表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

19/90

13歳の悩み

ティニーを迎えてから更に3年が経ち、13歳となった。

リサは18歳、アリス13歳、ティニー15歳だ。


乙女ゲームの始まる学園開始まで残り2年。

学園には私も入学出来るらしい。

正室フィアスが文句を言っているようだが、誰も相手にしていない。


訓練ではツァンとセバス以外の教育係では相手にならない程度には成長している。

3人娘もしっかり鍛錬を積んでおり、順調に強くなっている。


リサの魔力制御もうまく行き、自力で抑えられるまでに成長した。

ただ全て自力でやると消耗が大きすぎるので、私が色々と協力している。


アリスは年齢のせいもあって一番成長が遅いが、二刀を使い始めた事で大化けした。

ゲームではそんなシステム無かったが、雷属性による神速の連撃は凄まじいの一言だ。


ティニーは母上から色々と教えを受け、急激に成長している。

ゲーム以上の魔法を使えるようになっており、今後が怖い位だ。


そろそろ次のステップに進みたいが、悩みもあって立ち止まっている状態だ。


(今日で10日か…)


母上の呪いは進行中で、最近では月に二回ほどしか目覚めない。

母上を助ける為に行動したいが、そうするとこの屋敷に母上を残して行く事になる。

正室フィアスからの嫌がらせを考えると、とても残しては行けないのだ。


(学園が始まってからでも間に合うはずだ。)


ゲーム世界と違ってレベルが見れる訳じゃ無いので皮算用だが、恐らくは大丈夫なはずだ。


(何とか母上を移動する手段を考えないとな…。)


私が学園に通えば結局母上は一人になる。

それまでに何とかしなければいけない課題だ。


「ディノス!!」


いつの間にかティニーの顔が目の前に来ていた。

どうやら考え込んでしまっていたらしい。


「ああ、すまない。聞いていなかった。」


私が謝るとティニーが心配そうな顔をする。

最近同じ事を繰り返してるので呆れているのだろう。


「まぁ良いわ!体を動かしましょう!」


ティニーが訓練場に走って行く。


「行くわよ!」

「行きます!」


ティニーとアリス相手に手合わせをする。

最近では複数人相手の戦闘も増やして来ている。


掛け声と共に二人の姿が掻き消える。

次の瞬間に左右から攻撃が飛んでくる。


「!」


右のアリスを木刀で、左のアリスを左手で受け流す。

そして後ろに向かって蹴りを放つ。


「やるわね!」


うまく当たったようでティニーが後ずさる。

左のアリスも消え、右側の一人だけとなる。


「分身とはやるね。」


話しながら木刀を振るう。

セバスに習ったのだろう、器用なものだ。


アリスが吹っ飛んで行くのを見ながら、後ろからきたティニーの攻撃を捌く。


「後ろばかり狙う癖が治ってないよ。」


ガードを崩し、そのまま掌底を当てて手合わせは終了した。


「それまで!」


終了を宣言したリサがそのままタオルを渡してくれる。

リサは未だに私に剣を当てられないままだが、その実力は突き抜けている。

恐らく今の私と同じ位だろうか。魔法抜きならまだ勝てない気もする。


「やっぱりディノスは強いわね!」


「全然敵いませんでした。」


ティニーとアリスがそれぞれ感想を述べてくる。

体を動かしたお陰で憂鬱な気分が吹き飛んだ。

流石はティニーだ。


「ディノス様、そろそろ宜しいでしょうか…?」


訓練を終えて休んでいると、リサが熱っぽい表情で声をかけて来た。

艶のある表情につい喉が鳴ってしまう。


「あ、ああ。」


別室へ移動すると、リサがメイド服を脱いで行く。

下着姿になるとベットにうつ伏せになり、小さく声をかけて来た。


「優しくお願いします…。」


「じゃあ行くよ。」


リサの背中に液体を垂らし、そのまま文様に沿って指でなぞる。

別に変な事をしてるのでは無く、魔力制御の手助けだ。

魔力の貯蔵方法の一つに魔法陣や文様を使ったものが有り、それをリサに施している。


一定の魔力を貯め込む事が可能で、たまにメンテナンスをしているのだ。

魔力を貯め込み過ぎると刺青のように文様に色がついてしまうので忘れずに行う必要が有る。

魔力を抜けばまた透明の文様に戻るが、私がギョッとするからだ。


「いつ見ても凄いわね…。」


「いつかボクも…。」


見学について来た二人もリサに見入っている。

間違いが起こらないようにと、リサと二人きりになるのはガードされる事が多い。

私としてもこんな状態で色に溺れる訳には行かないので助かっている。


ちなみにゲーム情報で言うとアリスの望みは……。


「終わったよ。今日も問題無しだ。」


文様から抜いた魔力は魔石に移し替える。

魔力貯蔵の有用性に気付いてからは定期的に行っているが、これが結構侮れない。

アリスとティニーにも協力して貰い、余分な魔力は貯蔵しているのだ。


「ありがとうございます。」


後ろから服を着る音がする。

成長したリサは破壊力が強過ぎるので注意が必要だ。


褒美で貰った剣についても解呪が進んでいる。

これは持ち手に反応して変化する魔剣なので、定期的に光魔法を注いでいる。

以前の持ち主の残滓ざんしが強すぎて完全には終わって無いが、近い内に使えるようになるだろう。


私の武器はこれを使って行こうかと思っている。

あれだけの呪いを受け入れていたなら相当の業物のはずだ。

それこそ最終ダンジョンで出てくるクラスだと思う。


3人の武器についてはまだ決まっていない。

正確に言うとティニーは決まっているのだが、リサとアリスは決まって無い。


ティニーは聖国由来のナックルになると思う。

今は持ってないので予想になるが、恐らくは間違い無い。


アリスはゲームで使用していた宝剣は使えない。

そもそも二刀流に変えたから宝剣だとサイズ的に厳しいだろう。

一応いくつか候補は有るから色々と試してみよう。


最後のリサだが、リサは色々な武器を使う。

メイドという職業柄身に帯びる事が出来る小太刀や暗器などを多用しているが、溢れる魔力を使って大剣を使う事も可能だ。

悩んだ末に刀を使って貰おうかと思っている。


それも最終ダンジョンでも通用する、成長する武器だ。

黒い刀身に赤い波紋のついた中二心をそそる一品で、褒美の剣が無かったら私が使おうと思っていたものだ。

きっとリサも気に入るだろう。


将来の事を考えると胸が躍る。

入学してからは忙しくなりそうだ。



それから数日後、ようやく母上が目覚めたようだ。


「マイハ様がお目覚めです。」


リサが伝えに来てくれたので早速向かう。


「ディ!また大きくなったわねー!」


いつものようにハグを受けて挨拶を交わす。

3人も順番に抱きついている。


「ディ、学園までにどこか行ったりはしないの?」


最近母上から似たような質問をされる。


「いや、その予定は無いよ。」


私がいつもの答えを言うと困ったような顔をされる。

きっと私が悩んでる事に気付いているのだろう。


本当は旅に出るべきだと分かっている。

分かってはいるが、今ここを去ると二度と母上と会えなくなるんじゃ無いかと恐怖している。

この暖かな陽だまりを自ら捨てるのかと怒りが湧いてくる。


「そっか…。いつか私が言った言葉、覚えてる?」


「な、何の事?」


母上の表情を見た瞬間に思い出した。

いつかの寝物語だ。

母上が冗談にもならないような事を言ったんだ。


(置いていける訳ありませんよ…。)


いつかの答えを今も言う事が出来ず、自分が今どんな表情をしているのかも分からなかった。

誤字脱字報告ありがとうございます。


面白ければブックマーク、評価お願いします。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ