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第七十三話 こいつでここから三十分位の場所にいた。情報通り明日の朝にはここに来てただろうな

連続更新中。

楽しんでいただければ幸いです。



 バイクで街道を走らせる事三十分。アツキサトの西の門の前まで辿り着いた。行くときはそこまで気にしてなかったんだけど、このバイクで三十分ってあの魔物がいた場所からここまでって結構距離があったんだな。


 門の前には完全装備の兵が百人ばかり集まっている。ここの人口から考えて、この辺りの兵数が限界なんだろうな……。戦争してる訳じゃないし。


「クライドさん。どうでした、魔物は居ましたか?」


 部隊長らしい男が話しかけてきたけどなんだかこいつも兵に向いてないというか、一般兵の方が強そうなんだよね……。全滅した五百人の方が主力だったらしいし仕方が無いんだけど。


「こいつでここから三十分位の場所にいた。情報通り明日の朝にはここに来てただろうな」


「そうですか、明日の朝……。え? ここに来ていた、ですか?」


「あの魔物は倒したからもういないぞ。人を攫ってるって奴はこっち方面に来ていないらしいし、こっちはもう安全だと思うんだが……」


 ここまで西方面に凶悪な新種の魔物が出てくると、西の方に黒龍種アスタロトがいるんじゃないかと思うんだよな。確証はないけどね。


 となると、雷牙(ライガ)勇慈(ユウジ)が西の国に向かってる可能性は高い。ただ、今どんな状態か知らないけど、あいつは彼ひとりで倒せる相手じゃないんだよね……。


「討伐……、できたんですか?」


「ああ。倒した場所は割とすぐに分かると思うが、調べてくるか? 馬を走らせても結構な距離だと思うが」


「確認に行かせます。おい!! 夜目がきいて乗馬のうまい奴を三人ばかり呼んで来い」


 スリーマンセルか。三人だと何かあっても帰ってくる可能性は高いしな。でも、流石にあのクラスの魔物はいないと思いたい。というよりもあの周辺に生き物が残っている可能性の方が少ない気がするぞ。


「俺は冒険者ギルドに報告に行こうと思うんだけど」


「私はカロンドロ様に報告に行かせていただきます」


「これで問題は北のナイトメアゴートか……。王都との交易が再開しても、あっちも贅沢品を買う余裕なんてなくなるかもしれないが」


 人を石に変える魔物の被害がどの程度の規模なのかって話だよな。


 麦に関しては国が纏めて買い取れば、今までと変わらないだろうし……。買うだけの金があればだけど。


「この町にクライドさんがいて本当によかったです。ではお気をつけて」


 さて、俺も冒険者ギルドに向かうかな……。二時間ほどか。そこまで時間はかからなかったな。


 ◇◇◇


 冒険者ギルドの前。……またえらい静かなんだが。また貴族か誰か来てるのか?


「戻ってきたぞ、って!! ああ、スティーブンが来てたのか。そりゃここの連中でもおとなしくなるよな」


「戻ってきたぞ、じゃねえ!! 討伐に行くんだったら俺に一言ぐらい残していけ!!」


「すまない。あれ以上遅くなると、日が暮れちまうと思ったからな。まだ明るいけど、この時期だと日没まであと三十分くらいだろ?」


 現在時刻は夕方の六時過ぎ。この時期でも流石に薄暗くなってきてるしな。


「最悪、夜中に急襲されるよりマシって事か」


「そういう事さ。討伐には成功したから、結果オーライだ」


 ん? なんでここで静かになる?


 映画とかだと帽子が飛び交って、ヒャッホ~的な状況じゃないの? 帽子をかぶってる奴はいないけどな。


「ソウマ。本当に倒してきたのか?」


「倒す以外で俺がここに戻ってくる訳ないだろ。あ、冒険者カードで確認お願いします」


「そんな、さらっと流す事か!! 下手すりゃ国潰せそうな魔物討伐するのにたった一人でこの短時間だぞ? 往復する時間考えたら信じられねえ」


「冒険者カードで確認しますので、少々お待ちください」


 状況や相手次第だけど、特撮物みたいに馬鹿正直に真正面からやりあうつもりはないしな。特に人を食うような魔物にかける情けなんて欠片もない。射程が長い武器や技も結構あるし、倒せる状況になれば躊躇はしないぞ。


「移動に関しては今回は奥の手を使った。アガナヤに向かう一つ目の駅舎があるだろう? あそこまで一時間程度だったしな」


「最初の駅舎って、駿馬でも数時間かかる距離だぞ」


 この数時間ってのも脳内変換なんだろうな。元がどんな単位なのかは知らない。行きに一時間かかったのはあいつを探す為に慎重に進んだからだけどな。帰りは半分の時間で済んだし。


「問題はそこなのかな? で、どうやって噂の魔物を倒したのさ。そろそろ話して楽になったりしない?」


「しないな。ルッツァ達と戦う事は無いだろうが、物騒な魔物がいる以上あまり話したくない。あの魔物どもは喋るんだぞ。という事は、言葉を理解できる知能があるって事だろう?」


「その話は聞いてるな。今回クライドが倒したって魔物も、人をこれくらいの小さな玉に閉じ込めて食べてたそうだ。しかも、家族や恋人などがいればわざと見せつけるようにな」


「あの魔物はどいつもこいつも嗜虐性の高いクソ野郎か」


 新種の魔物でしゃべらなかったのは塩食い(ソルトイーター)だけ……。もしかしたらあいつもしゃべれてたのかもしれないけど、確認するまでに倒したから流石にわからない。


「とりあえず脅威は去ったからいいけど、まだ王都への街道が封鎖されてる現実は変わらないんだよね?」


「王都側でなんとかしてくれればいいんだけど、正直無理だろうしな」


「無理だな。俺も王都に残してきた部下が心配だが、帰る手段もありゃしねえ」


「スティーブンは例の一件でこっちに来てただけだろうしな……。ナイトメアゴートを討伐できたとして、その先の状況はどうなってるかわからないぞ」


 塩の件でスティーブンがこっちに残っててくれたのは正直助かってるよな。王都までの街道も何とかしたいけど、流石にそこまで手は回らない。


 助けられる人は助けたいけど、ここを留守にして南方から竜が攻めてきた場合、色々と後悔する羽目になりそうだしな。


「流石に人を石にして暴れてる魔物は向こうの冒険者に任せるしかないだろう。西の国で暴れてるもう一匹の魔物もだ」


「そうですね。スティーブン様、そろそろお時間ですので」


「仕方ねえ、お前にはまだ言いたい事があるがまた明日だ。白うさぎ亭に……、いや、明日お前の家に行くからな」


「了解。俺もいろいろ話したいことがあるしな」


 白うさぎ亭じゃなくて俺の家って事は、話のついでに飯くらい食わせろって事だろう。色々と準備をしておくか。


「ふぅ~。お前あのグレートアーク商会の頭とあんな話し方ができる仲なのか?」


「商人の方で色々とな。ダリア以外はおとなしいものだったな」


「あったりめえだ!! あんな大物の不興を買って敵対してみろ、この国じゃ暮らせなくなるぜ?」


「そこまで狭量な奴じゃないぞ。少なくとも話せばわかるし、ちゃんと理も通す」


 冒険者だとなおのことグレートアーク商会とかかわる事なんてないだろうから、噂を信じて怖がってるんだろう。


「お待たせしました!! 間違いありません、討伐の確認が完了しました!!」


「よっしゃー!! これで安心して寝れるな。流石クライド!!」


「討伐報酬なんですが。前回同様まだ決まってませんので……」


「そうでしょうね……、あのクラスの魔物の報酬ってちょっと想像つきませんし……。決まったらまた連絡をください。じゃ、そろそろ帰るか。そうだ!! この前の寸胴はどこだ?」


 ビーフシチューが入っていた寸胴、まだ回収してなかったからな。


「すいません。洗って保管させて貰ってました。美味しい料理をありがとうございます」


「あの後の地獄絵図は思い出したくねえな。それにあんな料理に慣れちまうと、ここで食う料理だとな……」


「ここで食う料理は何ですか? 次に注文した時は覚悟してくださいね♪」


「ちっ……違うって!! ここの料理は安くてうまいさ。ただな、あんたらも食ったからわかるだろ?」


「そうですね~、その言葉に免じて量を減らしたりはやめてあげますよ。流石にクライドさんが持ってきた料理はここで出せませんけど、色々考えさせられることはありましたので」


 材料とかは無くてもいろいろ刺激になったのかもしれないな、料理の質が上がるのはいい事だ。


 しかし、俺はみんなが手ごろに美味しいものを食べられるようにしたかっただけなのに、なんでこんな状況になったんだ?


 魔物を全部倒して、またみんなが普通に暮らせる日がくればいいんだけど……。少なくとも冒険者は相当苦労しそうだな。魔物の数は激減しそうだし……。



読んでいただきましてありがとうございます。

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― 新着の感想 ―
[一言] 「ふぅ~。お前あのグレートアーク商会の頭とあんな話し方ができる仲なのか?」 この街をも簡単に壊滅させることができる魔物をも倒してきたクライドが一商会の会頭に気を使うと思うのか不思議。まあ、…
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