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第九十六話 砂糖が高いのがネックだからな。そこでだ、ちょっと変わった飴でも食べないか?

連続投稿中。

楽しんでいただければ幸いです。



 毎回恒例、なぜか俺の家が食事会の会場になる現象~。今回は別にスティーブン達に晩飯でも食っていかないかとは聞いてないぞ。リリアーナは何度もスティーブンと帰ろうとしたけど、スティーブンの方は帰る気はゼロだったようだ。


 今回はスティーブンとリリアーナが昼からうちにいたから、リリアーナが料理を手伝うといってきたけど丁重にお断りした。


 というか、作らなきゃいけない物は夕食の前におやつがあるしな。飯を食いたいって言うんだったら、少しくらい例の計画を進めさせてもらってもいいだろう。


「すいません、おやつ……まで。というかこんな時間に甘い物を食べる習慣なんてありませんよ?」


「三時に甘い食べ物をとる時間ってのはいいな。今度からうちの商会でも始めるか?」


「全商会員に毎日三時に甘い物を振舞ったら、給料の額が半分以下になりそうですが……」


「砂糖が高いのがネックだからな。そこでだ、ちょっと変わった飴でも食べないか?」


「飴か……。いまさらという気はするのじゃが」


 そりゃ、ヴィルナはいろんなものを食べてるし、スティーブン達も俺が売った飴を食べてるしな。


 だけど、食べた時の衝撃っていうのは今までで一番だと思うぞ。特にスティーブン達はな。


「おやつは飴だけじゃないし、飴はとりあえず食べて欲しいからかな? 多分驚くと思うぞ」


「ほう、そこまで言うとはな……。見た目はべっこう飴と同じか? 中にフルーツも無いみたいだが、特に珍しくもない飴だな。少し甘さが弱い位か?」


「シンプルな飴ですね……。少し甘さが控えめというか」


「砂糖の塊にしてはあまり甘くない気がするのじゃが……」


 まあそうだろうな、それ。


「その飴、砂糖でできてないっていったら驚くか?」


 お、スティーブンが珍しく目を見開いて驚いてる。リリアーナも目の前にある飴を二度見してるぜ。


「……飴の原料は砂糖だろ? これは砂糖以外で作られてるのか?」


「確かに少し甘さは控えめでしたが、砂糖で作られた飴とそこまで遜色はありませんでしたが。その話本当なのですか?」


「本当さ。甘い物は砂糖、それが常識だ。手軽に収穫できる甘みの強い果物があればそれを煮詰めて砂糖代わりにもできるけど、その果物もこの辺りは高いからな。で、この辺りに割とある物で砂糖の代わりになるモノ。それはこれだ……」


 小さな穀物の粒をスティーブン達の目の前に出した。この辺りでも栽培されてるらしいし、何度も見た事はあるだろう。


「ライスか? 何度も食ってるがこれは飴の材料にならないだろ?」


「実はそうでもない。これにある方法を使えば米飴というさっきの飴が出来上がるんだ。多少甘さは控えめだったけど、十分に使えるレベルだろ?」


「十分といいますか、もし仮にライスがあれほど甘みのある物に化けるという事ですと……」


 砂糖市場にも割と影響が出るだろうな。まあ、この米飴も万能じゃないけど。


「砂糖の価値が多少下がると思うが、そこまで影響はないだろう。そもそもこれは砂糖に比べて甘さが弱い。砂糖を食べ慣れた人が求める甘さには届かないし、その砂糖に近い甘さを得ようとすると、かなりの量の米飴が必要になるんだ」


「砂糖代わりにはなるが、菓子なんかには使いにくいって訳か」


「少なくとも、お菓子の材料とかに使うのは無理だろうな。甘さ控えめってのは、この辺りだと流行らないだろ?」


「流行りませんね。砂糖も富の象徴ですので、それを惜しむのは貴族の方は喜びませんし」


 そうだろうな。今日これを出したのは領民を困らせてもプライドを優先させる貴族の習性あっての事だしな。


「この米飴を、庶民……、貴族以外が使う砂糖の代用品として売り出せないかと思ったんだ。二級品とか三級品みたいな感じで扱えば価格を抑えられるだろうし、貴族は今まで通りに砂糖を使うだろ?」


「その売り方だったら、貴族は今まで通りに砂糖を使うだろうな。むしろ、庶民は代用品だが儂ら貴族は本物をって事で、悦に浸る可能性まである」


「だろ? それにこの米飴は砂糖程には万能って訳じゃない。砂糖と同じ甘さにしようとしたら高カロリーになるし、使用量も相当なものになる。だから料理の甘味付けとか、こうして飴にする以外にはあまり役に立たないだろう」


「それでも、この飴を食べられるという事でしたら喜ばれるでしょう。我々には物足りませんが、甘い物を食べ慣れていない人たちには十分な甘さです」


 そこなんだよな。


 舌は慣れるけど、それはそれまでの経験の蓄積で成り立つ。俺が最初に売ったべっこう飴だって、普通の人に売ってたら相当甘みが強かったはずだ。


 グレートアーク商会と繋がってそこそこ舌が肥えてるパルミラや商人ギルドでもそこそこの地位にいたミケルだからこそ、あの飴が貴族に売れると判断できたんだろうからな。


「そこでこれだ。同じ形のマドレーヌだけど、こっちは米飴、そしてもう一方が砂糖で作ってある」


「確かに米飴の方は甘みが弱いな。単体で食うにはいいかもしれないがちょっとパンチが弱い」


「どちらかといえばこの米飴の方は紛い物に近い仕上がりですね。砂糖ひとつでかなり違いが出るのですね」


「同じだけの甘さになるように米飴を入れると食感がかなり変わるしな。この位の甘さだったら、庶民向けにできそうだろ?」


「これでも砂糖に慣れてなけりゃ十分すぎる位甘いからな。果物の方が甘いがあっちも高価だしよ」


 森桃とかホント高いんだよな。


 来年スイカとかメロンでも植えてみるか?


【プラントで栽培中です】


 ……イチゴとかブルーベリーもいいな。


【プラントで栽培中です。柑橘類や南国系の珍しい果物なども栽培中です】


 ……同じ様な果物でも異世界産で持ち出しとかの法律の無い世界から買い取ったんだろうな。


【法的に何一つ問題はありません。プラント産ですのでいつでも販売可能です】


 今度在庫は調べるからな。どうせ今調べたら超高速スクロールだろうし。


【……………………………………………………】


 だから後だっつってんだろ!! 今の高速スクロールは何一つ確認できなかったよ!!


「その果物の方もそのうちいろいろ紹介するよ。さて、今日本命のおやつはこれだ!!」


 濃厚なカスタードプリンに描かれる生クリームとマロンクリームのストライプ。完熟した白桃のスライスと半分に切ったイチゴをふんだんに盛り付け、プリンの上にも一つ丸ごとイチゴが乗っている。


 夏だったらソフトクリームとアイスクリームなんかをトッピングした所だけど、今日は控えめにこの位にしておいた。


「これはプリンなのか? 本体のプリンがほとんど見えないのじゃが」


「プリン・ア・ラ・モードだな。カスタードプリンを二種類のクリームと桃やイチゴでデコレーションしてる」


「凄いですね……。どこの晩餐会にいってもこのレベルのデザートは出てきませんよ?」


「この桃も森桃どころのレベルじゃねえぞ。そのうちとか言いながらいきなり出してきやがるとはな」


「ああ、その桃はヴィルナには以前渡したし、よく食べてるからな……。そのうち紹介するのは、めちゃめちゃ甘い果物とか色々だぞ」


 ものすごく甘くておいしい上に皮ごと食えるブドウとか、少し南国系の果物とか食べさせたら驚くだろうな。


「ほらな。無理言ってもここで晩飯食わせて貰う方がいいだろ? こいつの頭の中にはこんなものがいっぱい詰まってるんだぞ? どれだけ膨大な知識があるんだか……」


「おやつでこのレベルですし……。確かに言われる通りなのですが」


「米飴の件もあるし、いろいろ苦労かけると思うから食事くらいいいですよ。とりあえず、おやつを楽しんでください」


 スティーブンとは普通に話せるけど、リリアーナにはちょっと丁寧語になっちまうよな。あれだけ美人だし……。


 ヴィルナは割と大き目のこれをさらに二つおかわりし、意外な事にリリアーナが控えめにおかわりを要求してきた。当然すぐ用意したけどね。


 スティーブンは甘い物がそれほど好きじゃないのか、残さずに食べたがおかわりはしてこなかったな。


 さて、おやつは出したし後は晩飯の準備だな……。




読んでいただきましてありがとうございます。

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― 新着の感想 ―
[気になる点] 毎回態々飯時に来て集るこいつといい、ゲストとして呼んだのに料理を作らせる男爵といい、登場人物が卑し過ぎ 冒険者のような品性がなくても納得できるようなキャラではなく、それなりの社会的地位…
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