「同じ場所で」
妖傀の頭が飛ばされ、そのまま重力に従い地面へと落ちる。
そのまま転がり、電柱に当たった。その表情は泣いているように見え、星桜は妖傀に向けて哀れみの目を向ける。
そのままナナシは、手馴れた手つきで空の小瓶を取りだした。
妖傀の体が地面に倒れ込む時、背中から淡い光が現れる。その光は真っ直ぐ彼の元へと向かったため、右手を伸ばし光に手を添える。すると、光は徐々に落ち着いていき、小さな藍色の宝石のような綺麗な石へと変わった。
落とさないように気をつけながら小瓶の中へと入れる。すると、小瓶に貼られていた無地のメモ紙に【弐】という数字が現れた。
それを一部始終見ていた女性は、何が起きたのか分からずこの場にいる四人を忙しなく見回している。
「な、何よ……貴方達……」
「私の名前は、ホシ」
「私は、リン」
「ツキだ」
星桜、凛、翔月は、それぞれ自身の偽名を口にする。そんな中、ナナシがゆっくりと女性へと近づき膝をつく。
「我はナナシ。君、ある人から強い恨みを持たれているらしい」
「なっ、い、いきなり何よ!!! 意味わかんないこと言わないで!!」
「意味が理解できぬか。なら、もっと噛み砕いて説明しよう。君は、ある人物から恨まれている。その恨みの対象を知らなければ今後、また今回のように化け物が襲ってくるぞ」
女性はナナシの言葉に顔を青くし、体を大きく震わせる。それに対し、星桜が女性に気づかれないようにナナシを睨む。だが、そんなのお構い無しに、彼は淡々と言葉を続けた。
「明日。死にたくなければ、今日と同じ時間、同じ場所で──……」
それだけを言い残し、ナナシは姿を消した。
翔月と凛は溜息をつき、その場から去ろうと歩き出す。
星桜は女性を見下ろすが、何も口にはせず歩き出した。
「恨みの対象にされるのは、すごく悲しい……よね」
その言葉は誰にも届かず。闇夜を駆けていた狐と、新しく増えた伴は闇の中へと姿を消した。
※※
「「「ふぁぁぁぁああああ…………」」」
次の日。翔月、凛、星桜、弥幸は普通に学校だったため、今は屋上に集まりお昼ご飯を食べていた。
凛、翔月、星桜は眠たそうに大きな欠伸をこぼし、今にも寝そうになっている。
何度も手に持っているパンやおにぎり。箸などを落としそうになっており、弥幸は飲むヨーグルを片手に三人の光景を眺めていた。
「寝たければ寝ればいいじゃん。なんで我慢するの?」
「赤鬼君みたいに授業中とかに寝る勇気ないよ……。というか、教室とかで寝たくない」
「それ、分かる。なんか、他の人に見られたくないというか……」
「そうだよな」
そんな三人の会話を、弥幸は首を傾げながら聞いている。
飲むヨーグルトを飲み三人を見ていた彼は、いきなり青空を見上げ始めた。
ストローから口を離し、目を細め青空見る。何かを考えているように眉間に皺を寄せていた。
星桜は弥幸の様子に気づき問いかけるが「なんでもない」の一言で終わってしまった。
それ以上問いかけたところで意味が無いとわかっている星桜は、小さく溜息をつきお弁当箱の中に入っていた卵焼きを箸で取り、口の中へと放り込んだ。
「とりあえず、今日も昨日と同じく赤鬼の家に行って待ち合わせ。着替えて昨日の女性の元へ。で、大丈夫?」
「君達がそれで良いんなら」
「それが一番効率良いからな」
凛が問いかけ、弥幸がなんともないように答える。翔月も頷き納得していた。だが、星桜だけは何かを思い出したかのように顔を青くし、空を仰いだ。
「また、あの服を着るのね……」
「あぁ。星桜はあの露出高い服を着ないとダメなんだったね……」
「あれは、もう少し修正とかお願いできないのか……? なぁ、赤鬼」
「僕じゃなくて、逢花に言ってよ。準備したのはあいつなんだし」
「何回も交渉して、ダメだったのしてるじゃない……。赤鬼君のいじわる……」
星桜の服は、逢花が母親と共に特別性の布と糸を使用し作り上げた代物。凛と翔月の服もそうだが、何故か彼女の服だけはものすごく露出度が高く、本人は恥ずかしがっている。
最初のお披露目会の際、星桜は顔を真っ赤にして三人の前に立った時、凛は歓喜の声を上げ、翔月が顔を真っ赤にして背けていた。
そんな中、弥幸が放った一言。
『それ、動けるの? 見えそうなんだけど』
そう口にしたことにより、彼は星桜から初めて平手打ちをくらっていた。
他の二人は『『自業自得』』と呆れ地味に呟いていたのが先週のこと。
凛は、一ヶ月間ずっと精神力のコントールを身につけるため、弥幸の家に通い修行をしていた。
彼女自身も、星桜ほどでは無いが精神力は多い方らしく、弥幸がしっかりとアドバイスをしてあげコントールを身につけることができた。だが、それでもまだ油断すると精神力をコントールすることが出来ず、炎が燃え広がってしまう。その時にはいつも、弥幸が呆れながら釘を打ち精神力を貰っていた。
精神力があればあるほど強い力を使うことが出来るが、オーバーヒートしてしまう場合があるため、彼は凛が暴走する度「殺すつもり?」と、小さな圧をかけていた。
それが毎度のことなため、凛は最近だと油断せず暴走する確率が低くなってきた。
「ひとまず、今日もおじゃまするよ。よろしくね、赤鬼君!」
凛がわざとらしくニヤついた顔を弥幸に向け口にする。それを見た彼は、表情一つ変えずに一言。
「きもっ」
「黙れ」
凛のゲンコツが弥幸の頭に落ち、他の二人は「「懲りないな……」」と呟いて残りのお昼ご飯を食べ続けた。
ここまで読んでいただきありがとうございます
次回も読んでいただけると嬉しいです
出来れば評価などよろしくお願いいたします(*´∇`*)