村人
心の巫女は、元々人間じゃったんじゃよ。ただの村娘じゃったんじゃ。
じゃが、人のために動くことが大好きな。健気な少女じゃった。
人をしっかりと見ており、村の人達と沢山話し。楽しく日々を過ごしていた。本当に、心優しく可愛い娘じゃったよ。
じゃが、村が大好きな娘は、忽然と姿を消した。
最後に見たのは笑顔で村の外へと出る姿。いつものように、畑に野菜を取りに行く。そう言い残し、そのまま姿を消したんじゃ。
村の人達は探した。村の中や外。隅々まで。それでも、見つけることが出来んかった。
数ヶ月、探し続けた村人は、諦め始めていたんじゃ。
もう、戻っては来ない。もう、忘れよう。
そう、思っていたんじゃが、村の子供達は大泣き。
色んな人の心に、傷を付けてしまった村娘。
娘が居なくなって二年の月日が経ったある日。なぜか、村人の前に突然姿を現したんじゃ。
服はいなくなってしまった日のまま。髪は少し伸びており、胸あたりだった黒髪が腰までになっておった。
肌には土などがついていたが、怪我などはない。
地面に仰向けで倒れ込み、気を失っていたのを村長が見つけ、無事保護したんじゃ。
娘を見つけてから、更に月日が流れた。ずっと眠り続けている娘を心配し、村人が代わる代わる毎日村長の家へと向かっていたのじゃよ。
そして、娘は目を覚ます。虚ろな瞳を周りへと向け体を起こしたんじゃ。
看病していた村人は、娘が目覚ましたことにより号泣。抱きしめ、存在を何度も確認していた。
目を覚まし、体を動かせるようになった娘は、また笑顔を村の人達に送ることができるようになった。じゃが、村人に送ることができるようになったのは、笑顔だけではなかった。
『祈り』
娘が村人のためにできることが増えたんじゃ。
両手を胸辺りで組み、目を閉じ祈る。これにより、子供の傷は治り枯渇していた水も雨により潤すことが出来た。
天気を操り人の傷や不調も治すことが出来る。
娘は笑顔だけでなく、村人の祈りも届けることが出来た。
しかし、その力の代償はとてつもなく大きい。
使えば使うだけ。祈れば祈るだけ、娘の体は細くなり肌は白くなる。
どんどん食べ物も喉を通らなくなり、目は虚ろになってきた。それでも、祈ることを辞めない娘。
村の人達は心配になり止めたんじゃ。何度も、何度も止めたんじゃ。それでも、辞めなかった。そのせいで、娘はとうとう倒れてしまい寝たきりとなる。
娘は自分の最後を悟ったかのように、付き人に言ったんじゃ。
『私の祈りが届きますように』
その言葉を最後に、笑顔を残し娘は──瞳を閉じた。
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