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第七十八話 えっと……、お互いの秘密というか、それぞれ内緒にしてた事を告白するって事だよな?

連続更新中。この話で第三章は終わりになります。

楽しんでいただければ幸いです。



 翌日の夕方、夕食の後にナイトメアゴート討伐前に話すと約束していた秘密をお互い確認する事になった。


 ヴィルナの正体は確かに気になるけど、その点に関してはホントいまさらって感じでもあるんだよな……。少なくとも竜とかの魔物って訳じゃなさそうだし。


「えっと……、お互いの秘密というか、それぞれ内緒にしてた事を告白するって事だよな?」


「そういう事じゃな。ソウマはわらわに隠していることなどないと思うのじゃが、わらわは正体すら明かしておらんからの」


 すみません!! そこまで信用して貰ってるのに、ものすっごく色々隠してます!!


 俺が別の世界から来たって事以外は話してないよな? 寿買(じゅかい)関係はもちろん、最近あれを手に入れた事も隠してるし……。よし、この際だ、キッチリ全部話そうじゃないか。


「あのさ……」


「では、わらわの正体からじゃな」


 先にヴィルナが話し始めた!! というか、森に住んでた人に近い一族だろ? 正体って言っても人と大して変わらないんじゃないのか?


「この世界には魔力や魔素があり、その魔素の中には禍々しきモノもある。森に住むハイエルフの一族や、我ら聖魔と呼ばれる一族はその禍々しき魔素を浄化する役目を持っておるのじゃ。大災害で一族が絶えぬように遠方に散っておるのじゃが、この南の森にも我らの一族が聖域を作り、森の魔素を浄化しておったのじゃ」


「……あの森にエルフとかが住んでないって言ったのはその為か。えっと、ハイエルフとエルフは別の種族なのか?」


「別の種族というか、別の存在じゃな。エルフは千年以上生きるが人と同じ姿をしておる亜人と呼ばれる種族じゃ。ハイエルフの一族はその数倍、三千年から五千年は生きると言われておるし、種族的には精霊と呼ばれておる。半霊体で特殊な術を使わねば触れる事すらできぬのじゃ」


 神とか精霊とかってそんな感じのくくりなのかな? 幽霊とか見た事ないけど、もしかしてこの世界には幽霊とかいるのかも知れないな。


「人に精霊とあがめられるハイエルフと違い、聖魔と呼ばれるわらわたちは人からすれば忌むべき存在なのじゃ。聖と名についておるが性質は魔族に近く、人と同じように食物を口にするだけでなく精気まで啜るのじゃからな」


「……もしかして、最初にあった時に喰おうって話してたのは」


「そういう意味じゃな。結局我慢できずに手を出した訳じゃが……。わらわが人外の存在であると見抜きながら、そのまま接してくれたソウマには感謝しておるのじゃが、どうして見抜けたのじゃ?」


 最初に出会った時は飢餓状態で、襲おうと思ったら俺が食いでのありそうな普通の食べ物を出してきたから、とりあえずあの時襲うのはやめたって事なんだろうね。結局食われたけど。


「最初は竜か何かがひとに化けてるのかと思ってたからな。途中からは違うって思ったけど」


「流石にそれはひどいのじゃ。いや、変身を解いたわらわの姿をみれば、考えが変わるやも知れんが」


「多分大丈夫だと思うんだけどね」


 だってさ、持ってた服とかも今のヴィルナが着れる服だったじゃないか。という事は殆ど変わらないって事だろ?


 お、ヴィルナの身体が淡く光って……、姿を変える魔法か何かを解除してるのかな? ……って。


「これがわらわの本当の姿じゃ。この辺りの者であれば、この姿を見ただけでわらわから離れていく事じゃろう」


「変わったのは胸か? なぜわざわざ胸を小さく偽装して……、ああ、耳と瞳の色も違うな」


 イタリアンレストランの間違い探し並みに難問だ。というか、わかりやすい変化といえば明らかにボリュームを増した胸と、漫画とかでよく見かけるようなエルフ耳。それに今までヴィルナの瞳は蒼かったけど、金色っぽい色に変化してる位? 他にどこか変わってるのか? 正直、他に変わってる場所があるんだったら、〇〇ヶ所変化してますとか説明が無いと分からないレベルだ。


「他に言う事はないのか?」


「胸と瞳と耳以外で変わった場所があるんだったら、ヒント位欲しいかな? 正直毎日見てる俺でも流石に変化が分からないぞ」


「変わっておるであろう? こう、全身から滲み出る魔素というか、禍々しき気配もそうじゃぞ」


「何も変わってないぞ。というか、胸のインパクトがでかすぎて下手すると瞳の色とか耳にも気が付かないパターンだ」


 多分ブラとかのサイズでツーサイズ以上でかくなってるよね? 前の薄着で歩かれてたら胸以外に視線が行かない可能性すらある。


「そこまで気を使わなくてもいいのじゃぞ? 本当は忌避しておるのではないのか?」


「正直、変化なしって事で。他人の目が気になるんだったら外に行くときは前の姿でもいいけど、家にいる時はその姿で構わないぞ」


 というか、その姿の方が好ましい。


「ソウマ……、わらわはソウマと出会えたことを、これほど感謝した事は無いのじゃ。その言葉に偽りが無いのであれば、これからもずっと一緒にいてくれるか?」


「おう、これからもよろしくな。……それじゃあ、俺の番だけど。いろいろありすぎてどれから話せばいいんだか」


 まず、アイテムボックス系の秘密だろうな。


「ひとつ目はアイテムボックスの事だな。アイテムボックスの容量もほぼ無限だと思うけど、そもそも俺の使っているアイテムボックスは物を収納するだけじゃなくて、色々ものを作り出したり異世界の物を買ったりできるんだ」


「……は? いや、相当にでかいアイテムボックスであるのは承知しておるが、物を作り出せる? 物を買う事が出来るじゃと? そんなアイテムボックス聞いた事も無いのじゃ」


「アイテムボックス内に寿買(じゅかい)って店が存在してて、そこに金を払うと色々買えたりする。ヴィルナと最初にあった時に出したパンとか、あといつも使ってる武器なんかもそうだ」


 通信販売とかネットショップって言っても分からないだろうしな。アイテムボックスの中に店があるって表現が正しいだろう。


【ネットショップもお店です。わかりにくいという事でしたら、アイコンの代わりに仮想店舗を実装しますか?】


 うん、十分にわかってるから、実装しなくていいよ。というか、そんな機能もあったんだな……。


「それはとんでもない力じゃな。ではあの塩などは……」


「その店で手配した物だね。この力にも色々細かい決まりがあってね、買った品物をそのままの状態で他人に売ったりできないんだ。だからいろいろ作り出す機能を使って手を加えたりしてる」


「それにしても、あれだけの塩を買える資金があったという訳じゃな。それもすさまじい事じゃが」


「値段がこの世界とかなり違うからな……、十分に儲けが出るレベルだけどね」


 塩とかは割と手間に対して利益は悪かったんだよな。飴とかクッキーとかは利益率がものすごい事になってるけど。


「それでは金を稼ぎたい放題ではないか」


「その気になればいろんな物を潰せる力さ。だからそうしないようにある程度は制御してる。今までもお菓子や料理をそこまで広めてないし、商人ギルドとかにあまり持ち込んでなかっただろ?」


「そういえばそうじゃな。しかし、それだけの力を持っておるのに身を滅ぼさぬのも凄まじい事じゃぞ」


「その先に何が待ってるのかをある程度理解してるからね。段階的に改革していかなきゃ誰も幸せになれないし、そんな世界はだれも望んじゃいないだろう」


 以前は塩の価格が高すぎた事も、そして今現在も砂糖が高級品であることも俺はいいとは思っていない。


 でも、それを一気に破壊してしまうと多くの血が流れるだろうし、最終的に不幸しか生み出さないかもしれない。だから慎重に、少しずつ変えているつもりだろうけど、あの新種の魔物の登場のおかげで状況はかなり不味くなってるんだよな。


「アイテムボックスにはもう少しいろいろあるけど、細かい事は俺にもわからないからこの辺りかな?」


【親切に説明している筈ですが?】


 ファクトリーサービスとかプラントの細かい説明がいまだに無いんだけど。ああ、細かい説明は求めてないから。聞いても訳わかんないだろうし。


【詳細が必要な場合は、アイテムボックス内のファクトリーサービスアイコンから確認ができます】


 それはまた今度ね。


「とんでもない力を持っておったのじゃな……。それはわらわに話してよかったのか?」


「ヴィルナも話したくなかった秘密だったんだろ? 俺がこの力を隠すのはフェアじゃない」


「ソウマ……」


 もうひとつ、絶対に話しておかないといけない事があるんだよな。


「最近の俺の身体に起こっている異常の原因で、新種の魔物を倒した力についても話しておきたいんだ」


「あの剣の力ではないのか?」


「実際に見て貰った方が早いかな? セットブレス」


【セット、鞍井門(くらいど)颯真(そうま)。アクセス。セットアップ完了】


 ブレスの音声は俺の脳内に響いてるからヴィルナには聞こえていない筈。


 それと、アレが発生する可能性はゼロじゃないけど、俺は絶対に発生しないと信じてる。


「究極の勇気は此処に!! ブレイブ!!」


【アルティメットブレイブ。ベーシス!!】


 光の粒子が特殊なスーツを形成し、アルティメットブレイブの姿に変身した。ベーシスモードだから割と控えめなデザインの筈なんだけどね。


 それと重要な事だけど、ヴィルナが傍にいるのに変身用防護フィールドは展開されなかった。つまり、ブレスもヴィルナは敵じゃないって認めてくれたって事だよな。


「何じゃその姿は? それがあの魔物を倒した力なのか?」


「この姿になると、いろんな力を使えるんだ。あの魔物を一撃で倒せるような技もいくつかある」


「そこまでの力は感じぬのじゃが……。ソウマが言っておる以上、嘘ではないのじゃろうな」


「それと重要な事なんだけど、この姿になる時に敵……、誰かを傷つける脅威がいると変身用防護フィールドってのが発生するんだ。今ヴィルナの前で変身してもそのフィールドは発生しなかった」


 そういう事なのさ。誰が何と言おうが、理解されない人から忌み嫌われたって、ヴィルナはヴィルナ。疎まれるいわれなんて欠片も無いのさ。


「わらわは、悪い存在ではないと言ってくれるのか?」 


「少なくとも、俺はそう思ってるよ。みんなの認識は少しずつ変えていけばいい。その姿で外に出るのが怖いのなら、家の中だけでもその姿でいないか?」


 変身を解いた。短時間だったし、今回のエネルギー消費量はほぼゼロだろう。


「分かったのじゃ。わらわはもう自分を偽って姿を変えたりせぬ。この姿のまま、ずっと生きていくのじゃ……。外に出る時は、もう少し以前の姿になってもよいかの?」


「それでいいと思うよ、そのあたりは少しずつ改善していけばいいんじゃないかな? そういえば、その姿の時に今までと変わる事ってあるのか?」


「そうじゃな……。この後ソウマが大変な目にあうくらいかの」


 なんですか? この後……?


「それはどういう意味……。ちょ、ヴィルナさん?」


「久し振りにこの姿になったのじゃから、少々加減が出来ぬかもしれぬぞ。まあ痛くはせんつもりじゃ」


「そのセリフ、似たようなのをだいぶ前に聞いたぁぁぁぁっ!!」


 寝室まで強引に連れていかれる俺。


 ヴィルナの大食いが治った原因はやっぱりこれだったか……。


 教訓、今後は晩飯のメニューに鰻とかスッポン鍋とかを定期的に入れようと思いました。


 こんな平和な日がいつまでも続くといいな……。




読んでいただきましてありがとうございます。

いつもブクマ、誤字報告などありがとうございます。気に入っていただけたら評価なども頂けると励みになります。

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