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内政官

自室へ戻るとリサが出迎えてくれた。

他の子達はまだ学校のようだ。

エルフ達は従者用の幼年学校に行きながら可能な範囲でメイド学校に通っている。

私達の中で一番忙しいのは彼女達だろう。


「セバスも居たのか。」


「王家への報告も済みました。少ししたらここをつ予定です。」


セバスは私達と共に王都へと移動し、少し前まで王城へと報告しに行っていた。


「内政官はやはり駄目そうか?」


あちら側から連絡が来ると言っていたが、気になって質問する。


「それでしたら、私の方に連絡が有りました。すぐにお呼び致しましょう。」


「おお!来てくれる人材が居たのか!ありがたい!」


私の質問にリサが返答してくれた。

本当にありがたい。内政官の給料は多く出さないといけないな。

ワクワクして待っていると、リサが一人の女性を連れて来た。


理知的な瞳で物腰も…「っなぁ!!」


セバスの方から変な声がしたので、見てみると口を大きく開けていた。

セバスがここまで驚くとは…この女性に驚い…「あら?どうしました?」


女性がセバスを見ている。

凍えるような冷たい視線だ。


「い、いえ…、知り合いと似ていまして…申し訳ありません。」


何か凄い汗をかいているな。


「こちらが内政官として立候補してくれた方です。」


「エミィと申します。でい…ディノス様にお会い出来て光栄です。」


リサの紹介にエミィと名乗った女性が頭を下げる。

所作が綺麗でオーラが有る。高位貴族出身なのかも知れない。


「非常に助かる。知っての通り、公爵領は余り良い場所とは言えない。転移石を渡すからもしもの場合は絶対に逃げてくれ。」


内政官エミィの所まで歩き、転移石を渡す。

彼女に何かあれば問題になる恐れが有る。絶対に無事で居て貰わないといけない。


「ありがとうございます。家宝に致しますわ。」


「いや…頼むから使ってくれ。それで、貴女はどこの家の令嬢なんだ?あぁ、言いたく無いなら言わなくても良いよ。」


一応質問しておく。

来てくれるだけでありがたいし、誰であろうと守る必要が有るが、優雅な振る舞いが気になってしまった。


「とてもディノス様には言えないような、か弱い家ですわ…。母が宮廷にいる為、礼儀には厳しく育てられましたの。」


何かセバスが挙動不審な気がする。気になるが、まずは内政官エミィに集中しよう。


「そうなのか…。給料は多く払うし、何か困った事が有れば何でも言ってくれ。」


「……何でも、ですか?」


「あ、ああ。出来るだけ叶える。」


何故か寒気がしたが、念願の内政官を前にしたら小さな事だろう。

これでデスマーチも避けられるというものだ。


「感謝します。大変失礼ですが、『ディノ』様とお呼びしても宜しいでしょうか?」


「そのくらいなら全然問題無いよ。」


初対面で呼び名を決めてくるのに違和感は有るが、実害も無いし気にしなくて良いだろう。


「ありがとうございます。折角お会いしたディノ様の元を離れるのは悲しいですが、遠くから見守っております。」


「あ、ああ。仲良くやって行こう。」


またも悪寒がするが、何もおかしい事なんて無いはずだ。

内政官エミィと握手して細かい契約はリサに任せた。


更に以前から考えていた情報官についても何とかなりそうだとリサから報告を受けた。

リサが何人かの貴族令嬢と交流を持てたそうだ。

それらの人脈を使い、少しずつ情報網を構築していくとの事だ。


迷宮都市からも人を呼び、育てながら繋がりを広げていこう。

これで多少でも情報が入りそうだ。


「第一王子様も密かに支援してくれていると言うし、少しずつ運が向いて来たな。」


実は結構前から第一王子が支援してくれていたらしい。

私への教育係の増員や迷宮都市へ冒険者の斡旋を指示してくれたと聞いた。


「第一王子…様、ですか?」


「あぁ、大変素晴らしい方らしい。是非いつかお礼を申し上げたいよ。」


内政官エミィが聞いてくる。彼女も新しい配下という事で在席したままだ。

王家の味方という事でいつも以上に浮かれてしまう。


「ですが…、あのバ…あの方は聖女マイハ様が初恋だと言うのに、公爵シェール家に奪われた際には何も出来なかったと聞きます。わたくしなら命をかけて救いに行きますわ。」


「そ…、そうなのか?」


内政官エミィの剣幕に押されてしまう。

衝撃の事実だが、何故彼女は知ってるのだろうか。

それに何故か嫉妬?しているようにも見えるが…。


「そう言う事か。」


「え?ど、どうしましたか?」


私の言葉に内政官エミィ狼狽うろたえる。どうやら当たりのようだ。


内政官エミィは母上のファンだったんだな。だから第一王子様を怒っているのか。」


それなら全て納得できる。

私を支えて迷宮都市に来てくれるのも母上の息子だからか。

王子に対する感情は不敬では有るものの、仕方無い事だろう。


「え、ええ。そうですわ。」


「ならば尚の事大歓迎だ!これからも宜しくな!」


嬉しくなって内政官エミィの手を両手で握る。

母上にはいつも助けられていると嬉しく思う。


一頻ひとしきり喜んだ後、リサに追加で調査を依頼する事にした。


「リサ、ちょっと調べて欲しい事が有るんだ。第三王子様と…青髪と赤髪の高位貴族と一緒にいた女生徒について調べてくれないか?」


「畏まりました。」


リサが頭を下げるが、内政官エミィが待ったをかけて来た。


「お待ち下さい。その御令嬢ならよく知っていますわ。…ですが、その方がどうかしましたか?…まさか、ディノ様まであの女のとりこに……?」


内政官エミィの髪が逆立ち、魔力が漏れ出ている。

どうしてかは知らないが逆鱗に触れてしまったらしい。


「いや!王子達と親しげにしているから気になっただけだ!」


何故初めて会った配下に言い訳しているかは不明だが、こうしろと本能が訴えている。

正解だったようで内政官エミィが落ち着いてくれた。


「そうですか…それは失礼しました。その女生徒ですが、名をヒメ=センイと言います。」


センイ子爵家を繁栄させ、次期聖女と呼ばれ、第三王子や侯爵令息、伯爵令息と既に婚約しているとの事だ。

やはり転生者なのか?と思いながら話を聞く。


「領地を発展させた手腕は優れたものですし、男性3人の方も気に入ってるようです。ですから婚約に対しては誰も文句は言いませんわ。」


「ですが。」と内政官エミィが話を続ける。


「次期聖女とは自ら名乗ってるようですし、戦闘はまるで駄目ですわ。一妻多夫…それも王子を含めたものを目指すというなら、まだまだ役者不足と言わざるを得ないでしょう。」


まだ15歳だし見守っているものの、余り努力をしている様子も無いので女生徒からは嫌われているとの事だ。

王子を含めた男性3人は女生徒にゾッコンなので話にならないらしい。


領地を繁栄させた方法を聞いてみると、ゲームの手法がいくつか使われていたので転生者で間違い無いと思う。

何をやっても失敗しないと言うし、『豪運』系の転生特典も持ってるのかも知れない。


(どうやって接触するか…いや、そもそも接触した方が良いのか?)


既に王子達とは婚約者だと言うし、戦闘をしてないと言うからには、乙女ゲーム通りに進めるつもりだろう。

その場合は私と協力し合える事は殆ど無い。


ゲームにはいない公爵シェール家の次男わたしが居るので私の事は警戒しているはずだ。

何より公爵シェール家はゲーム主人公にとって鬼門となっている。

バッドエンドで公爵シェール家によって何度も殺されるからだ。

主人公の座を奪った転生者ヒメも近づきたく無いはず。


(とはいえ、一度は接触した方が良いか…。)


別に修羅の道へ巻き込むつもりは無い。

相手の考えを聞いて対応すれば良いだろう。


内政官エミィに礼を言い、そのまま迷宮都市に向かう彼女を見送る。

自前の転移石も有るのでたまに戻ると言っていたが、私から支給する事も考えよう。


何故かセバスが壊れたように「前代未聞ですぞ…。」と呟いていたが、明日には戻っている事だろう。

何となく追求すると私までおかしくなる予感がして、見ない事にした。

誤字脱字報告ありがとうございます。

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