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第七十二話 今回は森を通らなかったって訳だな。その新種の魔物は以前西の国に出現した奴と同種なのか?

連続更新中。

楽しんでいただければ幸いです。



 スティーブンと話をした二日後、冒険者ギルドから緊急招集がかかった。当然今回の魔物関連だが予想通りというか……。


「アガナヤは壊滅。逃げてきた住人の話では、新種の魔物は街道沿いにある小さな集落を襲いながらアツキサトに向かっているそうです」


「今回は森を通らなかったって訳だな。その新種の魔物は以前西の国に出現した奴と同種なのか?」


「情報では同じ魔物という事です。人だけではなく、家畜や他の魔物を食いつくしながらこちらに向かっているという話ですね」


 思った以上に被害は深刻な状況だった。人を数万人食える魔物ってどれだけでかいんだ?


「そいつは倒せるのか? 今まで戦ったやつで無事な奴は?」 


「討伐に向かった冒険者、西の国の騎士団、魔法使いギルドの高レベル魔法使いたち。その全てが壊滅し、誰一人生きて戻っていないという話です。何人かは逃げ出して無事な可能性はありますが」


「逃げて戻ってもまともな状態じゃないだろうしな。となると普通の攻撃は通用しないと思った方がいいのか」


 この世界ってこうなると、本当に打つ手が無いんだな。


 騎士団も壊滅って、以前ヴィルナが言ってた通りなのな。人同士の戦いだったら数ってのは力なんだけど。


「クライドに任せるしかないって話か」


「少なくともカロンドロ男爵様と冒険者ギルドはそう結論を出しました。この町の冒険者が、西の国の騎士団や魔法使いたちより強いと思いますか?」


「無理だろうね~。あそこの魔法使いは凄いんだよ! テンペスタース系魔法を使える人が十人近くいたはずだしさ」


「なっ!! そんな魔法使いがいてもダメって事か? テンペスタース系魔法って下手すりゃ町ひとつ滅ぼせる魔法だぞ?」


 そんな物騒な魔法もあるんだ、流石異世界。個人に持たせるには過ぎた力だと思うんだけどな。


「あの魔法が効かぬという事であれば、流石にソウマでも無理なのじゃ」


「そうでもないさ。街ひとつって言っても、目標に与える直接のダメージは分散するだろう。一点突破の方が強い可能性はある」


「たしかに魔物一体を倒す場合はもっと強力な魔法も存在する。しかしな、アレを超える魔法なんて使える奴はいないんだぞ」


「五百年位前に使える人はいたっぽいんだけどね。()()()()()って呼ばれてる超強力な魔法」


 オリジナル? 個人が開発した特殊な魔法なのか?


「でも、このままではアツキサトにいる人はみんなその魔物に食べられてしまいます。クライドさんにお願いするしかないんです、報酬は出来る限り用意させていただきますから」


「お主はソウマに死ねといっておるのか? 何万人も食い殺せる魔物じゃぞ?」


「だからこそだろ。その魔物がこの町に辿り着く前に倒すのが理想だ」


 実の所、街道を直進してくるんだったら話は早いんだ。待ち伏せするにはちょうどいい場所もあるしな。


 障害物の多い森を抜けて来られるより、確実に奴を捕捉できるだろう。


「お前正気か!! 街を幾つも潰せるバケモンだぞ!!」


「そうなのじゃ!! 強き魔物からは逃げる事も大切なのじゃ」


「逃げた先で魔物が来ない事を祈りながら暮らすのか? それも一つの手だよ。否定しない。でもな、俺たちが揃って逃げたらこの町の人はどうなる? もう避難しているならともかく、この状況じゃ逃げ切る前に食われるのがオチだぞ」


「カロンドロ男爵様は全兵力を西側の門に集中させ、魔物と徹底抗戦の構えです。住民は東側に避難するように言っています」


 西側に兵力を集中させてるって事は、ナイトメアゴートの方はしばらく大丈夫って判断か。それとも、オウダウを犠牲にしてこの町への侵攻を遅らせる作戦?


「今から逃げるのは無理だろうな。この町からアガナヤ方面に向かう街道で、割と狭くて長い峡谷っぽい場所があっただろ? あそこで待ち構えるってのはどうなんだ?」


「討伐部隊の第一陣、完全武装の兵五百人が今朝そこで壊滅したそうです。今頃はこちらに向かっている最中でしょう」


「此処の領主として兵を出さなきゃいけないのは分かるが、犠牲者を増やすだけだろうが。現在位置の予測は出来ているのか?」


「明日の朝にはアツキサトに侵攻してくるでしょう」


 となると、いまから迎撃に出れば何とかなるか。問題は移動手段だが……。


【特殊二輪(ヴリル)対応型オフロードバイク改がお薦めです。(ヴリル)で稼働しますが、取り外し可能な大型(ヴリル)カートリッジにフル充電で一万キロ走行可能です】


 値段は一千万円か。特殊条件下の最高時速がマッハ十とか書かれてるけど気にしない。そんなモードで絶対走らせないし、走らせただけで死ねるわ。


 今回はヴィルナを連れて行くわけにもいかないし、俺一人で突っ込むにはこの方がいいかもしれないな。即購入。バイクって事なら免許も持ってるしいいだろ。


「俺が迎撃に向かう。ヴィルナは悪いが今回はここで待っててもらえるか?」


「……分かったのじゃ。流石にわらわでは歯が立たないからの」


「そうじゃないさ。俺が誰かを巻き込みたくないだけなんだ。今回は、たぶん手加減できない」


 変身はしたけど、この世界で一回もアルティメットブレイブの力を使ってないからな。


 必殺技の威力がどの位かわからないし……。


「クライドに任せるしかない。悔しいが、俺達にはなにもできそうにないしな」


「ナイトメアゴートの動きには注意してくれ。もし西側の魔物を倒せた場合でも流石に俺も連戦はキツイ」


 再変身出来る状態に(ヴリル)が溜まるまで、どのくらいかかるかわからないしな。


「ナイトメアゴートの移動速度は今までのデータがあるからな。オウダウが襲われて、その後で奴がこの町に辿り着くまで最低でも数日かかる」


「安心とはいいがたいが、とりあえず北から迫る脅威と挟み撃ちはない訳か。それじゃあ行ってくる」


 急いで街を駆け抜け、西の門から出たところで購入していたオフロードバイクを取り出して……。


「なんだこれ? オフロードバイクにしちゃ物々しいな。燃料タンクが(ヴリル)カートリッジになってるのか? (ヴリル)シールド機能?」


(ヴリル)シールドを発生させますと、走行時のダメージを無効化できます】


 安全設計って訳か。とりあえずいつもの装備でヘルメットだけバイク用を購入するか。……これで良し。


 目標はこの町を目指して進む魔物!!


 待ってろ、絶対にぶっ殺してやる!!


◇◇◇


 バイクを走らせて一時間ほど、西の方角から突き進んでくる馬鹿でかい魔物を発見した。


 あのでかさでも数万人食えるとは思えないんだが、あいつもまた人や魔物を木の実か何かに変えて食うんだろうな。


「あの新種の魔物との距離は一キロ程度か。ここで迎え撃つ。セットブレス」


【セット、鞍井門(くらいど)颯真(そうま)。アクセス。セットアップ完了】


 半透明な光の球が俺の周りに展開している。ああ、変身用防護フィールドか……。


「究極の勇気は此処に!! ブレイブ!!」


【アルティメットブレイブ。ベーシス!!】


 変身するのは二度目だけど、何だか奇妙な感覚だよな。


 新種の魔物はおおよそ十メートル級、重機か何かかよ……。カミツキガメのような体からヤツメウナギのような頭が二つ生え、トカゲのような足は関節の部分で三つに分岐している。あんな構造でよく動けるもんだ。魔物っていろいろおかしいよな。


 甲羅の部分にイソギンチャクみたいなものが生えてるけど、たぶんあれも口なんだろう……。尻尾もなんだか蛇っぽいし……。


「俺を認識したのか? こっちに向かってきやがった。好都合だけどな……」


 とりあえずあいつの動きを封じないと。


「アルティメットリッパー!!」


 両手を左右に伸ばすと、その先に三日月型の光の刃が六枚生成される。この辺りも原作通りか。


 狙いは両手足と首!! 縦に刻んだ後で切り落とす!!


「グワァァッ!! ナンダ!! 今ノ攻撃ハ!!」


 二本の頭の付け根に、もうひとつ頭がありやがった。アレが本物の頭か?


 こいつもあの奇妙な喋り方をするって事は、同じ種類の魔物なんだろう。もう少し情報が欲しいけど、これは遊びじゃない。ここで確実に仕留める!!


「スゥクトゥマ・ホールド!!」


 透明な光のリングが目の前に五本発生し、そのうちの一本が相手を拘束する。ライジングブレイクと同様の必殺技発生前の拘束効果だ。


「動ケヌ!! バカナ!! コノ俺ニ破レヌトハ。信ジラレヌ!!」


 俺の目の前には残された四本の光のリング、魔物の拘束が完成した瞬間、それが虹色に輝く!!


 バックルから発生した金色の粒子が全身を包み込んでスパークし、背中からも大量の金色の粒子がまるで翼のような形で噴出す。画面の向こう側で俺が何度も見た光景。今俺がこうやって実践する事になるとはな!!


「必殺!! アルティメェェェェェット・クラァァァァァァァァァッシュ!!」


 魔物の頭からめり込んだ俺の蹴りはそのまま魔物を光の粒子で破壊しながら尻尾の方へ貫通した。貫通する時に黄金の粒子翼が魔物の全身を破壊しつくしたから、後ろを向いた時にはほとんど原型が残っていなかった。


「ァァァ!!」


 声にならない断末魔の悲鳴を残して、身体の中心部分に発生したエネルギーの奔流に飲み込まれ、金色の光と共に魔物は爆散した。爆散した光に混ざって、大量の光の弾が天に昇って行ったけど、やっぱりあれって食われた人の魂なのかもな。


 あの魔物を中心とした直径百メートル程度の範囲が爆発の余波で吹き飛び、綺麗な円形の更地が出来た……。


「これが……、本当のアルティメットクラッシュ……。まじか? この威力」


 ヤバすぎる、少なくとも町中じゃ使えない。というか、変身してなければ俺も無事じゃなかっただろう……。 


【警告、エネルギー残量が僅かです。使用者の(ヴリル)を確認。チャージ完了まで約二十時間必要になります】


「げ!! 今の俺だと、一日一回しか変身できないって事か。しかも今の状態だとアルティメットクラッシュは多分一回で全エネルギーを使うっぽい」


 そういえば、原作でも最初の方は毎回一回しか使ってないしな。


 シリーズにたびたび出てきた武器とか銃タイプのアイテムって、設定的にはおもちゃの販促目的だけじゃないって事か。


【変身を強制解除します】


 スーツが光の粒子に分解された。なるほど、変身解除もこんな感じなんだな。二度目でやっと実感が沸いたというか、変身したんだって気になったよ。


「で、またしても二つの魔石の他に怪しい石みたいなものがあるな。この石っぽい何か、鑑定機能でもわからなかったんだよな~」


 とりあえず周りに他の魔物の気配もないし、町に戻るか……。


 このバイクすごくいいな。一人で移動する時には重宝しそうだ。


飛空石(ひくうせき)神力(プラーナ)エンジン内蔵型魔導車ですと、快適な移動をお約束します】


 確か五千万だったか? 今回の報酬が入ったら真面目に検討してみるかな。


 といっても、これだけ被害が出てる状況だと、報酬なんて期待できないんだよね……。



読んでいただきましてありがとうございます。

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― 新着の感想 ―
[気になる点] 主人公はなぜいきなり敵を倒そうと思うのでしょう? 敵の情報はかなり前から出回っているのに町が犠牲になるまで動かないのに、絶対許さない!絶対殺す!とか言われてもすごく不自然です。
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