第五十七話 確かこの町には専用の魔道具を使うクリーニング屋があっただろ?
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楽しんでいただければ幸いです。
本日、修繕作業がすべて滞りなく終わった。これでようやく借家に引っ越すことができたぜ。修繕作業よりも、その後の家具やインテリアの配置の方が大忙しだったよ。よく頑張ったぞ俺、大したもんだぞ俺、やっぱりヴィルナが女性って事を痛感させられた瞬間だったな、あれは。まさかあそこまでインテリアに凝るとは思わなかった。
二階の部屋は一つをヴィルナ用の私室、そしてもうひとつを俺専用の私室にした。ふっふっふ、これで暇な時は自室で特撮物を見放題だし、今までアイテムボックスの肥やしになってた特撮系アイテムの開封ができるぜ。
部屋の景観の為に観葉植物を置こうと思ったんだけど、元の世界の植物を持ち込んでいいか迷ったんだよな~。
「その植物もこの世界に受け入れられれば芽吹くじゃろう。それを言い出せばわらわらが捨てた桃の種の方が問題であろう」
「そうだね。あの桃の種、芽が出てくる事は無いと思うんだけどな……。出てたら数年後にえらい事になりそうな気はする」
肥料不足で完全な状態で実がならなくても、こっちの森桃よりはるかに甘いからな。誰かがその実に気が付いたら森桃なんて目じゃない位の値が付きそうだ。
もっとも、それまでに甘味が今よりはるかに安価になってれば話が違うだろうけど。
……こっちの世界で桃が生る分には問題ないか。元の世界に売りに出す訳じゃないし、この世界にいる人間で寿買で買い物をするのも俺くらいだろうしな……。向こうの世界には迷惑かけないだろうし、売り上げは変わらないだろう。こっちの世界の奴らは大混乱の可能性もあるけどな。
「家事の分担じゃが、私室はそれぞれが掃除するとして、わらわが居間と客間の掃除、ソウマがキッチンの掃除と料理でよいのか? 今まで白うさぎ亭に任せておった洗濯はどうするのじゃ?」
「俺の分はアイテムボックスにほぼ無限に在庫があるし、洗濯に出した事は無いぞ。確かこの町には専用の魔道具を使うクリーニング屋があっただろ? あそこに出すとか?」
無限に在庫があるんじゃなくて、修復機能でクリーニングしてただけなんだよな。
買い物してるって言えないから、こう言うしかないんだけど……。
「……ああいった店は下着は別なのじゃ」
そうだね。流石に下着をクリーニングとか元の世界でも聞いた事も無かったよ。白うさぎ亭は何故か受け付けてくれてたみたいだけど。
あれの時に毎回違う下着だった気がするし、結構な数を持ってるんだろうけど。今までどうやって洗濯してたんだ? 冒険者の報酬を半分渡した後に纏めて白うさぎ亭にお願いしてたのか?
「今まではどうしてたんだ?」
「わらわがたまにどこかに行っておった時があるじゃろう。あの時に洗っておったのじゃ」
「あったな……。四六時中一緒にいる訳じゃないし、その時にしてたのか」
流石に俺とヴィルナも朝から晩までずっと一緒って訳じゃないからな。ヴィルナはベッドで寝てる事も多いし、冒険者での報酬を渡してからはひとりで何処かに行くこともあるみたいだ。町に出てる時は主に買い食いしてるみたいだけど、最近は舌が肥えたから露店の料理じゃ満足できなくなったみたいだな。戻ってきてクッキーをねだる事が増えたしね。
まさか、いなくなった時に洗濯もしてたとは思いもしなかった。色々反省!!
「外に下水用の配管もあるし、下着専用の洗濯機か何か置くか? 小さい奴だったら邪魔にならないし」
「いや、ソウマの下着が無いのであれば構わんのじゃ。洗濯機とはなんじゃ?」
「洗濯機ってのはだな……、ん?」
【お住いの世界にぴったりの洗濯機をご紹介!! 水道&電源不要、排水無用、乾燥まで一括で行える小型ドラム式洗濯機特集!!】
……えっと、見た目は小型のドラム型洗濯機だな。魔滅晶を組み込んだ魔力電池を搭載で充電不要。異世界の水生成魔石で水道不要。廃水浄化用ユニット搭載で排水問題も解決。繊維にやさしい魔力乾燥システムで高級衣類も安心乾燥。
これ、俺の元いた世界の洗濯機じゃないよね? 別の異世界にも洗濯機があるんだ……。いや~、みんな考える事はおんなじだな、って!! やっぱりこいつ、武器だけじゃなくて他の商品もいろんな世界から良さそうな物を集めて売ってるのか。今までもいろいろおかしいと思ってたんだよな。……異世界の特撮番組配信してた時点で今更かな?
値段は五万円か……。縦横一メートルくらいで奥行きも五十センチくらいだし、排水が無いんだったらこれ買ってヴィルナの部屋に置くか? 下着の洗濯なんて俺や他人に見られたくないだろうし。よし、購入!!
「ヴィルナ、これが洗濯機だけど、ヴィルナの部屋に置くか? 少し部屋が狭くなるだろうけど、邪魔だったらアイテムボックスにしまっててもいいし。このくらいの大きさだったらヴィルナのアイテムボックスにも入るよな?」
「このくらいの大きさじゃと問題は無いの。で、どうすればいいのじゃ?」
「説明書を読んでみたけど、洗濯物を入れてここのボタンを押すだけ。途中で止めたりできないけど、最初にいろいろ調べてから動き出すから問題ないらしい。洗濯物に紙が混ざってたり、異物があると警告音が鳴るっぽい」
めちゃめちゃ優秀だ。というか、これ元の世界に持って帰れたらこのセンサー部分の特許だけでも死ぬまで困らない気はする。洗濯物の中から異物だけ確実に見つけるセンサーってどんなレベルだよ?
「なるほどなのじゃ。うむ、ではアイテムボックスに入れて持って行くのじゃ。このくらいであれば部屋の隅に置いておけば邪魔にならんじゃろう」
「掃除の方も何か探しておくよ。もしかしたらまだ何かあるかもしれないし」
「任せたのじゃ」
【掃除機をお探しですか? 人型から円盤型まで各種様々な自動掃除機を取り揃えております】
……人型却下と。あれか? 床を掃除するロボットというか自動掃除機? そういえばもうアレも一般的になってたよな……。
【飛空石製の小型魔導掃除機。あらゆる環境に対応!! 天井から床まであらゆる場所を、特殊なユニットで隅々まで綺麗に清掃。超小型量子コンピューターとバイオコンピューター内蔵。排気が気にならない空気清浄機能搭載】
やっぱりとんでも掃除機か。こいつの場合はマジで空飛ぶみたいだが。
前々からおかしいと思ってたんだよな。最近使ってないけど最初の頃に買ったイチゴをペーストにしたあのミキサーも、俺の元いた世界の物より高性能だったし。
【当サイトは様々な世界からお勧め商品をお届けしています】
お・せ・え・よ!! いつもの反応速度から考えたらめっちゃ遅いよ!! というか、今更説明する事か? あの武器とかはそうだと思ってたけど、まさか他の物……。やっぱりいろんな旬の果物とかがあるのはその為か?
【旬の食材を最高の状態でいつでもお届けしております。入手困難な大王渡り蟹もいつでも注文いただけます】
なんだよ? その大王渡り蟹って……。えっと、お、大き目のガザミか。あれもおいしいんだよな~って、体長二メートル? 二メートルの蟹? あ、わかりやすくタバコの箱が蟹の横に置いてある~。って、でかすぎだっつーの!! 何人で食うんだよ、このサイズだと十人いてもきついぞ?
異世界の食材まであるのは分かった。今後買う時には気を付けないとな。頼んだ鶏のサイズとか……。下手するとさっきの蟹みたいな海老とか魚とかありそうだし。
【女王鮪や紅龍海老もご用意できます】
やっぱりあるのか。十メートルのマグロと、五メートルの海老……。海老の方は名前に紅龍ってついてるもんな。って、そんなサイズの海老さばけねえよ!! でも旨そうではあるよな。女王鮪の方はそのうち買ってみる?
ん? ヴィルナが階段を駆け下りてきた。何かあったのか?
「ソウマ!! あの洗濯機という物は最高なのじゃ!! ボタン一つ押すだけで後は乾燥までしてくれるというておったぞ」
「洗濯機はそういう物だしな……」
「今は良いのじゃが、冬になると流石につらいのじゃ。わらわは寒さにはあまり強くないのでな」
「寒いのが苦手なのか。寒くなってきたら色々暖房器具とか用意するよ」
【最新鋭暖房器具をご用意できます!!】
うん。その時にはホントよろしくな。
まったく頼りになるけど、使いかた次第でとんでもない事になりそうな力だよな……。これって。
「ソウマは頼りになるのじゃ……。わらわは本当に幸運じゃな」
「ん? まあ頼りにしてくれると嬉しいよ」
後半何言ったのかは聞こえなかったけどね。
さて、そろそろヴィルナも楽しみにしてる晩飯の用意を始めるかな。
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