても当たり前か…。)」
「…ミア様?後半がよく聞こえなかったのですが…。」
「何でも無いわ。…そこの男。ローブを取ってちゃんと顔を見せなさい。ちゃんと名前も名乗るのよ。」
ミアから名乗りを求められる。
やはり『神の使い』として通すのは無理か…。
「こちらの方は王国でも正体を明かしていないのです。下手に名前を言うと争奪戦になってしまいますので…。ですから皇国にも話す事は出来ないのです。ですが、身元は王国が保証しますし、何か有った場合の補償も王国が致します!」
口を開けようとした所で、セバスが早口でまくし立てる。
どうやらまだ頑張ってくれるようだ。
「王国が補償って…。貴方も今の皇国で王国がどう思われているか分かってるでしょ?そんな事言われても何の意味も無いわ。」
王国貴族の公爵家が攻め込んだし当たり前か…。
未だに罰せられてないし、皇国としては許せないんだろうな。
「なればこそです…!王国の信頼を得ている『神の使い』が城壁を修復する事こそが、両国の友好の一歩となるのです!ここで個人の名前を出してしまうと、一人の英雄が誕生してしまうだけなのです!」
「う…。(でも、名前の分からない人と結婚するのは…。)」
「ん?何ですかな?もう少し聞こえるようにお願いします。」
「……何でも無いわ。」
「…皇国の上層部にもシェール家の取り扱いについては説明しております。その上で、家臣として残すべきだとの結論が出ているのです。野に放てば何が起こるか分からない…。損を引いてるのは我々も同じなのですぞ。」
「それは…聞いているわ。シェール家は定期的に迷宮を暴走させてるって噂だしね…。」
「もちろん、先年の戦禍に巻き込まれた国々には申し訳無く思っております。その為に出来る限りの支援はしてきたつもりです。」
「それも……分かっているわ。諸国は長年基金を積み立てて来たって言うしね。皇国は…強国からの驕りで断って来たのよね。」
「…熱くなってしまい、申し訳有りません。ですが、今後も出来る限りの支援は続けます。今回の異界の門でも可能な限り協力していきましょう…!」
「…はあぁ……。分かったわよ。でも、顔だけは見せて。」
どうやら説得してしまったようだ…。
結構無理矢理な感じだったが、それだけシェール家の取り扱いに苦慮しているんだろうな…。
本来ならシェール家打倒の為と言いたかったが、王国経由で皇国を説得するには時間がかかる。
要石が有れば勝てると言い切る事も出来ないし、このような形となってしまった。
セバスがいなければ無理だっただろう。
「かしこまりました。」
フードを取り、顔を見せる。
「……ふ、ふーん。…ま、まぁまぁね。良い?言っておくけど、『龍脈之要石』の取り扱いには十分に注意しなさい?あれは『試しの石』とも言われていて、皇国の宝物なの。最初は優しく触れて、石を感じるの。絶対無理に取ろうとしちゃダメよ?」
ミアの許しも貰えたし、後は城壁を作るだけだ。
石の取り扱いについても話してくれてるし、根は良い子なんだろう。
今回セバスは大活躍だったな。
「『試しの石』…? 確か、石に認められれば、皇族の一員になると聞いたような…。」
セバスが何か呟いていたが、喜びの余り聞き逃してしまった。
独り言みたいだし、問題無いだろう。
話し合いも何とか終わり、城壁へと移動する。
ミアを始めとする皇国の人間も何人か来ている。
実際に出来るか見に来ているんだろう。
「じゃあ行きますよ。」
「ええ。遠慮無くやって頂戴。」
「土壁」
事前に話し合った通り、高さ10M、幅10M、長さ1KMで作る。
古都の城壁もっと高くて厚いのだが、そのサイズで作ると作れる距離が短くなる。
その為、取り敢えずこのサイズで作ろうと決まったのだ。
「「「おおお!!!」」」
長大な壁が出来ていく様子に皆驚いている。
セバスやミアも口を開いて呆然としている。
(…出来たが、やはり元に有ったのと比べると見劣りするな…。)
古都の壁は高さ50M、幅は場所によって違うが、30M〜50M有る。
すぐ隣に新設すると、どうしても私の壁が劣って見えてしまう。
「凄いわ!!これならまたすぐに昔の賑わいを取り戻せるわ!!早速次へ行きましょう!?」
ミアの言葉に頷き、移動しようとした時に待ったがかかった。
「ミア様!!お待ち下さい!!!これだけの御技…、元有った位置に壁を作るなんて勿体無いですぞ!!!!」
「そうです!長年この都は土地不足に悩まされて来たのです!『千年の守り』が失われた今こそが拡張のチャンスですぞ!!」
「これより、この都は新都へと移り変わるのです!!すぐに首都へと復帰しますぞ!!」
一緒に来た皇国の内政官が興奮気味に話している。
王国でもよく見た光景だ。
(また拡張計画を立てるんだろうな…。)
それ自体は問題無い。秘宝を借りようと言うのだから、出来る限りの手助けはするつもりだ。
だが、時間がかかるならその前に要石を見に行きたい。
「…そうね!!私の生まれ育った街ですもの!!出来る限りの事をしましょう!?」
「ミア様…。時間がかかるようでしたら、先に『龍脈之要石』を見学しても宜しいでしょうか?」
「ミアで良いわ!敬語も不要よ!!…良いわ!『試しの石』に挑む事を許すわ!!その代わり、絶対に成功しなさい!?」
ミアに声をかけると、満面の笑顔で答えられた。
でもその内容が…?試しの石は要石の事だが、挑むって何の事だろうか…。
皇国の人間も強く頷いているみたいだし、一体…?
「御使い様…。試しの石に挑むとは、『龍脈之要石』に認められるかを試す儀式でございます。もし認められれば石を移動する事も出来ますし、伝承には力を借りれるとも書いてあります。」
不思議に思っていると、内政官の一人が説明してくれる。
「儀式とは…?」
「何、簡単な事です。石を動かすのです。石に認められれば難なく出来るでしょう。…前回の成功は500年以上前となりますが、必ずや成功して下さい。そして、(皇族の一員となり)皇国を繁栄に導いて下さい!!」
「あ、ああ。」
皇国を繁栄に導くか…。
要石から力を借りて活躍すれば、それは皇国の栄誉になるって事か…?
よく分からないが、きっとそんな感じだろう。
内政官に案内され、街の中心部へと移動する。
ミア達は城で会議をすると言って走り去って行った。
出来るだけ早く計画を立てると興奮気味に言っていた。
「こちらです。」
古都中央には広場が有り、その広場の中央には大きな噴水が有る。
その噴水の地下に要石は安置されているらしい。
中央広場の端にある建物から地下へと移動し、安置所に入る。
(アレが…。『龍脈之要石』か……。)
かなり広い部屋の中央に黒い石が置かれている。
天井は透明なガラスのような素材で出来ており、噴水の水場が頭上に見える。
「アレは…黒金剛石のようですな。両手で抱えられない程の大きさ…一体どれ程の価値が有りますやら…。」
セバスが驚いているし、中々の素材のようだ。
確かに綺麗にカットされており、よく見ると宝石だった。
光を反射して、宝石特有の妖しさを放っている。
(とは言え、重要なのは機能だ。兄との戦いで使用し、現在は使えないとの事だが…。)
「『龍脈之要石』は歴代の皇帝陛下のみが使用出来ます。今まで試しの儀に成功した方も、僅かに動かす事が出来ただけです。…ですので、ほんの少しでも動かせれば良いのです。是非頑張って下さい。」
案内人が説明してくれる。
…応援してくれてるみたいだし、やってみるか。
(まずは優しく触れて…、石を感じる…。)
ミアの言葉に従って石に触れる。
冷たい感触を感じながら、『魔力操作』で石を探る。
(なるほど…。凄まじい力の奔流だな…。大地に流れる力を蓄えているのか…。)
今は使えないと言うが、力は十分貯まっているように感じる。
何か理由が有るのだろうか…。
(…………ん? この感覚は…。母上の時と似たような…。これのせいで使えなくなってるみたいだな…。)
母上の呪いと似たような感じだ。
とは言え呪いとは違うようなので、何とかなるかも知れない。
(なるほど…。強大な力を無制限に使わないように、制限がかけられているようだな。……『魔力操作』でその網を潜り抜ければ…。)
……。
「出来た。」
ゆっくりと持ち上げる。
それと同時に、要石を掌のサイズまで小さくしていく。
「……は?……え?な?…………あれ?」
案内人が驚いているようだが、気にしなくて良いだろう。
(…問題無く制御出来るな。これがあれば大地の力を借りれる。)
要石の情報を探り、大地の化身とやらを作り出してみる。
「これが大地の化身…龍みたいだな。本来の大きさだとこの地下室が崩れるから、掌サイズで作ってみたよ。」
そう言って、一緒に来たリサ達の方に龍を送る。
「流石はディノス様。ディノス様の魅力には大地さえも抗えないのですね。」
「わー!小さな龍ですか!?可愛いですね!」
「最高のご主人様ですぅ♪ 私の理解も軽く超えてしまってますわ〜。」
リサ、アリス、ジュリが龍と戯れる。
指で突っついたりして楽しそうだ。
「…………流石はディノス様です。」
セバスも祝福してくれている。
遠い目をしているが、すぐに我に返るだろう。
「……ちょ、ちょっとお待ち下さい!どう言う事ですか!?『龍脈之要石』を持ち上げて…!使用不可能なはずの力を使われたのですか!?それに、何故小さくなったのですか?」
「伝承には力を借りれるとあったのだろう?大した事じゃ無いさ。小さくしたのは持ち運びし易くしただけだ。返す時には戻すから安心してくれ。」
小さくした事で、ブラックダイヤの輝きが増している。
漆黒の中にも幾つもの輝きが見え、それぞれが光を出している。
まるで夜の星空を手中に収めているようだ。
「いや…、伝承に有るだけで、今まで成し遂げた者は居ないのです!しかも大きさを変えるなど……!?その石は神々からの贈り物なのですぞ!」
…確かに、大きさを変えたのはマズかったか…。
でもあの大きさだと持ち運べなかったからな…。
「それについては――」
「お待ち下さい。まずはミア様へとお伝えするのが先では?その上で、もし必要なら大きさを元に戻せば良いのでは無いでしょうか。」
謝罪しようとした所でセバスに遮られる。
…ここは他国だし、下手に謝罪するのは軽率だったようだ。
「…そうですな。すぐにミア様にお知らせします。貴方がたも城までご一緒下さい。」
こうして、先程別れたばかりのミアと、また話す事になるのだった。
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