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第七十四話 なんだよこれ? 火傷の様な痛みだけど皮膚に異常はないし

連続更新中。

楽しんでいただければ幸いです。



 あの名前も知らぬ外道な魔物を倒した日の深夜。俺は全身を焼くような激しい痛みと戦っていた。


 あまりに痛すぎて、深夜なのに目が覚めちまったよ。割と寝付きはいい方なん……、っ、いってぇ~っ!!


「なんだよこれ? 火傷の様な痛みだけど皮膚に異常はないし。掌も焼けるように熱いから見てみたが、霞んだ目で見ても外見上はどこにも異常は感じられない。いや、おかしいだろ? これだけ焼けるような痛みがあるなんて異常だぞ? そういえば、身体に異常があると知らせてくれるんじゃないのか?」


 夜中だし隣で寝てるヴィルナを起こさないように出来る限り小声で呟いた。口に出さずに頭で考えればいいか……。


【現在、体温と血圧がやや高くなっていますが、許容範囲内です】


 この体中に広がる痛みは病気でも何でもないって事か? それっじゃあ、いったい何なんだよ?


【その症状は高(ヴリル)を使用した負荷によるものです。傷薬や回復剤の類でも収まりません】


 高(ヴリル)? ……アルティメットブレイブに変身したからか? でも、前回はこんな事は無かったぞ? 変身時間が短かったからか? 最初の時はすぐに変身を解除したしな。


 そうか!! あの技、アルティメットクラッシュを使ったからか。アレは全身を(ヴリル)で包んで超高速に加速させる技だしな。


【原因:使用者がアルティメットブレス使用に最低限必要な(ヴリル)値に達していなかった為、一時的に高(ヴリル)負荷症状が発しております。身体データを照会、症状改善まで二時間ほど必要になります】


 ブレスの方から通知が来た。こっちも頭の中に直接響くんだ。


 ……これはアレだよ、かなり症状は重いけど、(ヴリル)版の筋肉痛みたいなもんか? あれだけの力を使う代償が何にも無いって訳ないよな。


【高(ヴリル)のブレス適合者であれば、身体ダメージなどは発生しません。なお、当ブレスは鞍井門(くらいど)颯真(そうま)をマスター登録した為、他者への譲渡などは不可能です】


 俺がこの痛みに耐え抜いて、このブレスの力を自分の物にしなきゃならないって事か。


 (ヴリル)がどうやれば成長するのかは知らないけど、規定値に達するまではアルティメットクラッシュクラスの必殺技を使った場合、この痛みが待ってるって訳だ。


【クラッシュ系、ブレイカー系、ブラスト系は特に全身に高(ヴリル)を発生させますので、反動も大きくなります】


 俺の(ヴリル)ってのが強くならなければ、いつもこんな状態になるって事か?


【正解です。また、鍛錬等で自分自身の(ヴリル)が上がった場合のデメリットは存在しません。出力不足で外部から高出力の(ヴリル)を調達した場合、今回の様な症状が現れます】


 俺が弱いって言われてるだけか……。


 そうだよな、借り物の必殺技に、借り物の(ヴリル)


 だったら俺が成長して、自分自身の力で変身できるようにならなきゃいけないって事だ。


 やってやるよ。この俺、鞍井門(くらいど)颯真(そうま)が、アルティメットブレイブの力を完全に自分の物にするまで、この痛みは覚悟してやる!!


「ソウマ、どうかしたのか? 苦しそうにしておるようじゃが」


「……ああ、なんでもない。ちょっとな」


「ちょっとどころではないじゃろう。身体をめぐっておる魔力の流れがこうも乱れておるのじゃ。……いや、魔力ではないようじゃな、これは(ヴリル)の方じゃろ?」


 ヴィルナには俺の身体の異常が分かるみたいだな。こうして自分の手を見ても全然わからないのに。


「……流石だな。これは身に余る力を使った代償みたいなもんだよ。いや、前借りした力の支払いというか、そんな感じかな?」


「大丈夫なのか? これだけ体内の(ヴリル)が乱れるなど異常なのじゃ」


「それだけの事をしたからな……。大丈夫、少ししたら収まるさ」


 二時間位って言ってたしな。というか、この地獄の様な痛みを二時間ってのは割とキッツイけど、でも、俺がやらなければ明日の朝にアツキサトは相当の被害を出していただろう。


 ほんのちょっと。全身を焼くような痛みを二時間耐えりゃ、多くの人を救えるんだ。別に死ぬ訳じゃないし、悪い取引じゃないさ。


「ソウマ、怒らないで聞いてほしいのじゃ。この町を出てどこかほかの場所に行かぬか? ソウマであれば、何処に行っても生きてゆけるじゃろう?」


「そうだな。生きていくだけだったら、何処でも大丈夫だろうさ」


 アイテムボックスも寿買(じゅかい)もあるし、困る事は無いだろうぜ。


「では……」


「でもな。ダメなんだ……。俺はもう力を手に入れちまった。誰かを護れる力を……。今の俺には手に届く範囲の人しか救えない。でも、俺がほんの少しガマンをすれば、たくさんの悲しみを止められて、多くの人を救えるんだ」


 流石にほかの国までは助けには行けないし、守れる範囲だってちっぽけなもんさ。


 でも、そのちっぽけな範囲にも何万人の人が住んでて、みんな平和に暮らしてるんだぞ。砂糖はおろか、塩すら満足に無かったこんな世界でもね……。見捨てられるわけないじゃないか、昔、あんなに渇望していた誰かを護る力が手に入ったんだ。


「流石にわらわもソウマであればそういうと思っておった……。じゃが、言っておかねば、ソウマが後で後悔するやも知れん。そう思ったのでな」


「ありがとう。今はまだこのざまだけど、いつかこの力を完全に俺の物にしてみせるさ」


「今夜はわらわが傍におる。耐えれぬ時は背中を摩る事くらいはできるのじゃ」


「すまないな……」


 俺はまだ弱い。この反動が無くなるまで、満足に力の行使もできない。でも、この痛みは乗り越えなきゃならない痛みだ。


 もう、二度とあの時の様に、この手から大切な物が失われないように……。


◇◇◇


 夜が明けた。


 話通り身体の焼けるような痛みは二時間ほどで完全に収まり、そして気持ちよく寝ていたところ別の痛みを味わう事となった。今日も傷薬が大活躍だ……。


「朝風呂から帰ってきて言うのもなんだけど、流石に昨日はやめようと思わなかったのか?」


「人の気も知らんで、ああまで心地よさそうに寝ておったのじゃ。当然の報いじゃろう」


 噛み癖と引っ掻き癖さえなけりゃ別に問題ないんだけどな。


 まあいいや、傷薬のおかげで身体の痛みももうないし……。というか今までよりも身体が軽い?


「……気のせいかな? まあいいや、朝飯にするか」


「朝から風呂に行って、その後に朝飯とは優雅な生活じゃと思うのじゃが」


「その分働いてるからたまにはいいだろ。今日の朝食はほぼ以前作ってアイテムボックスに保管してた物だけどね」


 今日は和風メニューがメインだ。白飯、柴漬けなんかの漬物、焼鮭、プレーンオムレツ、豆腐となめこの味噌汁。ヴィルナはこれだけだと足りない事が多いから、テーブルの真ん中には鶏の唐揚げが大量に積んである。一応俺も食べるけど、殆どヴィルナの腹に納まる予定だ。


「今日も豪華な朝ごはんなのじゃ。この、オムレツにマヨネーズとやらを付けるとまた格別なのじゃ」


「卵焼きとかオムレツに何を付けるかは割と好みが分かれるけど、ヴィルナはマヨ派なんだな」


 一応卵焼きを出す時も基本の塩とか醤油だけじゃなくて、ウスターソースやケチャップなんかも置いてある。この問題は根が深いし、最悪殴り合いにまで発展してもおかしくないからな。他人の食習慣に難癖をつけるのは良くない。


「オムレツにはウスターソースもよいのじゃが、わらわはこのマヨネーズで食べるのが一番じゃ。焼鮭には醤油が良いと思うのじゃが」


「ポン酢も割といいけどね。ソースに何を使うかも悩むところだけど」


 ウスターソースひとつとっても奥が深いからな……。毎回同じもいいけど、たまに違うもので食べるのもいい。その日の気分ってのもあるしな。


「今日はあの男が訪ねてくるのじゃろ?」


「多分昼飯前だろうな。出す料理を何か考えておくさ」


 和食もいいけどいきなり食べさせるには醤油もネックの一つなんだよな。醤油に関しては割と万人向けする調味料だとは思うけど、醤油が好きかどうかでかなり印象が変わるし。洋食のビーフシチューは食べさせたから、今度は中華料理がいいかもしれないな。


「ソウマの料理に慣れると大変なのじゃ。あの男は金を持っておるようじゃし、再現できるかもしれぬが」


「金に糸目をつけなければ洋食は割と再現可能だと思うけどな。金貨食ってるみたいな生活になるぞ?」


「金貨は食えぬ。こんな状況では金を残しておくよりは少しでも自身の為に使う方がよいと思うのじゃがな」


「スティーブン位になると背負ってる物が多すぎるのさ。俺みたいに根無し草って訳にはいかないよ」


 事件が解決してここが平和になったらどこにでも行ける俺と違って、守るべき商会やそこで働く部下がいるんだろうしな。しがらみってやつは生きていくには必要だけど、自分を縛る枷になる事もあるんだよね。


「ソウマも十分にいろいろと背負っておるじゃろう。あんな目にあったにもかかわらず、まだあの力を使うつもりじゃろう?」


「必要とされる限りはね。元凶を倒すにはまだ力が足りないけど、降りかかる火の粉は全部払うつもりさ」


 新種の魔物を生み出してる奴はおそらく黒龍種アスタロトだ。


 不完全な今の俺ひとりの力で倒すことは不可能だけど、今の状態の俺でもライジングブレイブとレッキングブレイブ辺りがいてくれたら勝てるんだけどな。


「数万も人を喰らう魔物を倒してまだ力が足らぬというのか?」


「それ以上に強い魔物がいる限りはね。朝だからデザートは無くていいかなと思ったんだけど、あんみつを用意したぞ」


「果物を甘い汁で漬けておるだけなのに、これほどの物になるとは!! 食べた事の無い果物も多いのじゃ。この四角い物もおいしいの」


「あんみつも美味しいよな。この黒蜜をかけてもおいしいぞ」


「これは……、甘みがより一層引き立つのじゃ!!」


 ホント平和だ。いろんな場所で魔物が暴れてるとは思えない位に平和だ。でも、今この瞬間にも多くの人が食われたりしてるんだよな……。


 最低でもあと数回、アルティメットブレイブに変身しなきゃいけない。その後に地獄の苦しみが待っていると分かっててもね。




読んでいただきましてありがとうございます。

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