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「返してもらおうか」

「殺そうと、していない? さっき、凛は殺されかけたんだぞ?!」

「それは、助けて欲しいんじゃない? 言葉を話すことが出来なくなってしまった()()の足掻き」


 凛は首を抑えながら涙目で見上げ、翔月は驚きで目を開き苦しんでいる妖傀を見た。

 妖傀の瞳から涙が零れ、頭を支え悶え苦しみ続けている。


「君達が時間を稼いでくれたおかげで、僕は余裕を持って戦うことが出来た。そして、風美がどこにいるかも……分かった」


 そう口にすると、弥幸はポケットから釘を三本取り出し始める。


「釘……?」

「この釘は精神力を共有することが出来る。妖傀は負の感情が具現化したもの。精神力は気力。気力は心。なら、妖傀は精神力により本体がオート操作をしていると考えている。なら、精神力を共有出来る釘で、風美の負の感情を取り除くのも可能だと考えたんだ」


 宣言し、弥幸は地面を蹴り妖傀へと向かった。

 頭を抱えながらも目線は弥幸に向け、妖傀は食いしばっていた口を大きく開き、耳が痛くなる悲痛の叫びを喚き散らした。


「忌まわしき想いの結晶よ。我ら赤鬼家の名のもとに、今ここで奪い取る」


 妖傀の声など気にせず、弥幸は正面で移動し右手で握っていた釘を三本を投げた。


「さぁ、風美を返してもらおうか!!」


 妖傀の左胸に刺さった釘を軸に、弥幸と繋がることが出来た。

 光の線が彼の胸元とつながり、左手を右胸に押し当てる。すると、左手が徐々に妖傀の中へと入り込む。

 何かを探しているように、弥幸は眉をひそめて「どこだ」と呟いている。


『ぎゃぁぁぁぁぁああああああああ!!!!!』


 地面を揺らすほどの悲鳴。弥幸はまじかで聞いているため歯をくしばり、汗を流しつつも離れず何かを探り続けた。すると、興奮している妖傀は、右手を振り上げ彼の首に伸ばす。

 凛にしたように首を締めようとした。


『っ!! が、ぎゃっ!!』

「させるかよ!!!」


 妖傀の右腕がいきなり宙へと飛ぶ。

 翔月が鎖鎌を投げ、弥幸の首を掴む前に肩から切り落とした。

 感情に身を任せるように、妖傀は弥幸と繋がっていることなど気にせず翔月へと歩き出そうとした。だが、弥幸がそれを許すはずがない。

 地面をしっかりと踏ん張り、左手が抜けないように右手で自身の左腕を支える。


「どこだ。どこにいる」


 苦しげに顔を歪めながら妖傀の中をまさぐり続けている。翔月も、鎖を巻き付け動きを制限しようと放った。だが、それを左手で勢いよく弾かれてしまう。


 凛がその場に座りながら杖を構えようとするが、近くに弥幸がいるため火の玉を放つことができない。


「どこだ。どこだよ!」


 苛立ち混じりの声を出し、弥幸がもっと奥に左手を入れた瞬間。妖傀が口を開き叫び声を上げ、斬られた右手を再生させた。その瞬間、彼の横腹に鋭く光る爪を食い込ませる。


「グッ!!!」

「赤鬼!!!!」


 翔月が名前を呼びながら走るが、地面で(うごめ)く何かに気づき、反射的に後ろに下がった。すると、弾くように影が現れ弥幸に近づかせないように触手が彼を牽制する。


 目の前の影に驚き、横目で後ろを見る。

 そこには、弥幸の刀だけが地面に刺さっていた。


 また、視線を影へと戻し、両手で握っている鎖を強く握り直す。


「俺に、もっと力があれば……」


 自身の弱さを嘆き、下唇を噛む。


「赤鬼ぃぃぃいいいい!!!!!」


 凛の甲高い叫びが森の中に響き渡る。翔月は目の前に影があるため奥を見通すことが出来ない。


「凛!! 赤鬼に何があった?!」

「あ、赤鬼……」


 顔を青くし、声が震えて話せていない。

 翔月は舌打ちをし、目の前の影に目線を向ける。その表情からは怒りと焦りが滲み出ていた。


「さっさと、そこをどけ!!!」


 右手で円を描くように鎖鎌を回し、勢いをつけ影へと放った。それを、自身に溶け込むように受け止め、影は地面の中へと鎖鎌と共に入ろうとする。そのため、前に重心が傾き。翔月は思わず手を離してしまった。


「しまっ──」


 武器が取られたことにより言葉をこぼすが、それより目の前に広がる光景が目に入り、言葉が止まる。


 翔月が目にした光景は、妖傀の右手が弥幸の腹部を貫通している姿だった。

 口からは血がこぼれ地面へと吐き出し、体は震えている。

 顔を俯かせてしまっているため、銀髪により見えない。


「あ、かぎ……」


 目を開き、その場から動けない。


 弥幸は、俯かせている顔を勢いよく上げ妖傀を真紅の瞳で見上げた。

 射抜くような瞳を向けられ、妖傀は何かを感じとったのか。今度は逃げようと後ろへ下がる。だが、弥幸がそれを許さない。


 右手で妖傀の左腕を強く握り、足を踏み逃がさない。妖傀の右手も腹部から抜けないように締め付けている。


『がっ、がかが、がぁぁぁぁあああああああああああああああああ!!!!!』


 最後の足掻きというように、妖傀は弥幸の肩口に目を向け、口が耳まで避けるほど大きく開き、噛み付こうと動き始めた──……

ここまで読んでいただきありがとうございます

次回も読んでいただけると嬉しいです


出来れば評価などよろしくお願いいたします(*´∇`*)

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