王との会談
ーーーディノス視点ーーー
今日もまた第二王女の私室に招かれている。
私的なお茶会との事だが、こんなに頻繁に訪れて良いものなのだろうか…。
最近では学園でも噂になっていると聞く。
戦乙女のメンバーは婚約者も居ないと聞いたので、その点は安心だが…。
「そうだ。ディノスよ。そろそろ父上と会っても良い頃合じゃないか?…私との事もそろそろ報告しないといけないだろう?」
突然ファリアが爆弾発言をするから紅茶を吹き出しそうになってしまった。
ファリアと大公令嬢と三人でテーブルを囲んでいるから、吹き出したらとんでもない事になる所だった。
「それなら私のお父様も同席すると言っておりましたわ。ディノス様には是非お父様とお会いして欲しかったですし、私からもお願いしますわ。」
ヴェリミエールも似たような事を言ってくる。周りの生徒達が驚いているぞ。
「ぐぬぬ…。」
「お二方ばかりズルいです…。」
「是非我が家にも…。」
何故か驚き方がおかしい気がするが、聞かなかった事にしておこう。
「それは…王家との会談の事ですよね?大公閣下も同席されるのですか?」
いつか王家とも話さないといけないと思っていたが、王家の方から話を持ちかけてくれるとはありがたい。
今までの協力に感謝したいし、今後の事についても話したい。
王家に何かして貰うつもりは無いが、邪神についての話をしておいた方が良いだろう。
当初危惧していた王家の暴走も、私と言う希望がいるお陰で起こる可能性は低いと思っている。
「ええ。最初は渋っていましたが、ディノス様の魅力を伝えると態度が一転しましたわ。これで私達の仲も一歩前進しますわね。」
「ふん。それを言うなら私の父上は最初から乗り気だったぞ。じっくり話がしたいと、前から言っていたからな!」
(シェール家の人間と娘が仲良くしていれば気になって当然か。ヴェリミエールが何と言ったのかは不明だが、大公家とシェール家とは因縁も有る。私の品定めがしたいのだろう。)
こちらとしても願ったりだ。仲良くなれると思ってはいないが、敵対だけは避けたいからな。
「分かった。それで、いつになるんだ?」
「「明日だ(ですわ)。」」
二人の返答に驚く。…出来れば、もう少し早く言って欲しかった…。
「あれが王城か…。近付くとやはり大きいな。」
昨日のお茶会の後、部屋に戻ると既に準備が出来ていた。
リサが新品の制服と靴を用意しており、馬車の手配も済ませていた。
今日は正式な謁見では無いので制服で大丈夫との事だ。
「王国の象徴ですからな。…本来なら正門からお通ししたかったのですが、このような形となってしまい申し訳有りません。」
供にはセバスを連れている。わざわざ転移石で戻って来てくれたのだ。
リサには今日は大人しくしているように厳命しておいた。
(流石に王城まで忍び込まれたら大事になってしまうからな。…いくらリサでも王城に気付かれずに侵入するのは無理だろうし。…無理だよな?)
断言出来ないのが恐ろしい所だ。
「気にするな。私が王城に入るのがバレたら面倒な事になるだろう。」
父や兄は何とも思わないかもしれないが、正室は確実に不満に思うはずだ。
下手に刺激しても良い事は無いし、今回のようにお忍びとなったのは嬉しい事だ。
城門を通り城の中まで馬車で乗り込む。
この馬車は王国所有の特別製らしく、門番達との面倒なやり取りも一切無かった。
「こちらです。」
馬車を降りた場所から直通で秘密の部屋へと繋がっており、その道をセバスに先導される。
(中々の手練れが揃っているな。…見えない所にも大勢居る。)
流石は王国の中心だ。
SランクからAランクまで沢山の気配を感じる。
だが…。
(こんなものか?これなら迷宮都市の代官の方が強いんじゃ無いか…?)
あの巨漢、実はかなりの実力者だ。
私も最初会った時は見た目に騙されたが、セバスでも勝てるか分からない位の強さらしい。
王城でアレより強いとなると…。
(これから向かう部屋に二人…。恐らく魔力の質からして騎士と魔法使いか。)
その二人が突出しているが、それでもそこまで脅威には感じられなかった。
黒皇帝との戦い以降、日に日に力が増してきている。
強い敵と戦っている訳では無いのだが、一日毎に魔力量が上がっていくのが感じられるのだ。
「…セバスです。ディノス様をお連れしました。」
部屋に到着するとセバスがノックをして声をかける。
「…どうぞ。お入り下さい。」
少し時間を置いて扉が開かれる。
開けたのは若い騎士のようだ。
「失礼します。」
中に入ると二人の壮年の男性が椅子に座っていた。
一人は王冠を付けているし、もう一人もかなり質の良さそうな服を着ている。
あの二人が王と大公だろう。
「本日はお招き頂きありがとうございます。私はシェール公爵家の次男。マイハの子、ディノスです。現在はシェール家より子爵位を賜っております。」
深く頭を下げる。
ここにはテーブルも有るし、事前に跪く事は不要と言われている。
セバスは軽く頭を下げた後、壁際まで下がったようだ。
「うむ。頭を上げよ。……私はアーリア王国の王、バフェルだ。其方の事は子供達から色々と聞いている。」
顔を上げると、じっくり目を見つめられた。
威厳は感じられるものの、強い力を感じる事は出来なかった。
王家の人間は戦いを得意としていないと聞いていたが、事実のようだ。
(ファリアは例外なんだろうな。)
「私が大公を務めているヴェイルだ。……貴様の事は娘から聞いているが、どうやら少し毛色が違うようだな。」
大公からも声をかけられる。
彼ら大公家は『盾の公爵家』として長年シェール家と対立してきた。
私の事も簡単に信じる訳にはいかないのだろう。今も鋭い視線を向けてきている。
護衛の内二人の騎士と魔法使いだけ紹介された。
近衛騎士団長と宮廷魔術師長と言うらしい。
他の人達より頭一つ抜けた強さを持っている。
「どうだ?王国最強の二人から見て。」
「…王国最強と言ってもシェール家を抜かせば、でしょう?…正直、とても勝てる気がしません。」
「ほほほ…。儂なんて実力の差も分からんですわ。恐らく儂の魔法じゃ傷一つ付けられんでしょうな。」
王の言葉に騎士団長と宮廷魔術師が答える。
道理で強いと思ったら、シェール家を抜かせば王国最強だったみたいだ。
(宮廷魔術師長は鋭いな。『魔力操作』の事を少し気づいているのかもしれん。)
そうで無ければ傷一つ付けられないとは言わない気がする。
「やはりシェール家は別格か…。ディノスよ。此度の会談、其方から話が有ると聞いている。まずはそれを話してくれ。…ああ、礼儀は不要だ。顔を上げての直答を許そう。」
恐らく少しでも私の事を観察したいのだろう。希望通り、真っ直ぐ王の目を見て話す。
「私からの話は父の目的についてです。父は邪神復活を目論んでいます。荒唐無稽に聞こえるかも知れませんが、最後まで聞いて下さい。」
母上が時魔法による呪いにかかっている事。その魔法をかけたのが恐らく邪神である事を話す。
「邪神だと…?」
「確かに、シェール家の邪悪さは群を抜いているが…。」
折角話したが、王と大公は半信半疑のようだ。
セバスも一緒に説明してくれているが、信じて貰うまでは至らないか…。
セバスは以前私の話を聞いた後に色々調べ、今では邪神復活説を支持するようになっている。
この場では非常に心強い味方だ。
「……王よ。この小僧の話、信じてみる価値は有りますぞ。」
「宮廷魔術師長…。確かにこの場で嘘を言う意味は無いが、二人が勘違いしている可能性も有るのだぞ?この世界に生きる者が邪神復活を企むなど考えられん…。」
「それですがな…。宮廷魔術師の中からもマイハ殿の診察に行った者はおります。その中に神の力を感じたと言ってる者が居たのですよ。マイハ殿は聖女候補だった故、当時は不思議に思いませんでしたがのう…。」
(宮廷魔術師も来ていたのか…。)
名前は名乗っていないだろうが、全く気付かなかった。
「それに…。信じた所で儂らがやる事は大して変わらんでしょう。…小僧、そうじゃな?」
「過去に行われた邪神復活の儀式の資料が有れば、見せて頂けると助かります。何かキーアイテムが有るのなら阻止は容易いですから。」
それ以外では殆ど無い。
実は何もしないでいてくれるのが一番ありがたいのだ。
暴走して父に兵を送られれば邪神復活されるし、逆に私の動きが制限されても困る。
(…いや、もう一つあるか。この際だし聞いてみるか。)
「…後、どこか広い空き地を借りれますか?土魔法を使って壁を作り、避難地区のようなものを作っておきたいのです。」
邪神復活が阻止できてもシェール家と争う事になれば戦禍は免れないだろう。
もしもの為に作っておいて損は無いはずだ。
この世界において空き地…つまり魔物達のテリトリーは腐る程有る。
王国の領地内でもそれは同様の事で、人間はその地の魔物を間引く事で生活圏を確保している。
「ふむ…。避難地区か…。空き地で良いなら許可しよう。詳細はまた後で人を送る。その他についても良いだろう。其方が邪神の存在を危惧している事は十分伝わった。
…では、今度は私から質問しよう。
其方はシェール家を潰す…あの怪物二人を倒す気が有るのか?」
真剣な表情で王が聞いてくる。
一瞬で張り詰めた空気が漂い…誰かの喉が鳴る音が聞こえてくる。
「はい。第一の目標は邪神の復活を止める事になりますが、それを成す上でシェール家との対立は避けられません。
…父や兄と戦うつもりでいます。」
未だに勝ち筋は見えていないが、以前のように邪神復活を止めるだけで良いとは思えなくなっている。
…色んな人と出会った事で私も変わったようだ。
「…そうか。分かった。その言葉が聞けただけで十分だ。表立って手助けする訳にはいかんが、出来る限りの事はしよう。」
王の言葉と共に張り詰めた空気が緩んでいく。
どうやら会談は無事に終わりそうだ。
「…ふん。どうやら本当に毛色が違うようだ。…少しだけ認めてやろう。」
「おい、ヴェイル。目付きが悪いままだぞ。認めるならそれらしい顔をしろ。」
「まだ私の話が終わって無いからな。この話をする為にわざわざ私も来たんだ。」
(大公閣下がわざわざ…?一体どんな話だ?)
思わず身構える。
過去の因縁を持ち出されるのだろうか…。
「娘とは一体どんな関係なのだ?最近の手紙には毎回貴様の話が出てくる。今回会うと話したら、わざわざ私を訪ねて貴様の話を延々と聞かされたのだ。」
「え……?」
「そう言えば、私の娘達…娘も手紙を送ってきたな。ディノスと会って欲しいと…。国家の大事の前だからと後回しにしていたが、私にも是非聞かせて欲しいな。」
二人が今までに無い程大きく見える。
何故か知らないが背筋が伸びてしまう。
「どんなと言われても…お二人にはよく気にかけて貰ってまして。仲の良い友人ですよ。」
「…ふーん。…気にかけて貰ってる?」
「…へー。…仲の良い?」
一気に二人がチンピラのようになってしまった。
今にも床に唾を吐きそうな感じだ。
「ヴェリミエール…様には同じクラスと言う事もあって……。
ファリア…様にはよくお茶会に誘われてまして……。」
何故こんな話をさせられているのか不明だが、二人が納得するまで何度も説明する事になってしまった。
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