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「恩を返せる時」

 振り上げられた両手から逃げるように、翔月が男性を抱え後ろへと跳んだ。それにより、妖傀の手は地面を殴る。

 コンクリートの地面のはずだが、一発で砕け土埃がまう。


「……強いわね……」

「そうみたいだな」

「どうするの?」


 逢花はその様子を見て呟き、翔月も頷く。

 凛が二人に問いかけるのと同時に、妖傀が地面をえぐった手を上げ顔を向けた。


「恨みが強い。男性型ということは、取り柄はパワーだけ。近づかなければ、おそらくは問題ないと思うわ」

「なら、俺達でまず飛び道具を使い動きを制限。斬れそうな時に斬ってくれ」

「わかったわ」


 短い言葉を交わし、三人は頷き合う。そして、翔月と凛は一歩前に出て妖傀へと目線を向ける。


 妖傀は、構えている二人に無いはずの目を向けゆっくりと歩き出した。

 距離を詰められないように翔月と凛は後ろへと下がりながら自身の武器を構え始める。


 凛は杖を右手に持ち、妖傀に向け火の玉を生成。


「行け!!!」


 そのまま勢いよく前方に放つ。すると、妖傀は両手を顔あたりでクロスして防ぐ。

 腕には傷一つついておらず、彼女は舌打ちをする。

 その後すぐ、翔月が前方に鎖鎌を投げ妖傀を巻取ろうとした。


 だが──……


「っおい! 放せよ!!!!」


 彼が放った鎖鎌は三日月を描くように妖傀へと向かっていった。だが、体を少しだけ横へずらし、鎌の部分を回避。鎖の部分を捕まれ綱引き状態へとなってしまう。

 力では確実に翔月が負けてしまうため、離させようと凛が火の玉を放つ。


 妖傀に向かっていく火の玉は、空中で分裂し四方から向かっていった。

 それに目を向け、二本の手で鎖を掴み、残っているもう二本で火の玉をたたき落とし消す。

 その間に力が緩み、翔月が鎖鎌を引っ張った。


 力が緩んでいたため、妖傀の手から取り返すことができ彼は安堵の息を吐く。

 手元に戻ってきた鎖鎌を手に持ち、再度右手で遠心力をつけるため回し始める。


「腕が四本で、力が桁違い。たしか、体も固いんじゃなかったか?」

「確かに。弥幸だからこそ斬れていた説あるよね」


 弥幸は戦闘にも慣れており、神力の使用も自由自在。簡単に斬れているように見えていた。だが、実際妖傀の皮膚は固く、簡単に斬ることなどできやしない。

 それも、戦闘に慣れていない三人ならなおのこと。


 三人は眉間に皺を寄せ、妖傀を見た。

 無鉄砲につっこめば倍にして返される。悪ければ先程のように、自身の武器が取られてしまう。だからといって、それを恐れて凛の炎に頼るにしても削ることが出来ない。


「私が直接行くわ」

「いや、確実に無理だろ! 怪我じゃすまないかもしれないんだぞ?!」

「そうよ! ここは私達に任せて!」


 逢花が刀を抜き、前に歩きながらそう呟いた。だが、それを翔月が腕を掴み止め凛も声をかける。


「でも、無理でしょ?」

「っ……それは……」

「私はお兄ちゃんとは違うの。周りを見ながらなんて戦えない。自分のことで精一杯。だから、無理しなくていいよ。大丈夫だから」


 口調がいつもの逢花に戻っている。見えている口元には、微かな笑みが浮かべられていた。

 だが、翔月が掴んでいる腕は微かに震えている。


「お前、やっぱりこわっ──」


 翔月が問いかけようとした時、月の光を遮る影がさした。逢花と翔月、凛は震えながら影の方へと目を向ける。そこには、四本の腕を大きく広げ、振り上げている妖傀の姿があった。


 顔を真っ青にし、ただ見ていることしか出来ない三人。


『おれはぁぁぁぁぁぁああああ!!!!』


 三人に向けて大きく、鋭く尖っている爪を仕掛けた。


 翔月が咄嗟に前に出て守ろうとした──その時。


『ぎ、ぎゃぁぁぁぁぁぁああああああ!!!』



「…………え」


 いきなり妖傀が横へと体を倒した。顔の側面には、()()()()が刺さっている。

 月光に照らされ、キラキラと光っていた。


「何が起きたの……?」


 翔月が両手を広げ、二人を後ろへやりながら妖傀を見る。

 すると、水の弓矢は溶けるように地面へと落ち濡らす。


 妖傀は動かなくなった。だが、姿は保っているため気を失っているだけに見える。

 襲われていた男性は何が起きたのかわからず、混乱気味に叫び声を上げながらここから走り去った。だが、そのようなことなど気にする様子がない三人は、いきなりの事態を整理するため周りを見回した。


「やれやれ。お便りが届きましたので、急いできてみたら……。なんですかこの状況」

「兄貴。とりあえず、この妖傀を」

「そうですねぇ。浄化する人がいないようですし、やりましょうか」


 優しげな声と、少し低い不機嫌な声。そんな声が住宅街の屋根から聞こえた。

 声がする方向に三人が目を向けると、そこにはいるはずのない人物が笑みを浮かべながら立っていた。


「さて、ここは水泉家の担当ではありませんが、恩を返せる時──ですね。やりますよ、碧輝(たまき)

「わかったよ、魅涼(みすず)兄貴」

ここまで読んでいただきありがとうございます

次回も読んでいただけると嬉しいです


出来れば評価などよろしくお願いいたします(*´∇`*)

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