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ジュリ

ーーージュリ視点ーーー


「母上!!」


「ディノス様!」

「主様!」

「ディノス!」


ご主人様の元に皆が駆けていく…。

わたくしも行きたいのですが、今の光景に驚いてしまって動けませんわ…。


「母上の解呪は無事成功した!リュミドラ様、ありがとうございます!」


「…リュミドラで良いわよ〜。今日はゆっくりしていなさい。また明日話しましょう。あ、それとジュリを借りるわよ〜。」


「…それではご主人様、行ってきますわね〜。本当におめでとうございましたぁ♪」


内心を悟られないように挨拶をする…。

マイハ様の解呪は喜ばしい事ですわ。それだけは間違いありません。


(でも……今のは一体……。)


先ほどのご主人様の魔法からは何も感じられませんでしたわ。

これでも他と隔絶した魔法使いだと思っていましたが…一切感知する事が出来なかったのです。

こんな事は初めての事ですわ。余りの驚きに、ご主人様の元へと駆けつける事が出来ませんでした。

これがシェール家の魔法は特別と言われている理由でしょうか…。


(もしや…ご主人様は…。)


最近気になってる事が確信に変わりそうです…。

あの急激な成長…。それに今の光景…。


「いや〜、今代のシェールはとんでもない事になってるね〜。既に化け物が二人も居るのに、あんなのまで出てくるなんてね〜。」


リュミドラ様の言葉…その言い方からするとやはり…。


「…リュミドラ様。…やはり、ご主人様はシェールの血に覚醒し始めているのですか?」


「……ふ〜ん?」


「…もし覚醒してしまったら、ご主人様はどうなってしまうのでしょうか…?」


正直、わたくしにとってシェール家は恐怖の対象という訳では無いですわ。

強大な力を持ってるし、非道な行いを多くしているらしいですが、あくまで伝聞に過ぎませんから…。


いにしえの時代にもシェール家の名前を聞いた事は無いと思いますわ。

もしかしたら名前が変わっているのかもしれませんが…少なくとも、あれ程畏怖の対象となった家は有りませんでした。


(シェールの血に覚醒しても、ご主人様が冥府魔道に落ちるとは思えないのですよね…。先程の魔法からも禍々しい気配はしなかったですし…。)


…禍々しいどころか、何も感じられなかったのですが…。

ですが、普段のお姿を見ていれば確信出来ますわ。

あんなに素晴らしいご主人様なんですもの…!


「もしシェールの血に覚醒したら面倒ね〜。でも安心しなさい。今はその兆候は無いわ。」


「…そうなんですか?なら何故…?」


「そっから先は答えられないかな〜。」


リュミドラ様が答えられないとなると、神や世界に関わる事…。

一体シェール家ってなんなのかしら…。


「ま、取り合えずあの子の精神は安定しているから安心しなさい。それより、何であの子の奴隷なんてやってるの〜?邪神への恨みは無くなった?」


「それは……。」


そもそもご主人様の奴隷となった理由は、ご主人様が邪神に関わりが有る方だと思ったからですわ。

女の勘でしたが、そこまでのハズレでは無かったみたいです。

父君が邪神復活の儀式を行ったと聞きましたし、今でも復活を目論んでいるらしいですわ。


(…でも、今となっては色々と変わってしまいましたわ〜。あんなに素晴らしい方に出会えた事に心から感謝しますぅ♪)


すぐにでも手を出して欲しいですのに、ずっと焦らされてしまいますわ〜。

でも…きっともうすぐですわぁ〜♪


「……あの子との関係は何となく分かったわ〜。涎垂れてるわよ。」


リュミドラ様の言葉に我に返る。

…本当にご主人様は罪な方ですわ。


「…失礼しました。昔はご迷惑をおかけしました。ご主人様への想いはお察しの通りですわ。邪神への恨みは…消えた訳では無いですが、今はご主人様の元、復活を阻止しようと動いておりますの。」


「…そっか〜。どうやら良い出会いだったようだね。わざわざ封印した甲斐が有ったわ〜。」


大昔、邪神に倒された勇者様達の仇を討とうと、わたくしは単騎で邪神に向かおうとしましたわ。

勝てない事は承知でしたが…勇者様と賢者様…いいえ、両親を殺されて黙っている訳にはいかなかったのです。


そんな、自殺とも取れる行動をリュミドラ様は止めて下さいました。

いつか遠い未来で良い出会いが有るようにと、賢者の塔にわたくしを封印したのですわ。


(何故かご主人様は賢者様ははうえが封印したと思っていたようですが…。きっとあんな事が出来るのは母上だけだと思ったのでしょうね。)


「リュミドラ様は大丈夫だったのでしょうか?人界に関わるなという禁を犯してしまって…。」


「それは大丈夫よ。貴女は勇者達の関係者…娘だし。何よりあの時代は混迷の時代だったからね〜。邪神と勇者が戦ってる時点で、勇者関係者はその規則から除外されてるわ。」


「それは…良かったです。ずっと気がかりでしたから…。」


世界樹の場所もわかりませんでしたし、もうお会いする事は出来ないと思っていましたわ…。

それが…こうして出会えるなんて…。全てはご主人様のお陰ですわ。


「私もよ〜。私じゃ説得出来なかったし、未来に賭けるなんて不確定な事になっちゃったしねぇ。」


昔の事を思い出すと恥ずかしいですわ…。

感覚的には少し前の事ですが、余りに直情過ぎて…。

こう思えるのもご主人様と出会えたからですね。


「そのお陰で素晴らしい方に出会えましたわ。…そう言えばリュミドラ様、このアイテムを加工出来ませんか?」


以前の叙爵の儀の時に、ご主人様から頂いたアイテムを見せる。

ピンク色のぷにぷにした、古代王国の秘宝ですわ!


「ま〜。素晴らしいモノを持っているわね〜。しかもそれ、『原種』の素材じゃ無い。」


「原種ですか?」


何処かで聞いたような気がしますが…思い出せませんわ。


「そう。原種よ。魔物の中で自我の芽生えた存在で、固有種と似た種なんだけど…その在り方が非常に特殊なのよ〜。魔物で有りながら、自らの在り様を否定しているの。」


「そんな魔物が居るのですか…?」


ちょっと想像がつかないですわ…。まるで哲学者みたいです。


「居るのよ。非常にレアなんだけどね〜。所謂バグみたいな存在なんだけど…特筆する所は『親殺し』の性質を持っているの。」


「『親殺し』…つまり世界のシステムを否定する性質ですか…?」


古代王国でも研究が進められていたと思いますが、こんな所に答えが有ったなんて…。


「そうよ。だからその素材を使ってアイテムを作れば、誰が相手でも効果が有る物が出来るわ。…例え相手が神でもね〜。」


「神が相手でも…ですか?」


「そうなの〜。加工自体は普通に出来るから、エルフの子に頼んで良いわよ〜。」


「…ありがとうございます。」


驚くべきアイテムだったみたいです。

ピンクスライムの粘液からから作る、伸縮自在な拘束具が古代王国の秘宝でしたのに…。

まさかスライム粘液が原種?のモノでしたなんて…。


(ですが…別に気にする事は無いですわよね〜。使い道なんて一つですし〜♪)


「…神々でも欲する程のアイテムなんだけど…貴女には関係無いみたいね〜。」


リュミドラ様が呆れていますが、大丈夫です。

絶対に有効活用してみせますわ♪



その後も会話を続け、そろそろご主人様達の元へ戻ろうとした頃、リュミドラ様が静かに声をかけて来た。


「…あの子の事をよく見ておきなさい。」


「リュミドラ様…?」


「本当は黙ってるつもりだったけど、貴女の幸せそうな顔を見ていて気が変わったわ。」


「…一体、何でしょうか?」


「…もうすぐ世界の危機が訪れるわ。その事はまた後で言うけど…。その中であの子は特別な役割を務める事になるわ…。その結末は未確定だけど…。悪い方向に進めば世界の終末が訪れるわね。」


「それは……。」


「あの子を封印する事も考えたけど…。あの子の力は私を優に超えているわ。…もはや、私に出来る事は無いの。」


ディノス様が…リュミドラ様を超えている……!?

確かにディノス様の力は計り知れないですが…リュミドラ様は神に連なる御方。

その力を超えるなんて……!


「ディノス様はリュミドラ様の教えを受けようと思っているようですが……。」


「無理ね〜。そもそも力の差とか関係無く、シェール家と関わるのはタブーですから。」


「そうですか…。」


「…そろそろあっちも落ち着きそうね。皆を呼んで色々話をしましょう。さっき言った危機の事も話すわ。」


そう言ってリュミドラ様が立ち上がる…。

とんでも無い話ばかりでしたが、具体的な事は分かりませんでしたわ。

世界の終末…恐ろしい話ですが、未確定と言ってました。

わざわざわたくしに忠告するという事は、わたくし達の役割も重要なはずです。


絶対にディノス様と幸せになってみせますわ!!

誤字脱字報告ありがとうございます。


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