「切っても切れない間柄」
「炎を消せ!!!」
「っ!」
華恵の言葉に、凛は咄嗟に反応し自身に当たる前に炎を消した。
「華恵!」
「はい! 風美様!」
凛に声をかけたあとすぐ、風美が華恵を呼び右手を前へと出した。
それを確認すると、彼は鎖鎌を手にし右手で回し始める。
走りながら遊美と距離をとりつつ、目線はクグリへ注がれていた。
鎖鎌を活かせる距離まで離れ、華恵は風美と目線を合わせ頷き合う。
両足を広げ、狙いを遊美へと移し遠心力をつけた鎖鎌を流れるように前へと放った。
遊美はそれに気づき、舌打ちをしながら手を離しその場から離れた。
弥幸は手が離れたことにより地面へと倒れ込み、首を抑え咳き込みながらも呼吸を取り入れている。
星桜はその光景を見てホッとするも、すぐに気を引き締め遊美とクグリを見た。
遊美は面白くなさそうに唇をとがらせ、クグリはだるそうに目線を彼へと注ぐ。
「…………今回はここまでにしようかぁ。この人数だと、殺す事は出来ても捉えることは出来ない」
「えぇ? あともう少しでヤれそうなのに……」
「我慢だよ。また、チャンスを作ればいい」
不貞腐れながらも、クグリの言葉に遊美は頷き隣へと移動した。
「弥幸。もっとだ。もっと、神力を高め、赤鬼家の名を広めるんだ」
喉を抑え、咳き込みながらもクグリの言葉に耳を傾け見上げる。
「次会う時を楽しみにしているよぉ。逢花と美彌子にも、よろしく伝えてねぇ~」
クグリがそう言うと、足元から影が弾けるように現れ二人をつつみこもうとした。
「ま、待て!! お前らは一体何もんなんだよ!!!」
「そうだねぇ。これだけは言おうか。私達は、切っても切れない間柄……ということをねぇ」
その言葉を最後に、二人は姿を消した。
風が吹き、その場に残っている人達の肌を優しく撫でる。
そんな中、弥幸は困惑の表情を浮かべ固まってしまった。
「なにが、起きたんだ……?」
翔月が呟くと、地面に倒れる音が聞こえた。
そちらに目を向けると、星桜が顔を青くし地面へとうつ伏せに倒れている。
「星桜!!」
凛が叫ぶのと同時に、またしても同じ音が響きそちらに目を向ける。すると、弥幸がうつ伏せに倒れていた。
華恵が慌てて近づき、脈を確認する。
正常に機能しているらしく、安堵の息を吐く。翔月も同じく星桜へと近づき、脈の確認。こちらも問題は無いらしく、息を吐いた。
重苦しい空気の中、誰もすぐに動くことが出来ない。
月が残された者達を見届け、雲により闇へと染まってしまった──……
☆
星桜が攫われ、救出してから数週間。
星桜は疲労と神力の使いすぎでずっと眠っていた。
弥幸も同じく、彼女が傷を治したがそれでも体へと負荷が大きかったらしく、ずっと眠り続けていた。
凛は一応病院で怪我したところを診てもらったが、星桜が完全に治したらしく問題は無い。翔月と一緒に切り傷の手当をしてもらい今回の事件は終わった。
今は、学校の帰りで翔月と凛は手土産をもって弥幸の家がある神社へと歩いている。
「…………まだ、目を覚まさないね」
「そうだな……」
ビニール袋のカサカサという音を鳴らしながら、静かに会話を交わす。その声には覇気がなくどこか上の空。
凛は青空を見上げ、太陽に目がやられないように右手で覆っている。
翔月は前だけを見て、ぼぉっと歩いていた。
「一体、なんだったんだろうな」
「わかんない。でも、多分これからは今までみたいにはいかない」
「そうだな。今までは弥幸に頼りっきりだったわけだし。そうだったからこそ、あいつへ負担をかけてしまっていた」
「うん。手助けするどころか、逆に邪魔してる」
「もっと、強くなりたい。ならなければ、ならない」
「うん。私も、そう思うよ」
そんな会話をしながら、二人は神社に着いた。
星桜は美彌子から両親に話をつけ、弥幸の家で眠っている。
今回は、ただの病気や怪我では無いため、何が起きてもすぐに対応出来るようにと、美彌子が星桜を預かった。
「早く、目を覚ましてよ」
「そうだな……」
そう呟きながら、鳥居を潜り神社へと近づいていく。
庭には、美彌子がホウキを片手に掃除している姿がある。その姿を確認し、二人は挨拶をした。
「あら。今日も来てくれたのね。今は逢花が二人を見ているわ。どうぞ中に」
「ありがとうございます」
二人は美彌子に礼をして神社の中へと入る。
もう何度も来ているため迷うことなく、一つの部屋に辿り着いた。
襖を開き、中へとはいる。そこには、二つの布団の隣に座っている逢花が目に入った。
「あ、いらっしゃい」
目元には隈ができており、無理に笑って挨拶をしている逢花を目に、凛は顔を俯かせ、翔月も無理やり笑いながら「こんにちは」と挨拶をした。
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