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叙爵

私が正式に貴族位を受け街の管理を任された事で、街はまたお祭り騒ぎとなっている。

私自身は祭りに参加していないが、人員の募集は頼んでおいた。


そして、目の前には今まで私を支えてくれた仲間達が居る。

彼女達にもこれからの望みを聞くつもりだ。


「皆、よく集まってくれた。私はこの度公爵家から子爵に任命された。断る事など不可能だし、このまま受けようと思っている。」


貴族子弟が生家からの任命を断るなど基本的にはあり得ない。

余程の理由が無ければ絶縁か敵対関係になるだろう。


そして公爵シェール家では敵対=戦闘だ。

今の私の力では従うしか無い。


「この後には学園入学も決まっている。良い機会だし、皆の考えを聞きたいと思っている。」


リサは病気で学園には通えなかったし、ティニーも聖国での教えは殆ど受けていない。

アリスは元々このタイミングで進路を聞くという話だった。


これを機に、各自でスキルアップするのも良いと思っている。


「リサはどうする?王都にはメイドの専門学校も有るらしいが。」


「私は今まで通りお側でお仕え致します。」


リサは正式にカダンの家を継ぐのを止め、私の下で士爵家をおこす事となる。

王国貴族のカダン家は親戚に跡を継いで貰うとの事だ。


士爵家は貴族の中で最下位に位置する。

陪臣から任命された士爵など、平民と殆ど変わらないだろう。

それでもついて来てくれる事には必ず報いるつもりだ。


「リサ=カダンよ、士爵に任命する。」


「この命尽きても、忠誠を誓います。」


専門学校には通うように命令した。

私が授業を受けてる間はどうせ離れる事になるのだ。ちょうど良いだろう。

学園では男子寮に入るが、私室に使用人を置くのは認められているとの事だ。


「次はアリスだ。母上から聞いた所によると、一度考えを確認するとの事だったが。」


「勿論ずっとお仕えします!今更そんな事聞くなんて酷いですよ!」


頬を膨らませて怒っている。一応確認するべきだと思っていたが、無粋だったか。

アリスは執事用の学校に通うと言ってくれた。

セバスからの教えで殆ど問題無いが。より完璧を目指すとの事だ。


「寮では精一杯お仕えしますね。あ!ちょっとお待ち下さい。」


慌てた様子で部屋を出ていく。

すぐに戻って来たが、執事服に衣装替えしていた。


「へへ…。ちょっと恥ずかしいですが、執事として仕えるので…。」


顔を赤くして少し俯いている。

服装と相まってイケナイ事をしているみたいだ。


(おお…。ゲームで何度も見た男装か…。)


感動の光景のはずが、何だかしっくり来なかった。

もう私の中ではゲームのアリスでは無くなってしまっていたんだろう。


「その格好も似合ってるよ。でもいつもの可愛いアリスの方が嬉しいから、これからもメイド服にしてくれ。」


中々変態的な事を言ってるが、あの愛らしい姿がまた見れるのなら問題無い。

顔を赤くしているが、引かないでいてくれたなら十分だ。


「アリス=ニムドよ、士爵に命ずる。この剣も褒美に与えよう。」


「はい!ずーっとお仕えします!」


黒皇帝ダークエンペラーの剣を渡す。

完全に呪いは解け、今は神聖な力を宿している。


私の神剣と打ち合える業物で、宝珠をめる事で強化可能な魔法剣だ。

今は私特製の雷魔石を嵌めてある。


アリスの実家も母上の生家で士爵位をたまわったらしい。

アリスの兄は無事生存しているし、ニムド家は完全に復活と言えるだろう。


「ティニーは…。」


「ワタシは一度白都に戻るわ!白都滅亡が本当に回避出来たのか確認しないと!」


「そうだな。分かったら教えてくれ。」


無貌ノーライフキングが直接の原因らしいが、黒幕がいるとの事でまだ注意が必要だろう。


「大司教の孫へ勝手に爵位を与える訳にもいかないし、この宝珠を褒美とするよ。」


迷宮で取った白宝珠だ。

折角なのでここで渡す事にした。


「聖国の聖女と王国の救世主の結婚式にしたいわね!大陸中から祝福されましょう!!」


そう言って抱きついてくる。

嬉しいが、皆の視線が…。


「あらぁ…羨ましいですわ〜。」


ジュリが間近で見てくる。

顔が赤く、既に興奮しているようだ…。


「っきゃぁ!ジュリ!近すぎよ!!」


ティニーも驚いて抱きつくのを止める。

結果としては正解だったようだ。


仕切り直してティニーの番を終える。


「次はいよいよわたくしですわねぇ。」


「ああ。ジュリは…本当にこんなモノで良いのか?」


ぷにぷにしたスライムのような物体だ。

ジュリは宝珠の一種と言っていたが…。


「それこそは〜、古代王国の秘宝ですわぁ。まさかお目にかかる事が出来るなんて〜。」


何故古代王国の秘宝が迷宮から出て来たのか分からないし、そもそもジュリの言う『古代王国の秘宝』はロクな物が無いからな…。


「分かった。これを褒美としよう。皆に迷惑をかけるなよ。」


被害はジュリ本人と、百歩譲って私までにして欲しい。


「んふふ〜。勿論ですわぁ。」


妖しく微笑む様子を見ると、とても信用出来ない。


「ジュリにはこの後の黄金郷エルドラドと共に頼みたい事が有るんだ。」


「分かりましたわぁ。」


ジュリへの叙爵は無しだ。

奴隷の身分だという事も有るし、そもそも賢者の教えで貴族に仕える事は駄目なんだとか。

それでは現状で既にアウトだと思うが、「主人と奴隷」の関係なら大丈夫ですわ〜。」と言っていた。賢者が聞いたら怒る気がする。


黄金郷エルドラド、前に。」


「「「っは!!!」」」


先ほど名前が出た時からソワソワしていた6人を呼ぶ。

獣人の二人も大人しくしているようだ。


「よく鉱山の暴走スタンビートを収めてくれた。それぞれ士爵に命ずる。」


「「「有り難き幸せです!!!」」」


天人娘エメルト、よくリーダーとして皆をまとめた。」

「はい!今後も精進致します!」


闇人娘ナタリー、これからも天人娘エメルトを支えてくれ。」

「っは!共に御身をお支えします!!」


雪女イヴ、大活躍したと聞いている。ありがとう。」

「ディノス様に褒められるなんて…至上の喜びです。」


夢魔娘ミリーナ、折れた武器は新しいものを用意しよう。余り無茶しないようにな。」

「あ、ありがとうございます!!」


銀狼娘キリ金狐娘アイネ、おいで。」

「「ディ様ーーー!!」」


最後に獣人の二人を抱きかかえてあげる。

小さいし問題無いと思ったが、他の4人の表情が強張こわばってていたので全員ハグする事にした。


「後で迷宮で取れた武器を選んでくれ。」


頼み事も有るが、まずは全員分やり切ろう。


「最後にノスリ、ノスル、ノスレ。よく頑張ってくれた。それぞれ奴隷から解放する。」


3人は森での魔法の他に、鉱山でも冒険者達を手伝っていたようだ。

本当は士爵にしたかったが、手柄が少なすぎるとセバスにいさめられてしまった。


奴隷からの解放はずっと前からやりたかったが、3人が嫌がって今まで延びて来たのだ。

奴隷契約という繋がりが無くなってしまうので、不安に思ってしまうらしい。


最近はやっと落ち着いて来たのでようやく解放できる。


(幼女を奴隷なんて外聞が悪いしな。)


しかも公爵シェール家の人間が所有してるのだ。

確実に変な誤解がされるだろう。


「ノスリ、ノスル、ノスレ。メイドとして、これからも仕えよ。」


「「「永遠にお仕えします。」」」


奴隷契約の解除後、改めてメイドとして契約魔法を結ぶ。

普通の使用人でここまでするのはまれだが、これも新しい繋がりだ。


淡い光に包まれ、契約は完了した。



いよいよ本題、と言ったら皆に悪いか。

ずっと昔からの目標の一つに着手する。


「ジュリ、黄金郷エルドラドよ。世界樹の探索を命ずる。」


私の言葉に皆が一斉に私を見る。

今にも爆発しそうな雰囲気だ。


「まずは場所を特定し、その後に皆で向かう。」


出来れば夏休み、遅くとも冬には出発したい。

私達もSランクに到達した。十分可能なレベルだ。


「ならワタシも…!!」


「各自はそれまで英気を養ってくれ。」


ティニーの言葉をさえぎる。

ティニーも白都でやる事が有るはずだ。それが終わってから合流すれば良いだろう。


リサとアリスは私の世話という仕事が有ったので何とか堪えてくれたようだ。

身の回りの事は一人でも出来るが、それでは貴族としては失格だからな。

これから先は貴族として人を使う事も考えていかないといけないだろう。


「任せてぇ〜♪」

「「「必ずや発見してみせます!!!」」」


大体の位置を教える。

皇国の近くだが、戦の影響を受けて無い事を願う。


これで王都に向かうのは私とリサ、アリス、エルフ3人という事になる。

エルフ達は世界樹に向かうには幼すぎるので止めた。

迷宮都市ペイスに残すのも考えたが、それも可哀想だろう。



遂に乙女ゲームの世界へと足を踏み入れるのかと期待が高まる。

更に母上の解呪もすぐそこだ!


まるで本当の15歳のようにワクワクしてしまっている。

何とか道中に気持ちを落ち着けようと思い、準備を始めた。

明日は20時頃投稿します。


誤字脱字報告ありがとうございます。


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