凱旋
ーーーディノス視点ーーー
黒皇帝との戦いが終わるとすぐにジュリがやってきた。
瞼を閉じているが、その裏の瞳が発光しているのが分かる。
(魔眼を使ったか…。)
今も光り続けているという事は、全開で使用したんだろう。
甘い匂いも漂ってくる。魅了の香も使ったようだ。
効き目は薄いが全種族に通用すると聞いた。
「あらぁ〜。乙女の香りを嗅ぐなんてイケませんわぁ。」
そう言ってジュリが魔法で匂いを消す。
魅了の効果は切れていたので気づかなかったかもしれないな。
「お疲れ様。ドラゴンはどうだった?」
「う〜ん。強かったですが…最初から消耗していましたわねぇ。」
「最初から消耗?」
「はぁい〜。恐らくアレが本来のボスだったんでしょうねぇ…。でも無理して色々と召喚するから、大分弱ってましたわ〜。」
黒皇帝、般若面、無貌、これらは召喚によって呼ばれただろうとの事だ。
更に道中の敵も無理に増やしていたらしい。
「あの3匹は別格でしたからねぇ…。ご無事で何よりですわぁ〜。」
言いながら抱きついて来る。
普段ならスマキにしてやる所だが、今日はジュリも頑張ったしな…。
(……え?)
前と後ろに柔らかい感触が当たる。
前はジュリだが後ろは…?
「お待たせして申し訳ありません。ご褒美の時間と聞き、駆けつけました。」
(うん…、リサしか居ないよな…。)
殺気が無かったとは言え、背後を取られたのに全く気付かなかった。
黒皇帝よりよっぽど怖い相手だ…。
「ジュリ殿、前を堪能したら交代して下さい。」
「あらぁ…いつまで経っても満足できませんわぁ〜。」
「あーーーー!ずるい!何やってるのよ!!」
「雷速!!」
二人も戻ってきて賑やかな時間が戻ってきた。
いつまでもこうしては居られないし、迷宮を出るとしよう。
「後で付き合ってやるからまずは迷宮を出よう。すぐに出られるのか?」
「ボス部屋の奥から出られますわぁ。もう迷宮の機能も戻ってるはずです〜。」
ボスを倒しはしたが、迷宮はそのまま残り続けるそうだ。
ただ長い間モンスターが弱体化し、暴走も起きないらしい。
各自戦利品を持ち寄り、最奥へと向かうが…。
「ごめん…。ワタシ達だけ倒せなかった…。」
「ごめんなさい…。」
ティニーとアリスが謝ってくる。
敵の策略に嵌り、取り逃してしまったらしい。
「それは問題無い。白都の方は大丈夫か?」
「多分…大丈夫だと思うわ。終わったらもう一度祈りを捧げてみる!」
ならば今やれる事は無いな。
ボス部屋の奥に向かうと巨大な宝箱が存在感を放っていた。
箱自体が美術品なのか、大きな宝石が幾つもはめ込まれている。
宝石は見慣れているとは言え、こういった美術品となると全く違うなと感心してしまう。
箱を開けると沢山の宝石や金貨と共に、真っ白い宝珠が置かれていた。
「! それ!!」
ティニーが真っ先に反応する。
白いし神聖な宝物だろうか?
宝珠だけティニーに渡し、他は魔法袋にしまっておいた。
他にも色々と有ったが後で選別しよう。
「やっぱり!これ、白都で失われた宝珠だわ…!」
何でも大昔に失われたものらしい。
私達は使わないのであげておいた。
「でも…、ワタシ何もして無いし…。」
大事に宝珠を抱えながら葛藤している。
そんなの誰も気にしないと言うのに…。
「気にするな。次に活躍すればいいさ。」
そもそも敵を撃退しただけで十分だ。
逃げたなら次会う時に倒せば良いだけだ。
「…うん!そうよね!次は全部任せて!!」
皆もうんうんと頷いている。
宝珠を掲げながら飛び跳ねるティニーを見ると、少し気が緩んでしまう。
「アリスにも後で剣を渡せると思う。待っててな。」
アリスの頭を撫でながら言う。
黒皇帝の武器は消えずに残ったので、アリスに渡すつもりだ。
持ち主の影響から解き放たれたからか、漆黒の剣から見事な宝剣に変身していた。
一応鑑定を済ませてから渡すつもりだ。
真っ赤な顔で頷いているアリスに満足して外へと向かう。
(鉱山も確認しに行かないとな。)
時間的にはもう終わってると思うが、ダンジョン内では連絡がつかない。
急いで確認しようと迷宮を出ると、大勢の人が待ち構えていた。
「お帰りをお待ちしておりました。」
「鉱山は片付けました。」
「街の住人にも重傷者は出ておりませんわ。」
「隠れ里の人間も続々集まってきてます。皆ディノス様に感謝しています。」
「孤児院の皆も!」
「元気だよー!」
真っ先に黄金郷達が出迎えてくれる。
聞きたかった事も一気に聞けて大助かりだ。
その後ろではセバスが頭を下げている。
「ノス様の。」「偉大さに。」「やっと気付いたようです。」
エルフ娘達も称えてくれる。
前もやってたが、クネクネ踊りが気に入ってるようだ。
アレは可愛いから私も好きだ。
「ディノス様!!よくぞお戻りになって下さいました!!こんな大英雄を…俺は…俺はーーー!!!」
額当てが私の肩を掴んで男泣きしてくる。
抱きつかれなくて良かったとホッとしてしまう。
「救世主様!我らダークエルフ一同!家臣としてお仕え致します!」
ダークエルフを始め、幾つもの獣人や亜人達が頭を下げている。
無位無冠の私がこんなに大勢の家臣を雇えないが、一時でも受け入れるしか有るまい。
(怪我人が多い上に里は壊滅状態だろうからな…。)
幸い迷宮の財宝が有る。アレで暫くは凌げるだろう。
手を上げて応えてやると、大歓声が広場に鳴り響いた。
町中の住民が集まり、大合唱をしている。
獣人達と孤児院の子達が早速意気投合している。
男女で仲良くしている者も多いから、その内もっと賑やかになるかもな。
「ディノス様。お疲れ様でした。」
リサが私の手と肩を拭いてくる。
さっきまで目の前に居た額当てが宙を舞って消えていった。
「全く…主様の魅力に気付くのは良い事だけど、ちゃんと弁えて欲しいよねー。」
アリスが半目になって文句を言っている。
ア、アリスちゃん…?
「ホントよね!新参者にディノスが汚されるなんて有り得ないわ!」
ティニーが拭き終わった手と肩に浄化の光を当ててくる。
モンスターより扱いが酷いな。
「本当ですぅ。ご主人様のお背中は私がお守りしますわぁ〜。」
ジュリが背中に飛び乗ってくる。
捨て去ろうかと思ったが、ジュリの魔力が激減している事にようやく気付いた。
「キツいなら言えば良いだろうに。」
「薬なんかよりも、ご主人様の魔力を頂きたかったんですのぉ。」
『魔力操作』で魔力を与えてやる。
今となっては人前でやっても問題無い程スムーズにできる。
「あぁぁ。良いですわぁ。」
ちょっと台詞が危険なのでポーションも口に放り込んでおいた。
「では、今度こそ前を頂きましょう。」
「じゃぁボクは右ー。」
「ワタシは左ね!」
「順番待ちしていても宜しいでしょうか。」
「闇人娘!?…ええい!女は度胸だ!私も並ぼう。」
「早い者勝ちですわ。天人娘はまだまだ甘いですわよ。」
「私とした事が…!出遅れるなんて!」
「わーいわーい!」
「抱っこ抱っこーー!」
黄金郷の皆も列を作っている。
お祭り騒ぎだし、もう開き直るか。
「ノス様ー。」「バンザーイ。」「バンザーイ。」
エルフ娘達も頑張ってくれたし、何か褒美を考えておかないとな…。
第05話『チート』
第15話『小さな敵』
をそれぞれ追加しています。
物語の流れ自体は変わっていません。
明日は20時頃投稿します。
誤字脱字報告ありがとうございます。
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