解呪
「お、一杯居るね〜。勇者の小さな卵に、聖女の卵、英雄の卵に………。待って。なんか凄いの一杯居るんだけど…。」
「リュミドラ様ぁ。お久しぶりです〜♪」
「ジュリ!?貴女、封印が解けたの!?」
「はぁい〜。こちらのご主人様に凍える体を温めて頂きましたぁ♪」
「……そちら、ね。…特大の厄ネタじゃない……。…まぁ良いわ。取り敢えず中に入れるわ。資格者が居るんですもの、仕方ないわ。」
ハイエルフとジュリが親しげに話し合っている。
(…まさか、知り合いだったのか?そんなの初めて聞いたが…。)
「…ご覧の通り、ハイエルフのリュミドラ様とは古い知り合いですの〜。黙っててごめんなさいねぇ。絶対に話してはいけないと契約を交わしてましたの…。」
(だろうな…。理由無く黙っている訳無いからな。)
「気にするな。相手は亜神だ。どんな事が有っても不思議じゃ無いさ。」
「ありがとうですぅ♪リュミドラ様は古代の勇者様と賢者様の知り合いで、何度かお会いした事が有るんですわ〜。いつも勇者様達の元へ来てくれていたので、世界樹に来るのは私も初めてなんですの〜。」
そう言って、キョロキョロと周囲を見渡している。
リュミドラについて行った先は世界樹の枝の上だった。
途中で空間の歪みを感じられたから、恐らくは固定式の転移ゲートのようなものが有ったんだろう。
世界樹の枝は四人が横になっても通れるくらいの幅が有り、途中で枝分かれしていくつかの家のような場所に繋がっている。
非常に大きな木のコブに扉や窓が付いていて、中から光が漏れている。
ゲームの通り、世界樹にも人が住んでいるようだ。
「こちらよ〜。」
リュミドラは世界樹の本体…幹の中へと入っていく。
こちらも一部中身が空洞になっているようだ。
母上は別室へ通されたので、リサとアリスとティニーについて貰っている。
三人なら安心して任せられる。
「それじゃ、堅苦しいのもなんだし、テーブルにどうぞ。結構人数多いし広げるわね。」
部屋の中央に木製の円卓が置いてある。
木を輪切りにして作ったようで、美しい年輪が見えている。
「おお…。テーブルが大きくなった…。」
ファリアが驚いている。
確かに物珍しい光景だ。
「じゃあ私はここに。」
ちょうどリュミドラの真向かいに座り、両隣にはカズナとシルフィを座らせる。
本来は二人が主役であるはずだが、私が割り込んでいる形だ。
「…それで〜。単に勇者の力を強める為に来たんじゃ無いのよね〜?あ、敬語はいらないわよ〜。私は勇者達の案内人だから〜。」
「…分かった。私はディノス。ディノス=シェールだ。ここに来た理由はいくつか有るが、一番は時の眠りを解呪する為に来た。どうか世界樹での採取を認めて欲しい。」
必要なアイテムは世界樹の実から取れる蜜と種だ。その二つから作るアイテムで時の眠りを解呪出来る。
ゲームでは強さを示す事で許可されたが、今の私達なら余裕のはずだ…。
「う〜ん…。本来私達はシェール家に関わるのは禁止されてるのよねぇ…。でも、眠りにかかってるのは先代の聖女ちゃんか〜…。」
リュミドラが悩んでいるようだが…。
(シェール家に関わるのを禁止されている…?)
何故シェール家に…?
気になるが、まずは母上の事だ…!
「……分かったわ〜。聖女関連となれば、放ってほおけないしねぇ…。でもアイテムは出来てるから採取する必要は無いわよ〜。」
「…ありがとうございます。」
深く頭を下げる。
嬉しい…が、少しだけ違和感が有る。
(何故薬が出来ているんだ…?ゲームではわざわざ取りに行ったが…。)
ゲームでは時魔法に対する薬としか無かったが、実際は他の用途も有るんだろうか…。
それなら問題無いんだが。
(いや、考えている暇は無い。まずは解呪だ。)
「…ちょっとだけ薄めてあるから、貴方が聖女の子を起こしてあげてね。魔力で意識を探って連れて来るだけだから。最近あの味にハマっていて、薄めてお茶に入れてるのよね〜。」
「分かりました。」
どうやら杞憂だったようだ。
すぐに手に入るならそっちの方が有り難い…!
「こちらです。」
「ああ。」
母上の場所へと移動し、エルフから薬の入った小瓶を受け取る。
この地にいるのはリュミドラ以外全てエルフだ。
小瓶の中身をゆっくりと傾け、母上に飲ませていく。
蜜を湿らせると口を僅かに開く事が出来たので、後はゆっくりとだ。
瓶が空になった所で目を瞑り、母上の意識を探す。
(…母上!)
暗い氷を砕きながら先を進む。
必ずこの先に居るはずだ…!
(この先だ!)
どんどん氷の厚みが増していき、氷の暗さも増していっている。
今では闇を砕いているような感覚だ。
(あそこだ!!)
薄らと光が見える!
あの懐かしい温もりを感じる!
「邪魔だ!!!!!」
全ての闇を払い、氷を砕く。
「母上!!」
闇の中から現れる母上を抱き抱える。
暖かい…。温もりを感じられる…。
周りの闇がどんどん崩れていく。
氷も溶け…呪いは祓われたようだ……。
「………ん。」
「母上!!」
「……ディ?」
「はい!私です!ディノスです!!」
「…そう。大きくなったわね…。」
そう言ってまた眠ってしまった…。
でも今度は普通の眠りだ…!
「すぐに戻りましょう…!」
母上を抱え、来た道を戻る。
やっと…。母上が帰ってきたんだ…!
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