表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

63/90

マイハの目覚め

ーーーディノス視点ーーー


母上の解呪を喜んだ後、再度リュミドラとの会談となった。

母上はまだ眠りから覚めていないので別室だ。

大事な話をするので母上の事はエルフ達に見てもらっている。

呪いも解けたし問題無いだろう。


「それじゃ、貴方達の事を話して頂戴。解呪以外にも来た理由が有ると言ってたけど?」


皆が円卓に座った後、リュミドラが話し出す。


「…私がここに来た理由は母上の解呪と、力を得る方法を聞く為だ。私達は邪神復活を阻止しようと動いているが、その際シェール家と戦う可能性が高い。彼らに勝つ方法が有れば教えてくれないか?」


シェールに関わるのは無理と言っていた。

やはり無理だろうか…?


「…復活を阻止するのは手助けしたいんだけどね〜。シェール家とは関わっちゃいけないのよ〜。」


「理由を聞いても…教えて貰えないよな…?」


「ごめんね〜。」


やはり無理か…。

ここは母上の解呪が済んだだけでも良しとするか…。


「でも、間接的には手助け出来るかも知れないわ〜。…次は私の話をするわねぇ。」


「ああ。」


…まだ何とかなるのかも知れないな。


「話は森の事よ。少し前にシェール家の人間が魔法を使ってね〜。その余波で森の一部がやられちゃったのよ。お陰で世界樹も弱っちゃってね〜。」


「シェールの魔法…。6年ほど前にアイズが魔法を使ったというやつか…。」


「それそれ。全く、本当に厄介な事してくれるよね〜。それでオマケに、その少し後に何者かが魔法の跡地でとんでも無い事していたみたいなの。」


「とんでもない事?」


「そ。異界への道を開こうとしていたみたい。気付いた時には手遅れな状態だったわ〜。」


「異界への門だと……!?」


異界…この世界では邪神の住む世界とされている。

異世界とはまた別の、完全なる混沌世界らしい。

その世界との門を開く言う事は…。


「邪神復活の前準備みたいなものでしょうね〜。幸い門が開いても邪神は出てこないわ。邪神復活にはもっと特殊な儀式が必要なの。…でも異界の生物は別ね。あちらの生物がどんなモノかはよく知っているでしょう?」


誰かが唾を飲み込む音が聞こえる。

…無理も無い。異界の生物は邪神の尖兵と呼ばれ、この世界では恐れられている。


その尖兵は虫型の魔物で、強い繁殖力と全てを食べ尽くす貪欲さを持っている。

そして最も恐れられている理由はその強さだ。

全ての個体がAランク以上で、Sランクも多数存在する。

異界虫が数匹発生しただけで、王国全体が厳戒態勢に入る程の脅威とされている。


「その門は閉じられないのか?」


「それは無理ね〜。下手に刺激を与えたら門が開くわ。今大陸中の国々に知らせている所だから、各国の準備が整うまでは静観ね〜。」


(駄目か…。邪神復活の前準備と言うし、やはりヌルドの手の者か?アイズは関わっていないはずだが…。)


他に考えられないし、その考えで動いた方が良いだろう。


リュミドラは現在もその震源地を調査中だとの事だ。

異界の影響が強くて中々調査は進まないが、続報が有れば知らせてくれると言ってくれた。


「邪神復活の儀式について教えて貰えないか?何かキーアイテムが有るなら破棄する為に知りたいんだが。」


一応聞いてみるが、教える事は出来ないと断られてしまった。


「それで、間接的な手助けなんだけど、この近くにある皇都に向かうと良いわ〜。あそこに有るアイテムが助けになるはずよ。」


「…分かった。色々と話をありがとう。」


「こちらこそ〜。貴方と出会えて本当に良かったわ…。好きなだけゆっくりして行ってね〜。」


短い会談だったが、色々話を聞けた。

重要な話が多かったし、来て良かった。


「ディノス。済まない。すぐに王都へと帰っても良いか?もちろん私達だけだ。異界虫の事をすぐにでも国へ伝えなければ…!」


ファリア達が鬼気迫る表情で頼んで来る。

王国へも伝言を送っていると言っていたが、座視している事は出来ないのだろう。


「勿論だ。ここまで付き合ってくれてありがとうな。」


「マイハ様…義母上ははうえには宜しく伝えてくれ。目覚めるのを待てなくて済まないな。」


そう言ってファリア達5人は去って行った。

送ると言ったが、母上に付いていろと言って断られてしまった。



私室に戻ってゆっくりしているとリサがやって来た。

ついに母上が目覚めたらしい!


「ディノス様、すぐにおいで下さい…!マイハ様がお目覚めになられました!」


「…ああ!」



母上の部屋に行くと、母上が体を起こしている。

昔と同じ穏やかな表情だ…!


「母上!!」


「ディ!!」


母上が飛び込んで来る。

…ああ、久しぶりの温もりだ。


「お久しぶりです。体調は大丈夫ですか?」


「ええ。元気一杯よ!ディも元気そうで何よりね!」


もっと話したいが、グッと我慢して皆を紹介する。



「皆大きくなったわねー…。それにとっても大きくなって!今でも仲良いみたいで安心したわ!新しい子も居るみたいですしね…。ジュリちゃん、宜しくねー。」


「お義母様〜♪」


母上とジュリがバグをしている。

やはり相性が良いようで、ほんわかした空気を醸し出している。


(恐らく肉体年齢的にはジュリの方が…いや、考えるのも無粋か。)


このなごやかな空気が終わってしまうかも知れない。


低年齢組とアリスがこれでもかと甘えている。

母上も嬉しそうに一人ずつ頭を撫でている。


(母上を覆っていた薄い膜も無くなった。これからは母上も歳を取っていくんだ。)


多分今の肉体年齢は20くらいな気がする…。

正確には分からないが、昔は一日の殆どを寝ていて、その間歳を取って無かったからな…。



「夢の中!ディが私を助けようとしてるのよ!」


「「「おおおおーーー!!!」」」


「『邪魔だ!!』って腕を振って、闇を打ち払って…もう最高にカッコ良かったわー!」


「「「「「おおおおおおーーーーー!!!!!」」」」」


「最後は眠る私をお姫様抱っこして、闇から救いあげてくれたの!」


「「「「「「「おおおおおおおおーーーーーーー!!!!!!!」」」」」」」


母上が身振り手振りで解呪の時の事を話している。

どうやら私が母上を探していた姿を見ていたらしい。


(どんどん人が集まって来てるし…エルフ達や…リュミドラも!?)


何故かリュミドラまで居る。

…見なかった事にしておこう。


…母上が私を見て手招きしてくる。

……恐らく見世物になってしまうが、行かないとマズいだろうな。


「こちらが私の自慢の息子ですーー!!どうーー?カッコ良いでしょーー!?」


「「「「「「「「「おおおおおおおおおーーーーーーー!!!!!!!」」」」」」」」」


母上の横に行くと熱狂の渦に巻き込まれる。

何人か倒れてるエルフが居るし、かなり混沌としている。

リサとジュリが一番興奮してるのは何故なんだろうか…。


「へへー。」


…まぁ、母上が嬉しそうにしてるし、我慢するか。



あの後エルフ達が続々と倒れていき、流石にマズいと思ったのでお開きにした。

どうやら世界樹の里では娯楽が少ないらしく、あんなに興奮したのは初めてらしい。


「久しぶりに楽しかったわ〜。先代の聖女ちゃんは面白い子ね〜。」


「ええー!?ここって世界樹なんですか?しかもリュミドラ様がハイエルフ様……。」


母上はここがどこだかも知らなかったらしい。

今は恐縮しながらリュミドラと話している。


「こんなに楽しませて貰ったし、先代ちゃんには何かしてあげたいわね〜。」


「あ、あの…。私は聖女候補であって、聖女では無かったんですが…。」


「候補なんて関係無いわよ〜。要は聖女としての力が覚醒してるかどうかってだけだから。貴女は立派な聖女よ。…と言うか、それ以上の存在ね。」


「それって……?」


「あ、それなら。お礼に聖女として覚醒させてあげるってのはどう〜?ここで修行すればすぐなれると思うわよ。」


(おお…!それは凄そうだな…!)


本物の聖女となればより安全に暮らしていけるかも知れない。


「…聖女の力って、誰かに譲る事は出来ませんか?ティニーちゃんに聖女になって貰えたらって思うんですが…。」


「ワタシですか!?」


母上の言葉にティニーが驚いている。

聖女の力を誰かに譲るなんて前代未聞だ。そんな事出来るのだろうか…。


「ティニー…あの子ね。あの子は…今のままじゃちょっと難しそうね〜。『女神のしずく』でも有れば大丈夫だと思うだけどねぇ…。」


「……そうですか。……ごめんね。ティニーちゃん。舞い上がっちゃって…。」


「ううん!マイハ様に推薦して貰えて嬉しかったです!」


リュミドラの言葉に二人して落ち込んでいる。私も同じだ。ティニーが聖女になったらと夢想してしまった。

『女神の雫』はゲームで出て来た、聖女として覚醒する為のアイテムだ。

だが、この世界では…。


「『女神の雫』か…。確か、既に使われているんだよな…。」


思わず口に出てしまった。

ゲーム知識に関わる事なのに迂闊過ぎる…。


「使われている?そんな事無いはずよ〜。使われたら私が気付くもの〜。」


「そうなのか?…だが、ヒメ=センイが使ってると思うんだが…。」


自らを聖女と名乗っているようだし、『女神の雫』自体の入手は簡単だ。

絶対使ってるはずだが…。


「なんでそう思ってるのかは不思議だけど、使った人に聖女の資格が無かったんじゃ無いかしら〜?アレは少しでも聖女の力を持ってないと効果は出ないわよ〜。」


「……なるほど。」


だから、自らを聖女と名乗っておきながら、周囲からは認められて無かったのか。

ゲームでは主人公が聖女の力を持っていたから気付けなかったようだ。


「それなら、もしかしたら何とかなるかも知れない。」


ヒメ=センイとは未だに話せて無いが、いざとなったら手荒い手段を使う事も辞さない。

異界の門が開けばそれどころじゃ無くなるからだ。


王子ギル達を使えばそんな手を使う必要も無いだろうしな…。)


「…なら、二人には暫く世界樹で修行して貰うわね〜。先代ちゃんもずっと眠っていたんだし、リハビリよ。」


「「はい!!」」


リュミドラの言葉にティニーと母上が元気よく返事をしている。

ティニーは本当に嬉しそうだ。


「ディノス!アイテムは任せたわ!でも無理しないでね!」


「ああ。ティニーも聖女の修行頑張ってな。」


二人とは少し別れる事になるが、転移テレポートでいつでも会える。

毎日顔を見せに来よう。

誤字脱字報告ありがとうございます。


もし面白ければブックマークや、

↓にある☆☆☆☆☆から、作品の評価をお願いいたします。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ