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第六十九話 ここって食料品用ですよね? で、向こうが塩用ですか……

連続更新中。

楽しんでいただければ幸いです。




 今回の商人ギルドへの訪問にはヴィルナはついてきていない。一緒に来てもやる事が無いし、ここに俺に危害を加える人物などいないしな。護衛としても暇なのだろう。


 昨日注文されたバタークッキーとタマゴボーロの納品に商人ギルドを訪れた訳だけど、なんか、倉庫の一角に俺が納品する専用のスペースが作られていた。綺麗に掃除されてるし、食料品用に台とか専用の箱まで用意されてる……。


「毎回場所を確保するよりも、この方がいいと思いまして」


「ここって食料品用ですよね? で、向こうが塩用ですか……」


「塩は床置きでもいいいんですが、流石にクッキーなどはあそこに置く訳にもいきませんので」


 以前卸した大量の塩も、前回よりかなり減ってるな……。これだと後二月もたないかもしれないぞ。


 それじゃあ、この台の上にバタークッキーとタマゴボーロを出すかな。


「そのバタークッキーもそうですが、塩の売り上げも予想以上でして、嬉しい悲鳴ですよ」


「王都との往復する馬車の数が増えれば、一回の輸送コストは下がりますね」


「そうですね、今後は定期的に運搬用高速馬車を走らせる事になると思います」


 王都からの輸送費が多少下がった程度では砂糖の値段は下がらないだろうし……。最終的にはやっぱり砂糖の価格を落とす以外に無いんだよな~。


 ただ、砂糖の価格が下がると菓子の値段も下がっていくだろうから、ここの商人ギルドに入るダメージもある程度考えないといけない。


「これで各四百ですね。この量がこの町だけで捌けるんですか?」


「マッアサイア方面でも販売しようと思いまして。試験的に五十箱しか持って行きませんけど」


「あそこも金持ち多そうですしね」


 この国最大の貿易港だしな。


 あそこ押さえてるのはかなりでかいぞ。ほんと、なんでここの男爵に任せてるのかわからない位だぜ。


「他の国の船乗りも多いですし、船長クラスの船乗りはかなり稼いでるので多少値が張っても買う事は多いです」


「別の場所で売れば儲かるかもしれませんしね」


「そこですね。ただ、そういった買取はかなりの量になる事もありますので……」


 希少価値を付けて売る場合でも、そこで大量に売らなきゃいいだけだしな。


「他の国には似た料理がある可能性もありますしね。砂糖が安い場合は自分で作るかもしれませんよ」


「その可能性もありましたか……。確かに一番のネックは砂糖ですからな」


 砂糖生産国が安く売り始めれば面白い事になるんだけどね。俺もいろいろ動きやすくなる。


「似た料理があれば作れるでしょうけど、アレと同じ水準で作るのは割と骨が折れると思いますし、しばらくは大丈夫だと思いますよ」


「そうですな。あのバタークッキーはなぜか長持ちしますし」


 普通に作ったらひと月ももたずに腐るだろうしな。安全に食べられる保存料とか技術確立して同じレベルに達するには、最低でもあと百年くらいかかると思うぞ。


「今日お持ちした商品のなかにも長期保存可能な物がありますよ。値段が高額ですし、長持ちする商品の方がいいでしょう」


「そこまで考えてくださると、こちらとしても助かります」


「日持ちしない商品でしたら本当にたくさんあるんですけどね。こればかりは仕方がないです」


 冷蔵手段があればアイスとかね。製法だけひろめるって手もあるけど、まずは牛の乳の普及が先だな。


「お支払いの前に新しい商品を見せていただいてよろしいですか? 新しい商品の購入額と一緒にまとめてお支払いする可能性もありますので」 


「良いですよ」


「いつもの部屋になりますが……」


 案内されたのはいつものギルマス案件部屋。なんだけど、既にギルマスのダニエラはいるし、パルミラもいるんだけど……。


「新しい商品の試食と聞いていますので」


「儂も確認しておいた方がいいじゃろうと思うてな」


「……いつもすみません」


「試食用も結構な数を持ってきていますので、大丈夫ですよ」


 ファクトリーサービス製ってだけで、どんな量になるか分かったもんじゃないしな……。実は正確な在庫の量は俺も分かってない。正直あのプラント機能とファクトリーサービスのリンク機能を甘く見ていた俺の誤算なんだが……。


「まずは焼き菓子のマドレーヌですね。これも個梱包にしていますが、冷所保存で三ヶ月くらいは大丈夫です。紅茶も用意してみました」


「これは……。紅茶も素晴らしいですが、このお菓子の味を引き立てますね」


「そうじゃな。茶菓子にしてもよいし、晩餐会などのデザートの一つとして並べてもいいじゃろう」


「いつも通り箱も素晴らしいですな。さぞかしいい腕の職人を知っておられるのでしょうね」


 ファクトリーサービスは化け物だからな。加工技術が確実に元の世界より数段上っておかしさだ。木箱なのに物凄く丈夫で軽くて薄いからな、正直箱だけでも売り物になりそうだよ。


【ファクトリーサービスで箱を生産しますか? どんな形でも対応いたします】


 もうしてるよね? おかしいレベルでしてるよね? それなのに箱の材料の在庫が山ほどあるよね? すでに中身入りの状態で在庫が各数百万超えてるよね? というか、プラントに関しては今度キッチリ説明してもらうからな。


「箱も何かで再利用される方がいるかもしれませんね。もう一つの商品はキャラメルです」


「変わった飴じゃな。確かに以前卸して貰った飴とは別物じゃ」


「これは凄いですよ……。タマゴボーロ同様に貴族の子供に喜ばれると思います」


 タマゴボーロは子供のおやつだしな……。ただキャラメルは食べる時にいろいろ気を付けないといけない。


「子供がキャラメルを丸ごと呑み込むとのどに詰まらせたりしまうので、そのあたりも注意していただければ……」


「流石にそれは自己責任ですよ。貴族の方もそれで文句を言ってくる事は無いでしょう」


「子供が飲み込んでいいか悪いかの判断もできませんといっておるようなものじゃからな、家名の為にも口外などせんじゃろうて」


 割と厳しい世界だな此処。


 刃物が普通に売られてて魔法がある世界だと、そのあたりも教育されてるんだろうな。


「そんな事よりも問題は値段ですね。マドレーヌの方はバタークッキーと同じひと箱千シェルでいいと思いますが、キャラメルの方は難しいですよ」


「そうじゃな。ミケルが悩むのも無理はない。こんな奇妙な菓子は初めてじゃ」


「タマゴボーロの倍。四百シェルでどうでしょうか?」


「そうですね。その価格でしたら十分に利益が出ます。それでお願いできますか?」


 飴の価格から考えてもこれだとかなり安いからな。飴はひとつ五十シェル、ニ十個セットだと千シェルだ。


 元の世界よりこっちは砂糖の価格が高いから、菓子を作る為の砂糖使用量から考えたらバタークッキーなんかは安くなるんだよね。物珍しさもあって飴と同じ価格だけど。キャラメルの値段もあの辺りが限度だろう。


「ではその値段で……。後は量ですね。どの位にしますか?」


「今の状況じゃと千ずつでも問題は無いのじゃが……」


「問題は倉庫ですね。先ほどのバタークッキーなどもありますし、流石にそれだけ一度になると……」


「それぞれの箱が百ずつ入った大型の箱でも出しましょうか? それですと床に直置きできますし」


 小型のコンテナみたいなもんだな。そろそろこんな問題が出るだろうとファクトリーサービスの方で用意させてたし。


「おお、そんなものまで……。では倉庫にお願いできますか?」


「はい。では行きますか」


 そこまで重くないけど、縦に積むのは二段までにして合計ニ十箱。


 この世界の人間って結構力強いし、このくらいだったら問題ないだろうな。


「この箱は利用価値が高そうです。これも頂いてよろしいんですか?」


「良いですよ。この箱はお菓子類もそうですが、塩などを運ぶのにもいいかもしれませんね」


「これはいい物じゃな。馬車で運ぶのにも丁度良い。これは今後役に立つじゃろう」


 取っ手とかあるし、ロープとかで固定しやすいようにいろいろ細工してあるしな。


「お支払いですね。バタークッキーと合わせて百八十八万シェルですが、金貨十八枚と大銀貨八十枚でよろしいですか?」


「はい問題ありません。金貨十八枚と大銀貨八十枚、確かに受け取りました」


「毎度の事ながらすさまじい額じゃな。お主はどこの商会にも属しておらぬが、普通は商会でもこれだけ稼いでおれば大商会なのじゃぞ?」


「いつか旗揚げはしようと思っていますけど、色々と事前準備も必要ですし……」


「まだ準備不足というつもりか? 慎重じゃな、お主が商会を立ち上げれば、雇ってくれと言い出す商人が幾らでも出てくるじゃろうて」


 俺がいなくても稼げる状況。つまり、この世界で生み出せる物だけで維持できるようにしていなければだめだ。


 現状だと商会を立ち上げた後で俺が抜けたら、その時点で詰んじまうしな。俺抜きでも商会を維持できる状態にしてないといけない。


「人を雇う時には慎重に選びますよ。それでは、次回までにまたいろいろ用意しておきます」


 食料品だけじゃなくて今回のコンテナみたいな物でもいいかもしれないな。


 後は銀細工とか金細工。


 そろそろこの世界に金とか銀を還元しなきゃいけないだろうしね。



読んでいただきましてありがとうございます。

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