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赤鬼弥幸の妖傀奇譚-ヨウカイキタン-  作者: 桜桃
横と縦の繋がり
65/108

「なりたいですか?」

 魅涼の質問に、星桜は少し考える素振りを見せる。だが、すぐに答えが見つからなかったらしく首を横に振ってしまった。


「わからないです。(とも)になった訳では無いですし、かと言って友人などの関係も違うかなと」

「でしたら、恋人ですか?」

「断じて違います」

「おやおや。そこは全否定ですか」


 星桜の反応を楽しげに見ながら、魅涼は口元に手を当てくすくすと笑う。その様子を見て、彼女はゲンナリしたような表情を浮かべため息をつく。


「なぜそう勘違いしたのですか」

「いえ。貴方達の関係に名前を付けるのなら。そう、思いましてね。違うのは酷く残念です」

「残念そうに見えませんけど……」

「そんなことありませんよ」


 そんな会話している横で、弥幸は寝息を立て深い眠りに入っている。相当疲れていたらしく、当分目を覚まさない様子だ。


「では、質問を変えましょうか」

「な、なんですか」

「そんなに身構えないでください。面接とかでは無いのですから」


 魅涼が口にするが、星桜は警戒をとかず怪しむような瞳を向けている。それに肩を落とし、眉を下げ彼は弥幸を見下ろしながら口を開く。


「貴方は、彼の何に、なりたいですか?」


 横目で彼が星桜に視線を送る。その瞳に彼女の驚いた表情が映る。


「答えられないのですか?」

「………赤鬼君の、私は……」


 その後の言葉が続かず、星桜は自身の正座している膝に目を落とす。


「…………すいません。意地悪をしすぎましたね」

「……いえ」

「今は特に考えなくてもいいと思いますよ。ですが、今後必ず考えることになると思います。貴方達について」

「なんでですか」

「私達が扱っているのは神力、精神力。これはつまり、人の想いに触れているということ。これは私個人としての考えなのですが──……」


 魅涼の言葉に、星桜は顔を上げ弥幸を見つめる。その目は、不安と心配。そのような感情が込められており、彼の左手を優しくにぎった。


 ☆


 弥幸はまる二日間眠り続けている。それにより、星桜は学校に電話をし休む羽目となった。

 理由を頑張って絞り出していたが、何も思いつかず魅涼へ相談。


「熱で休みにすれば良いのでは?」


 変に難しく考えていた星桜は、彼の提案をすぐに飲み学校へと連絡。休むことが出来た。


「あ、美咲(みさき)さん。こんにちは」

「星桜ちゃん。こんにちは」


 星桜は手に桶を持って廊下を歩いていた。すると、前方から一人の女性が姿を現す。

 空のように透き通っている青色の着物に、黄色の帯。今はたすきをしているため、家事の途中と分かる。


「美咲さん。あれから左胸の傷はどうですか?」

「心配してくれてありがとう。今はだいぶ良くなって、家事とかも手伝えるようになったのよ」


 ふふっと笑いながら、美咲は手に持っていた雑巾を握る。それを見て、星桜は安心したように笑みを浮かべ横を通り抜ける。


 美咲は、魅涼達によって酷い目にあっていた。

 地下の牢屋に入れられ、無理やり精神力を奪われていた。だが、今では自由に歩き回ることができ、顔色も良く、沢山笑うようになっており一安心。


 星桜はそのまま手に桶を持ちながら一つの部屋を目指す。中に水が入っているため、零さないように歩いていた。そして、目的の部屋に辿り着き襖を開ける。中には、まだ布団の上で横になり目を閉じている弥幸の姿があった。


「まるまる二日、眠り続けてる。大丈夫……なんだよね……。生きているんだよね……」


 不安げに声を振るえさせ、布団の横に正座しタオルを絞る。そして、弥幸の額に乗せた。

 顔色はだいぶ良くなったが、目を覚まさなければ安心できない。


 魅涼は「眠り続けているということは、それだけ精神力を回復しているということ。目を覚ますまで待ちましょう」と言っていた。その言葉を耳にしても尚、星桜は不安だった。


 何度も何度も魅涼に、弥幸が大丈夫か聞いている。その度、彼も安心させるように「大丈夫」と言い続けた。


 それから更に二日後。

 星桜はまた学校に連絡を入れ休む。だか、先生が少し疑うような声色をしていることに彼女は気づき、早く要件を口にし電話をきる。

 大きなため息をこぼし、携帯をポケットに入れた。


 電話はいつも廊下でしており、彼女は襖を開け中へと入る。


「赤鬼君。もうそろそろ本当に起きっ──」


 星桜が中で眠っていた弥幸に声をかけたが、途中で言葉を止め部屋の奥を凝視する。

 そこには、弥幸が上半身を起こし天井を見上げている姿があった。


 彼は星桜に気づき、ゆっくりと首を回す。

 無表情で、何を考えているのかわからない。体が痛いのか、だるいのか。なにか不調があるかないかすら分からず、ただただ星桜を見続けている。

 その視線に耐えきれなくなったのか。星桜は、目線を逸らしながら歩き弥幸へと近づいていく。


「赤鬼君。お、起きたんだね。もう、心配したんだよ!!」

「精神力を0に近いところまで使ったからね。倒れるのは仕方がないじゃん」

「私や碧輝さんの精神力を使っていたじゃない」

「疲労も溜まっていたしね。体が休めと訴えてきたんだから仕方がないよ」

「際ですか……」


 今まで通り嫌味のある言葉をかけられ、星桜は顔を引き攣らせ肩を落とす。そして、右手を伸ばし、弥幸の額に手を添えた。


「っ。ちょっと、なんの真似」

「熱がないか確認!! 動かないで!!」


 弥幸は星桜の手を退けようとするが、彼女の圧に一瞬狼狽え、複雑そうに眉を顰める大人しくなった。

ここまで読んでいただきありがとうございます

次回も読んでいただけると嬉しいです


出来れば評価などよろしくお願いいたします(*´∇`*)

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