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ヘッドフォンを外して  作者: an-coromochi
最終章 ヘッドフォンを外して。
57/66

そっちが表って、誰が決めた?

今回は少々短くなっております。


すでに、ここまでで事件の真相にお気づきの方はおられるでしょうか?


上手に伏線を敷けていないので、難しいかもしれませんし、

逆に簡単かもしれませんね。


書いている側には、そのあたりの塩梅がどうなのかは、分からないものです…。


何はともあれ、これからもお楽しみください!

 …自分で考えて、と言われても。


 自室に戻った春泉は、首を傾げながら、不服そうな顔つきで荷物を部屋の隅に置いた。何もない角際だが、ここが鞄の定位置だ。


 考えるべきこと、というより考えられることは全部考えたのではないか?


 ベッドの上に腰掛け、短く息を吐き出す。


 電気も点けていないので、部屋の中は薄暗いままだ。


 カーテンの隙間から漏れ出す、黄色い光だけが異様な輝きを放っている。ただ、それもすぐに見えなくなるだろう。


 夜が来る。


 夕食の支度もしなければならないし、お風呂にだって入らなければならない。


 生きているというだけで、自然とやらなければならない作業が増えるものだ。きっと数年もすれば、化粧だってその一つに入るのだろう。


 どうでもいい思考を頭の中から追い払い、もう一度、冬原が言った言葉の意味を考える。


 彼女は明確に何かを知っている様子だった。いや、もはや犯人に心当たりがあるのだろう。


 ロッカーの鍵を掛けられていた件を考え直せとのことだったが、あのときのことは、もうこの間みんなで話し合ったはずだ。


 何か見落としがあるということなのだろうか…。


 いつ掛けたのか、何故自分を狙ったのか。

 どれも曖昧な解答しか得られず、全ては想像の上での筋道しか立っていない。


 まだ、あの話の中に触れていない部分があるとすれば…。


 ようやく頭が思考モードに入ったタイミングで、炊飯器が陽気なBGMを奏でて、米が炊けたことを告げた。


 実家でも同じようなメロディだったが、もしかすると、日本の炊飯器共通なのかもしれない。


 時計のほうを振り向くが、電気を点けてないので時刻が確認できない。まあ、普段通りの設定なのだから、今は18時30分前後だろう。


 利便性と引き換えに、どこにいても時間に縛られて生きている人間の性に、皮肉な笑みを浮かべた瞬間、ふと、あのときは普段どおりではなかったことを思い出した。


 そういえば、あの日は時計が少し早くなっていたおかげで、自分は助かったんだ。


 あの偶然がなかったら、冬原たちの助けも間に合わなかっただろう。



 ――…偶然?本当に?


 この高校に転校してきてから、あんなこと一度もなかった。


 誰かが予め、時間をずらしていたのだとしたら。


「…まさかな」


 そんなことをしても、何の意味もない。

 それどころか、かえってアレのせいで私は難を逃れたのだから、私に害を成そうとしている人間にとっては、不都合なはずだ。


 …いや、待てよ。それそのものが間違っているとしたら、どうだ?


 思考の転換だ。

 コペルニクス的、とまでは言わないが、自分が今まで手放しで表と信じていたコインの裏表を、疑ってみるんだ。


 百円玉と同じだ。

 数字が入っているほうが表と勘違いしやすいが、その実、桜の咲いているほうが表なように。


 証拠もなく、決めつけている。


 考えを、変えるんだ。


 そう、例えば、そもそも犯人には、私を害する意思はなかったのだとしたら…。



 刹那、雷に撃たれたかのような衝撃が体中を駆け巡った。


 その一瞬の電気信号が、次々と自分の中の小さな疑問を刺激して、数分前とは全く違った全体図を描き出していく。


 バラバラに砕け散っていたジグソーパズルのピースが、本当は違うパズルのピースだったことに気が付いたような、閃き。


 しかし、だとすれば。


 …確かめるべきことがいくつもある。整理すべき問題も。


 春泉は何かに急かされるように、携帯電話に手を伸ばした。


 夕食のことも、お風呂のことも、今の彼女の頭の中からは、綺麗サッパリ消え去っていた。

読みづらかったり、もっとこうしたほうが良い、という意見がありましたら、是非お寄せください!


ご意見・ご感想、ブックマーク、評価が私の力になりますので、


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