表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

55/90

ヒメ=センイ

私はヒメ=センイ。アーリア王国の子爵令嬢にして、前世の記憶を持つ選ばれた人間よ。

前世の記憶でこの世界が乙女ゲームの舞台だと知ってるし、転生時に特典も貰ったわ。


それが『豪運』。私の行動が全てうまくいく能力ね。

更に特別な存在の私は『簡易鑑定』と『簡易アイテムボックス』も貰えたわ。

もしかしたら私の美貌に神々もメロメロかも知れないわね。


幼い頃から前世の記憶、ゲームの知識を使って来たわ。

神童と呼ばれ、周囲からチヤホヤされたけど、全然足りなかったわ。

私が狙うのはゲームのハーレムルート。神に祝福された私にとっては簡単な事よ。


その為にはまずは王家との繋がりよ。

貧乏なセンイ家をまたたく間に復興し、その実績を持って社交界デビューしたわ。

私の魅力に皆が夢中になったけど、私は軽い女じゃ無いし全て無視ね。

これを機に良い男になりなさい。


4人のヒーロー達に会えた時はもう最高の気分だったわ。

ゲームで何度も見た顔、幼さも加わってよりキュートだったわね。


一人は奴隷だったからすぐに保護し、残りの3人とも交流を重ねて行ったわ。

3人もすぐ私の虜になり、順風満帆ね。


ゲーム主人公が存在している事を確認したから警戒していたけど、結局何も無かったしね。

念の為にアイテムを使って聖女になったし、もうハーレムルートは確定したも同然だわ。

邪神が来たとしても勝手に封印されるわね。


ただ、唯一気にしてるのが…。


「ディノス=シェール…。」


「ん?どうした?ヒメ。公爵シェール家の次男がどうかしたのか?」


いけない。折角のお茶会だって言うのに、嫌な事考えてしまったわ。


「うん…。同い年にあの公爵シェール家の人間が居るって聞いてちょっとね…。」


しかもゲームには登場しなかった男。

絶対に転生者だわ。

ただの転生者でも厄介だって言うのに、よりにもよってあの公爵シェール家…。


「確かにな…。第一王子あにうえは心配するなって言ってたが、な……。」

「俺が守ってやる!…とは言い切れないが、絶対に逃してやる!」

「そうですね…。皆で力を合わせればヒメだけは守れると思いますが…。」

「ご主人様、いざとなったら僕を盾にして下さい。」


第三王子ギル伯爵令息エドガー侯爵令息フランツ、それに私の所有奴隷クルーが慰めてくれる。

クルーも3人から受け入れられており、非公式の場なら普通に会話出来る関係よ。


(皆じゃ無理だよ…。)


公爵シェール家はとてつも無い力を持ってると言うし、私を逃す事もできるか分からない。

それに、そもそも…。


「私は皆も失いたくないの。…学園に通わせないようにするとか出来ないのかな?」


折角見つけたヒーローというだけじゃない。

もう私にとって4人は掛け替えの無い存在だわ。

私を守る為に皆が居なくなったら意味が無いの。


「それは光栄だ。……一応何か方法が無いか調べてみるよ。」


ギルが調べてくれるみたいだけど、あの表情を見る限りだと難しそうね…。


ゲームで公爵シェール家は何度も主人公を手にかけたわ。

立ち位置で言えば私が犠牲者にされると思う。

次男ディノスさえ居なければルート通りに進めるだけで良いのに…!


「そうなると…そろそろ鍛錬も始めた方が良いかもなぁ。」


「うーん。ですが、ヒメの助言に従えば学園の成績は十分ですよ?」


エドガーとフランツが嫌な事を話し始める。


「訓練って……あの戦乙女のうきん達と?私、あの人達超苦手なのよね…。」


そもそも内政で十分領地は潤っている。

ゲームでもレベルを上げなくてもクリア出来たし、お金さえ有れば兵士を雇える。

回復系だけは保険に鍛えてるけど、それ以外は必要だと思わないのよね。


「訓練は学園に入ってから考えるか。公爵シェール家の人間も避ければ大丈夫だろう。」

「分かった!話が通じるヤツだと良いな!」

「私は学年が違いますが、いつでも駆けつけますからね。」

「私もすぐに駆けつけます。いつでもお呼び下さい。


「ギル、エドガー、フランツ、それにクルーもありがとう。」



クルーの事はすぐにでも奴隷解放してあげたいけど、ゲームの攻略に関係してるからまだ我慢して貰ってるわ。

もう少ししたら解放出来るから、それまでの辛抱よ。


その後も公爵シェール家の対策について話し合ったけど、結局良い案は思い浮かばなかったわ。




「今日は祝いの日だ。不問にしてやる。目の前から消えろ。」


入学の日、折角の門出を変な男に邪魔されたわ。

王子ギルの歩みをさえぎって、私の事もイヤらしい目で見ていたわ。

強く言っておいたけど、ちゃんと伝わっているのかしら。

俯いているようけど、早く退いて……!


何か禍々しい気配を感じて私達が歩いてきた道を振り返る。

そこには灰色の髪をした化物が居た……。


「シェ、シェール…公…爵…家…。」

「ア、アレが…噂の…。」

「シェール…公爵家…か……。親父達が関わるなという訳だ…。」


ギルが、フランツが、エドガーが震えている。

私もだ。何よ、この凍えるようなプレッシャー…。


何とか相手を見て『簡易鑑定』を行う。


「ッヒ!…イヤ、イヤーーー!!」


その瞬間に強烈な死の恐怖が私を襲った。

『鑑定不可』と言う結果が並んでいたけど、そんなものどうでも良かった。



パニックになり皆を置いて逃げてしまった…。

多分、さっきのは攻性防壁と言われるものだと思うわ…。

鑑定を使うに辺り注意する魔法として記されていた。

でもあんなに凶悪な魔法……うぅぅ、駄目だ。着替えないと……。


学園に来てやっと乙女ゲームが開始したと言うのに、最悪の展開よね。

ゲーム主人公や悪役令嬢も戦乙女のうきん達のチームに入ってるようだし、これもあの化物の仕業かしら?

唯一ゲーム通りなのは…。


「あら?身分を理解していない、薄汚い泥棒猫だわ。まだ学園に居たんですか?」


ミード=ゴウツ。ギル達を攻略する時に出てくる伯爵令嬢だわ。

私がギル達と仲良くしてると聞きつけ、昔から嫌がらせをしてくる。

ゲームでも悪役令嬢の役柄で、主人公に嫌がらせをしてくるわ。


「……。」


一礼してからすぐに離れる。

アイツと関わっても良い事は無いわ。

アイツ自身話が通じないし、ゴウツ伯爵家も悪い噂を聞く。


「いつまでも調子に乗らない事ね!」


後ろで悪役令嬢ミードが叫んでいる。

学園には厳重な結界が張って有ると聞くし、伯爵家と言えども何も出来ないでしょう。

所詮は負け犬の遠吠えね。



入学してから少し時間が経ちようやく慣れて来た頃、化物ディノスが動き出した。

毎日私を追いかけ回して来て、頭がおかしくなりそうよ。


ギル達が話に行ってくれたけど、ボロボロにされてしまった。

だから危険だって言ったのに!


その後も何度も化物ディノスに挑みに行ったわ。

まるでお伽話の勇者のようで素敵だわ。



…でも、最近は…、何故か楽しそうにしてる…。

私とのお茶会も減ってるし、化物ディノスと話すように薦められる。


一体どうなっているの!?

私の薔薇色の学園生活が、あの男のせいで台無しよ!!

誤字脱字報告ありがとうございます。


もし面白ければブックマークや

↓にある☆☆☆☆☆から、作品の評価をお願いいたします。


新作書いてます。

下のランキングタグにリンク有るので良かったら見てください。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ