アリスの悩み 02
ーーーアリス視点ーーー
ついにマイハ様が目覚めたと聞いて、すぐに挨拶に向かう。
「貴方がアリスちゃんね!おいでおいでー!」
初めて会ったマイハ様は話に聞いた通りの方だった!
お日様の匂いがして近くに居るだけで気持ち良い!
撫で撫でグリグリしてくれるのも嬉しい!
「マイハ様!アリスをお願い致します!」
「分かりました。…ディノスも良い子だったでしょう?」
「はい。マイハ様の面影を見つけられました…!」
父上がお話してるけど、ボクに内緒でディノス様を見ているなんて…!
ちょっと拗ねていると、父上がそろそろ帰ると言い出してしまった。
こんなに素敵な場所なのにもう帰ってしまうなんて…。
寂しくて涙が流れそうなのを何とか堪える。
「アリス、無理はするなよ。マイハ様とディノス様、カダン家の方々の言う事をよく聞くんだぞ。」
父上が頭を撫でて来る。
頭が揺れるせいで堪えていた涙が流れてしまう…。
「父上…!、アリスは頑張ります!」
ボクを長い間抱きしめてから父上は離れて行った。
ボクも頑張らないと…!
その後はディノス様のお誕生会が始まり、初めて食べるケーキは夢に出るほど美味しかった!
皆であーんをし合ったのも、恥ずかしかったけど凄い幸せだった!
お風呂も凄い恥ずかしかったけど、広い湯船とマイハ様に体を洗って貰えて最高だった!
でも翌日から、正式に訓練が始まると楽しい事ばかりじゃ無くなってしまった…。
礼儀作法も座学も父上達から教わっていたので何とか付いていけた。
従士としての訓練も楽しいし、魔法も希少な雷属性の使い手と言う事で期待されている!
でも剣術や体術だけが…。
近所の子とのチャンバラごっこでは負けなしだったのに、ディノス様には手も足も出ない。
孤児院の子達にも勝てけど、少しも嬉しくなかった。
皆はディノス様が特別だから仕方無いって言うけど…。
(ボクがディノス様を守らないと…!)
マイハ様がお眠りになる時、ディノス様を任せるとお願いされたのだ!
もっと訓練しないと!
雨の中訓練をしていると、急に視界が綺麗になった。
不思議になって周りを見てみると、ボクの周囲だけ雨が止んでいる。
「アリス、頑張りすぎだよ。」
振り返るとディノス様が困った顔をしていた。
慌てて駆け寄ろうとしたら、急に視界が回って意識が遠くなって行った。
「…起きたかい?」
目の前にディノス様の顔が見える。
ボクを見つめるその姿は天使のように可愛らしい。
「ディノス様…?」
ディノス様の私室に居るらしく、見覚えの有る内装だ。
慌てて起き上がろうとするが、体に力が入らない。
「動こうとしてもダメだよ。無茶した罰としてそこで休んで貰うからね。」
ディノス様が魔法で何かしているのだろうか。
魔法をかけられている事も全然わからないままだ…。
「ですが…、ボクはディノス様を守らないと…!」
情けないと思いながら、感情のまま思いをぶつける。
「守るか…。アリスが来てもう大分助けられているよ?」
ディノス様がよく分からない事を言ってくる。
迷惑をかけてばかりのボクに何を…?
不思議に思っていると次々とボクの良い所を話してくる。
マイハ様と仲良くしている事、元気な事、頑張り屋な事、ディノス様を支えている事。
今まで別邸は静かだったから賑やかになって嬉しいと、褒めてるのかどうか分からない事まで言ってくる。
「な、何を……。」
こんなに熱心にボクの事を話してくれる人に初めて会った気がする。
頭がぼーっとしてくる…。
ボクが足を滑らせて意識を失い大変だったと少し怒られた。
びしょ濡れだったから服を着替えさせるのに苦労したらしい。
(服…?着替え…?)
そこで自分の姿に気付く。
練習着から部屋着へと着替えさせられていたのだ。
つ、つまり、これは……。
「着替えはリサに頼んだけどね?レディだから気をつけるんだよ?」
(まさかまさかまかさ!ディアス様の手でボクの服を!?リサ姉様の言う通り、身も心も求められていらっしゃるのですか!?)
ディアス様が何か話していたようだが、まさかこれから続きをするのだろうか!
余りの緊張に目を瞑ってしまう。
ドキドキしながら続きを待っていると、胸に何かが触れる。
(何て大胆な…!)
心臓が爆発してしまいそうだ!
ジッと待っているが何も起きず、恐る恐る片目を開けて見ると宝石が置かれていた。
「こ、こ、これは?」
(婚約指輪というモノだろうか…この大きさはボクを絶対に手放さないと言う意味…!?)
「アリスのこれからの頑張りに期待して、後は折角出会えたお祝いかな。」
(つ、つまり、そう言う事ですね!?)
ディノス様のお気持ちを考えず、一人で先走っていた自分が恥ずかしく思えてくる。
ボクの身はボク一人のものでは無かったのだ!
「はい!分かりました!ディノス様の思いを考えず、先走っていたなんて恥ずかしいです!」
「そ、そう?分かってくれたなら良いんだ。じゃぁ魔法も解くね?」
(ああ、今なら感じられる。)
確かにボクの中にディアス様の魔力が感じられる。
もう既にディアス様と繋がっていたのだ!
リサ姉様と共に命に代えてもお守りせねば!
ボクの強さなど関係無かったのだ!
翌日リサ姉様に確認した所、「よく気付きました!」と褒められた。
やはりボクは間違っていなかったと確信し、ディノス様に生涯仕える事を心に誓った。
19時、22時頃にも投稿します。
誤字脱字報告ありがとうございます。
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