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「最高の伴」

 翔月の言葉に、逢花は目を開き驚きの声をあげた。そして、困惑が入り交じる声で彼へと問いかける。


「え。でも、私はお兄ちゃんみたいに戦えないから、守りながらとか無理だよ?」

「それは問題ない。自分の身くらい自分で守れねぇと、弥幸をサポートとか無理だからな」

「でも、危ないし。お兄ちゃんが起きてからの方が安全じゃん?」

「安心や安全を優先していたら、俺達は強くなれない。今回みたいなことを繰り返したくないんだ。弥幸の(とも)失格なんだよ。今の俺……」


 逢花を掴んでいた手から力が抜け、横へとたらす。顔を俯かせ、声がどんどん小さくなってしまった。そんな彼を、逢花は見上げ何も言わない。


 すると、凛が逢花に口を開いた。


「私も翔月と同じ。何も出来なくて、今回は弥幸と星桜に迷惑かけて、今あの状態。何も出来なかった。ただ、見ているだけで、地面に座っているだけで……。本当に、伴失格だよ……」


 自身の裾を強く掴み、震える声で凛は口にした。

 そんな二人の態度に、逢花は天井を仰ぎ大きく息を吐く。


「……まったく。まぁ、お兄ちゃんが選んだ人達だもんね。このくらいは言ってくるかぁ」

「いや、選んだというか……。私達が無理やりお願いしたというか……」

「違うよ。お兄ちゃんが選んだんだよ。だって、そうじゃなかったら伴になんてしないもん」


 逢花の緊張気味だった声がいつもの優しげで軽い口調へとなり、控えめに微笑みながら翔月へと近づいた。


「お兄ちゃんはあんなだから、全然感情読めないし、何を考えているのかも分からない。でも、嫌なことは必ず否定するし、やらないよ。二人を否定しなかったのは、期待しているからだと思うの。だから、失格なんて言わないで。二人は、お兄ちゃんが認めた、最高の伴なんだから!!」


 さっきまでとは打って変わって、明るい声が玄関に響く。そんな声に、凛と翔月は驚きで目を開き彼女を見た。


「そんな二人に手伝ってもらえるなんて。私は、本当に恵まれている。そう、思うよ」


「それじゃ、行こうか」と、逢花は二人に背中を向け外へと向かった。

 扉を開き、そのまま夕暮れが降り注ぐ外へと出て扉は閉まる。

 残された凛と翔月は、唖然とした表情を浮かべ顔を見合せた。


「……最近の中学生って、凄いね」

「…………うん」


 そんな会話をして、苦笑を浮かべながら逢花を追いかけるように扉を開き、外へと向かった。


 ☆


 夜になり、逢花を先頭に凛と翔月は戦闘服に着替え住宅地を走っていた。

 弥幸は屋根の上を走りショートカットを活用していたが、逢花は地面を走り道に反って走っている。その事に、凛と翔月は安心していた。


「逢花ちゃんはしっかりと道を正しく使っているね」

「日本語おかしいけど、言いたいことはわかるよ。お兄ちゃん、一番手っ取り早い方法をとるから移動も大変でしょ」

「うん、大変」

「まぁ、効率はいいからね。私の身体能力じゃ無理」


 逢花がそう言い切るが、二人は彼女の後ろを走りながら苦笑いを浮かべている。何かいいだけに、凛が口をゆっくりと開いた。


「崖を飛び降りれる人が何を言っているんだろう」

「何か言った?」

「な、何も言ってないよ」


 逢花は凛の言葉が聞こえなかったらしく、横目で後ろを見るが、凛がすぐに首を横に振り、すぐさま誤魔化した。その事に首を傾げるが、逢花は「そっか」と、再度前を見て走り続ける。


 今日は雲がなく、月が輝き逢花達が走っている東雲町を照らす。

 街灯が点滅し、様々な虫が集まっていた。


「──居た」


 逢花が呟いた。その先には、妖傀が一人の男性を襲おうと両手を広げている姿があった。

 逢花はそれを見て、右足を深く折り一歩を大きくし加速。

 刀を右手で抜き取り、両手で握り上へと振り上げた。そして、男性の背中まで辿り着き上へと跳ぶ。


「はぁぁぁぁあああ!!!!」


 頭の上まで振り上げた刀を思いっきり下ろした。だが、妖傀がただで斬られてくれるはずもなく、四本の腕をクロスし防がれる。


 ガキン!!!


「っ!! かった!!」


 弥幸みたいに空中で体を支えることが出来ず、そのまま地面へと落ちる。

 両足で着地をし、男性の前に立つ。両手で刀を握り直し、妖傀を見上げた。


「き、君は?」


 男性が地面に尻をつけながら震える声で問いかける。だが、逢花はそれに答えない。その代わりに、凛が男性に近づき両肩を後ろから掴んだ。


「安心していいわよ。ここからは、私達に任せて」


 凛が口にするのと同時に、翔月か逢花の隣になった。

 手には、新しい鎖鎌が握られており月光を反射している。


「できる限りサポートはする。よろしく頼むぞ、アイ」

「えぇ。こちらこそよ。ツキ」


 二人は前を向きながら言葉を交わし、それぞれの武器を握る。そんな二人に、妖傀が地響きがなるほどの声を上げ四本の両手を振り上げた。

ここまで読んでいただきありがとうございます

次回も読んでいただけると嬉しいです


出来れば評価などよろしくお願いいたします(*´∇`*)

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