「助けてくれる」
魅涼と碧輝が姿を消し、残された二人はお互い顔を見合せた。
「えっと。確か水泉家って、前に弥幸と星桜が……」
「そのはずだよな。なんか、聞いたことあると思ったが。確か手紙にそんな名前が書いてあったはず」
翔月と凛が蝋燭の修行をしていた時、美彌子が手紙を片手に部屋へと入ってきた時があった。その手紙の内容は、水泉家からのもの。
弥幸と星桜は約一週間くらいそちらに居て、予定より大幅に遅れて戻ってきたのだ。
「信じて、良かったんだよね……?」
「あ、あぁ……」
二人は少し顔を俯かせ、心配そうに声を震わせる。
逢花はやっと零れていた涙を拭き、後ろにいる二人に振り向いた。
「大丈夫だよ。だって、あの人達は嘘を言っていない。絶対に、助けてくれる」
逢花の言葉には不安を感じない。それに対し凛と翔月は考えるように顔を合わせたあと、頷き合い口元に笑みを浮かべた。
「そうだな」
「うん。今は、信じるしかないね」
「えぇ」
そんな会話を交わし、三人は夜空を見上げた。
月が三人を照らし、煌々と輝いている。雲が一つもないため、辺りはすごく明るい。
「…………お願いします」
その言葉を零し、三人はそのまま歩き出した。
☆
次の日の朝。
翔月と凛は逢花に会うため、神社に居た。
逢花はラフな格好を身にまとい、鳥居近くに立っている。
青空が広がり、涼しい風が吹き周りに立ち並ぶ木々達を揺らしていた。
「あ、おはよう逢花ちゃん」
「うん。おはよう、凛さん、翔月さん」
「あぁ」
三人は合流し、挨拶を交わす。すると、逢花の後ろにも人影が見え凛は覗き込んだ。そこには、昨日助けてくれた魅涼と碧輝が立っていた。
傷一つなく、手当した痕跡も無い。無傷で昨日の妖傀を倒したと簡単にわかる。
「あの、昨日はありがとうございました」
「いえ。これが我々の仕事ですから」
凛が二人の前に立ち、お辞儀をしながら礼をする。翔月も遅れて会釈をし、礼を表す。
「それにしても、大変だったようですね。お疲れ様です」
「あ、もしかして逢花ちゃんから話聞いてますか?」
「えぇ。不思議に思って、つい聞いてしまいました」
「そうだったんですか……」
「はい」
そこで会話が途切れる。
凛はチラッと後ろを見て、翔月と逢花へ目を向ける。
その視線に気づき、逢花が四人をひとまず中へと案内した。
☆
神社の中へと入り、廊下を突き当たりまで行くと大広場に繋がる。逢花が襖を開き中へと誘導し、座布団を用意し円を描くように座った。
「改めまして。私は赤鬼家長女、赤鬼逢花です」
「丁寧にありがとうございます」
逢花が自己紹介した後、凛と翔月に魅涼は目を向ける。
「あ、えっと。私は武永凛と言います」
「俺は月宮翔月です」
改めて二人は名前を伝え、頭を下げる。
魅涼は常時微笑みを絶やさず三人を見ているため、ある意味圧がすごい。
気まずそうに二人は顔を逸らしてしまう。
「そこまで固くならないで。私は援護に来ただけですよ」
「…………何があった」
魅涼が安心させるように言葉を伝え、碧輝が低い声で本題に入ろうと口を開く。
「そうですね……。なぜ昨日、貴方達が戦闘に出向いていたのかは聞きましたが、なぜ赤鬼──ふむ。弥幸さんがあの状態なのでしょうか?」
名前を言い直し、魅涼は真面目な顔で顎に手を当て問いかける。
その問いに対し、逢花はその場にいなかったため教えることが出来ない。そのため、翔月がわかる限りで伝えた。
☆
「なるほど。それは大変でしたね」
「いえ。一番大変だったのは弥幸と星桜なので……」
「それにしても、心の巫女だったとは……。碧輝、気づきましたか?」
翔月から話を聞き、魅涼は考え込みながら隣に座っている碧輝に聞く。だが、彼は首を横に振り否定。「そうですよね」と会話が終わってしまう。
その後は沈黙が続き、誰も口を開かない。その時、魅涼がなにか閃いたように口を開いた。
「今も尚、眠り続けているのですよね。弥幸さんは」
「はい」
「そうですか。会わせていただくことは可能ですか?」
「え、なんでですか?」
「少し、話の中で気になることがありまして」
「お願いできますか?」と、魅涼が逢花に問いかける。
少し考えたあと、頷き立ち上がった。
「ご案内します」
「ありがとうございます。碧輝はここで待っていてください」
「え、なんで……」
「私からのお願いです」
「…………分かった」
まだ渋っているような感じだが、頷き碧輝は少しだけ浮かした腰を下ろし唇を尖らせる。
不貞腐れているような雰囲気に、凛と翔月は苦笑いを浮かべるだけだった。
「では、お願いします」
「はい」
逢花が先導し、魅涼と共に部屋を後にする。残された凛と翔月は、不貞腐れている碧輝を見る。その視線がうるさかったのか「なんだ」と低い声で一睨み。
圧がすごく、二人は咄嗟に顔を背け「なんでもありません!」と同時に口にした。
「…………早く」
「帰ってきてくれ……」
そんな言葉をこぼし、あとは誰も話さず重苦しい空気が大部屋を包み込んだ。
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