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第五十八話 パンも自分で焼けばいいんだろうけど、生地から作ると割と手間なんだよな~

連続更新中。今回は料理回です。

楽しんでいただければ幸いです




 本日の晩御飯のメニュー(予定)。今から作るんだから、まだ予定の域を出ないよな。冷蔵庫の中を漁ってあり物で出来そうな料理をピックアップじゃないから、材料による制限自体は無いんだけどね。


 俺の好みを優先して白米……、ライスやチャーハンばかりだとヴィルナに悪いので、晩御飯は寿買(じゅかい)でバケットを用意する事にした。俺はなんとなくパンだとご飯って感じがしないけども、それはヴィルナにライスを強要する理由にはならないし。


「パンも自分で焼けばいいんだろうけど、生地から作ると割と手間なんだよな~。その分美味しいのは確かなんだけど。今度焼いてみるかな?」


【焼き立てのパンをいつでもお届け。調合機能は食パンから菓子パンまであらゆるパンに対応しています】


 まあ小麦もドライイーストなんかも全部寿買(じゅかい)で売ってるから、ボタン一つでできるよね……。う~ん、市販のパンを買うより安くできそうだし、焼き立ての方がヴィルナが喜ぶだろうな……。


「バケットを作成。時間は余るだろうし、胡桃パンとバターロールも追加しておくかな。アイテムボックスに保存してたらいつでも焼き立てだし、数は各三十ずつくらい」


【全ての作業完了時間は十分後です。アイテムボックス内に保存しますので焼き立てをお召し上がりください】


 ホントに便利な機能だよな……。


「これで調合は使えないし、今日は簡単に済ませるかな?」


【調合機能はファクトリーサービスと同数、現在十フォルダ分まで同時製作可能です】


 ちくしょう、俺はいつから調合サービスで作成できる物がひとつと勘違いしていた? というか、十も同時作成できるのか? 確かにアイテムボックス内に新しいフォルダが三つ出来てるし全部同時に緑色のリングが動いてるな、……今のパンで三つ同時進行してる訳か。


 ファクトリーサービス加入時からずいぶんとこの機能を遊ばせたって訳だな。遊ばせてるといえば、ファクトリーサービスもまだ本格稼働させてないけど。こっちの方は本格稼働させると怖いしな~。


「まあいい、今日は洋風メニューで統一だ。鶏のモモ肉を皮がパリッパリになるようにソテーして、もう一品のメインデッシュは牛テールの煮込みとかいいかもしれない」


【牛テールの煮込みは時間的に厳しいと思われます】


 まあ、そうなんだけどね。指摘ありがとう。


 今から夕食の時間は伸ばせて二時間ほど。下拵えの出来てない状態で今から牛テールの煮込みを作り始めても時間が確実に足りない。せめて血抜きが済んでる牛テールがあれば圧力鍋を使ってできるんだけど……。それでもギリギリ? 普通に作ると五時間から六時間くらいはかかるメニューだし……。


【調合をご利用いただきますと、牛テールの煮込みは三十分で完成します】


 そうだろうね。でも……メインディッシュを調合頼りってのはな……。アレは便利な電子レンジとでも思えばいい? 俺は鶏モモ肉のソテーの他に、時間のかからない他のメニューを作ればいいか。


「牛テールの煮込みを作成。量は寸胴一つ分でいいかな? ん? というかこれビーフシチューの肉が牛テールに変わっただけなのか? いや、最初に色々と選べるみたいだな……」


 ビーフシチュー風の物や、牛テール肉がメインでほぼ汁が残らない状態の物もある。中に入れる具材とかも色々指定ができるな……、やっぱりかなりヤバい機能だぞ、これ。


 量も最低小さな鍋で四人前くらいから、割と大き目の寸胴ひとつで約二十リットル、牛テールの煮込みで約六十人分でも楽勝で作れる。作成量もどの鍋を何個という指定もできるし、給食用とか企業用の馬鹿でかい数百リットルの大鍋とかまである。今回は寸胴サイズでいいかな?


「ビーフシチュー風と、テール肉メインの両方作っておくか。作成量はそれぞれ寸胴一つ分」


 これだけあれば、ヴィルナが何度かおかわりしても大丈夫だろう。むしろ作り過ぎな気はするけど……。いやいや、これは作るのに時間が掛かるから、一度に大量に作っておいた方がいいに決まってる。店の仕込みかよとか思わないぞ。


【完成は三十分後になります】


 流石に時間通りに作るんだな。これでメインディッシュは揃う。今回はビーフシチュー風の方を出すかな。


 さて、ここで疑問があるんだが、ヴィルナは肉はよく食べるけど野菜はどうなんだ? 今まで野菜は付け合わせレベルでしか殆ど出してないし、他に出したといえばマッシュポテトやビーフシチューなんかに入ってた野菜だけだ。


 一回レタスなんかのサラダを出してみる? 刻みキャベツのコールスローとかもいいかもしれないけど。ヴィルナの正体が分からない以上、こういったものを食べるかどうかが分かんないんだよな~。


「ちょっと日和って温野菜サラダに決定。彩を考えて野菜はブロッコリーとホワイトアスパラ、それと小型の新じゃがと人参……。コンソメとバターで味付けして、上にハーブソルトをかけて出すかな……」


 売り物になりそうもないピンポン玉以下の大きさの新じゃががデカい袋一杯に詰めて百円で売られてる……。今の季節で新じゃがってのも凄いけども気にしない。どの世界産なのかすら不明だしな。


 とりあえず、野菜に関しては今回のこれで反応を見るしかないかな? 特定の野菜だけダメなケースも考えられるけど……。


 今の所、ニンニクも玉ねぎも人参もジャガイモもピーマンも大丈夫だったから、ほとんどの野菜は食べてくれると思うんだよな~。形が分からない状態の料理が多かったけどね。さて、料理も揃ったからテーブルに並べてと……。


「ヴィルナ、晩御飯が出来たぞ~」


「待ってましたなのじゃ!!」


「今日のメインは牛テールの煮込みと鶏もも肉のソテー。副菜の温野菜のサラダと、バゲットをいろんな形で出してみた。そこの小さいのはバターロールだよ」


 バゲットはそのまま、三分の一に切ったもの、一センチくらいの厚さに切り揃えた物を二本ずつ用意してある。


 料理と一緒に食べるんだったら、切り揃えたバゲットが一番いいんだけどね。


「これは何なのじゃ? 以前のビーフシチューとやらによく似ておるのじゃが、肉は変わっておるの」


「それは牛テール、牛の尻尾だな」


「尻尾じゃと? なるほど、この骨は確かに尻尾の骨に見えるのじゃが……」


 あまり食べない部分だろうしな。あれだけ大きいんだし、剣猪(ソードボア)の尻尾でも近い物が出来そうな気はするけどね。


「んっ!! お……美味しいのじゃ!! この煮込みの肉は柔らかくて旨いのじゃ、スープのとろみが舌に絡まって絶品なのもたまらんのじゃぞ。こっちの鳥は味付けはもちろんなのじゃが、皮までパリッパリで旨いのじゃ」


「ありがとう。バケットにも合うと思ってたけど、こういうメニューも割といいな」


 牛テールの煮込みは肉がホロホロに蕩けて、滲み込んだ濃厚なデミグラスソースの旨味が口一杯広がる。前回のビーフシチューもおいしかったけど、俺としてはこっちの方が好みだ。


 小麦の香りが食欲をそそる焼き立てのパンもおいしい……、調合機能恐るべし。というか、この機能があれば寿買(じゅかい)でパンが売れなくなると思うんだけどどうなんだろう? 他にもいろいろ買ってるから些細な問題なのか?


「おおっ、パンが焼き立てなのじゃ!! このバターロールとやらもおいしいのじゃ!! ソウマ、この煮込みをおかわりしたいのじゃが」


「大丈夫。たくさん作ったからどんどん食べてくれ」


「流石はソウマなのじゃ!! 最近はこのくらいの食事だけでも満足できそうなのじゃが、ソウマの作る料理はおいしすぎてついつい食べてしまうのじゃ」


 調合機能で作ったものも多いから複雑な気分だな……。今度時間を作って一から作るしかないか。


 ん? このくらいの食事だけで満足? 以前の大食いが収まった何かがある? 単にあの頃は栄養不足だった可能性もあるけどね。


「こっちのサラダはどうだ? 食べられるかな?」


「うむ。食べやすく茹でておるし、味もしっかりついておるのじゃ。この白い野菜は初めて見るの」


「ホワイトアスパラガスか。こっちの世界にあるとは知らないけどね。このジャガイモとか他の野菜はあるのか?」


「このニンジンという野菜は似た物があるのじゃ。じゃが芋という野菜は北の方でも作られているという話は聞いておるぞ」


 とりあえずこの辺りの野菜は大丈夫と……。というか、普通に食べてくれるみたいだね。これでほかの野菜も色々使える。


 北の方っていう事は西側は穀倉地帯があるからじゃが芋とかに頼らなくてもすんでる訳か。じゃが芋って名称自体は俺の脳内で変換されてるだけで、本当は違う名前の芋かもしれないけどな。


 それに今更この機能をオフにされても困るけどね。あの変な文字をいまさら覚えるのは苦痛だし……。


「最後にデザートだな。カスタードプリンとチョコレートケーキだ」


「こ……これは見た事も無いデザートなのじゃ」


「プリンは牛乳を使うからこの辺りだと見ないと思うぞ。チョコレートケーキの方もカカオが無いと作れないしな」


 この世界に異世界人がいたとしても、寿買(じゅかい)と同じような方法で別世界から持ち込めないと作れないものも多いからね。


 ということは、今までこの世界に来た異世界人で、俺みたいに寿買(じゅかい)を使えた人はいないって事なのかな? 植物とかは種とかを偶然持ってれば何とかなるだろうし。


「このプリンは蕩ける様な甘さと食感なのじゃ……。こっちのチョコレートケーキとやらはねっとりとした濃厚な甘みと、僅かな苦みがまた堪らないのじゃ♪」


「プリンはやっぱり美味しいよね。作り方は簡単なんだけど、この辺りは砂糖が高いのと乳製品があまり出回ってないのが問題だな」


「そうじゃな。この辺りでもヒツジやヤギを飼い始めれば違うのじゃろが」


 この辺りで酪農を始めるのが一番いいんだけど、育成方法も分からないのにいきなり酪農を始めるのは厳しそうだしな。北の方の町で羊毛とか羊皮紙が売られているんだったら、羊の乳を使ったチーズとかが売られててもいい筈なんだけどね。


 元の世界でもチーズは人気の食材だった、保存食としても優秀だし栄養価もたかい。この世界で売り出せば、相当人気が出ると思うんだよな。


【チーズは各種、現在プラントで制作中です。あと一週間ほどで出荷が可能になります】


 いや、いろいろおかしいだろ? プラントを制作して稼働させたのが数日前。それで、何であと一週間でチーズができるんだよ。熟成に時間のかかるチーズもあるだろう?


【熟成が必要なチーズはもう少し時間が必要です】


 なるほど、モッツァレラチーズみたいに作ったら即食べれるフレッシュタイプのチーズか。でも作りたてのチーズが手に入るのは大きいな。今までの事を考えると、チーズの出来も期待できそうだし。


「乳製品に関しては今後に期待だな。そのうち商人ギルドにでも話を持ち込んでみるよ」


「おお、そうすればこの辺りでもこのプリンが食べられるようになるじゃろうか?」


「牛乳なんかが手に入るようになっても、砂糖や鶏卵が問題だろうね。今のままだと仮に出来たとしても高すぎて商売にはならないだろうし」


「それは残念じゃな。ソウマ、こっちのプリン方がもう少しないかの?」


「まだあるよ。はい二つ追加するね」


「おおおっ、二つもいいのか? 流石はソウマなのじゃ!!」


 なお、カスタードプリンは調合ではなくて俺が作ったのだが、焼き上がるのがギリギリだった。魔道調理器は便利なんだけど俺がアレに慣れてないのが原因だよな。


 割と豪華な晩飯が済んだけど、そろそろ少しずつ家庭料理系に移行してもいいかもしれない。こういった外食系料理は毎日食べ続けるときついしな。でもさすがに完全日本食を混ぜるのは危険な気がするんだよな。納豆とか塩辛とか……。


 野菜をもう少し試したら、肉野菜炒めとか簡単なメニューから混ぜていこうかな……。




読んでいただきましてありがとうございます。

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[一言] こっちのプリン方がもう少しないかの? →こっちのプリンがもう少し無いかの?
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