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第五十一話 色々ありましてね。これで色々とやり易くなったんじゃないかと思いますよ

連続投稿中。

楽しんでいただければ幸いです。


 白イルカ亭に戻った俺たちを待っていたのは意外な人物というか、グレートアーク商会のスティーブンとリリアーナが入り口で待ち構えていた。大商会の頭だし忙しい身だろうに……。


 丁度ここに新しい塩田の話でも進めに来てたのか? あの塩田を建設する為には一度現地に来る必要があるだろうしね。


「奇遇だな!! まさかお前がこの町に来てるとは驚いたぞ。しかも、あんな真似をしでかしてくれるとはな」


「色々ありましてね。これで色々とやり易くなったんじゃないかと思いますよ」


「色々あり過ぎだ。飯を奢るから話いいか?」


 近いうちに接触してくると思ってたけど、まさか討伐当日に来るとはね……。


 ロザリンダからの情報がどんなルートで伝わったかは興味があるな。


「私はいいですけど……」


「わらわも構わぬぞ」


「問題ねぇみたいだな。この近くだし丁度いいぞ」


 で、案内されたのは会員専用の食堂……、というか、この服装だと追い返されそうな雰囲気を醸し出す超高級そうなレストランなんだけど……。


 こんな店あったんだな。知ってても入ろうなんて思わないけどな。案内されたのはそこの更に奥にある豪華な個室。商人ギルドのギルマス部屋みたいな場所だ。


「ここなら誰にも聞かれやしねぇ。で、なんでここにいるのか聞いてもいいか?」


「ロザリンダから聞いてると思いますが、塩食い(ソルトイーター)討伐の為ですよ。人を塩に変えて食い殺すような魔物を放置しておけないでしょう?」


「それをお前がやる意味が分からねぇんだが。お前は商人として成功してるだろう? なぜ命を危険に晒してまで塩食い(ソルトイーター)の討伐に挑んだ? 百万シェル程度で懸けるほど安い命じゃねぇだろ?」


 わかるよ。すっごく分かる。かかってるのは所詮他人の命。自分の命やヴィルナの命を危険に晒してまで挑む事じゃない。


 でも、そこで俺がやらなけりゃ、助けられたかもしれない命が失われるだろ? 奴を倒す力が無いんだったらそれでも仕方ないけど、力を手にしたらやるしかねえんだよ!!


「確かに俺にとっても百万シェルはもう手が届かない金じゃありません。実際、数百万シェルもってるわけですし……。でも、それとこれとは話が別なんです、この俺に奴を……、塩食い(ソルトイーター)を倒す力があるのにそのまま放置するのは、奴に襲われる人を見殺しにするも同然の行為ですし、そんな事は我慢できないんですよ」


「力か……、俺には奴を倒す力が無い。力を持つ奴に心当たりはあるが、奴をここに呼び寄せる事もしねぇ。最悪、この町が奴に滅ぼされる可能性も計算に入れながら、その最後の時まで稼げるだけ稼ごうっていうのが俺の考えだった」


「それがふつうじゃろう。他人の為に自分の命をかけるなど狂気の沙汰じゃ」


「世の中には俺と同じ考えの人間も多くいるさ。例えば、十三年前にこんな武器でこの町に出た魔物を倒した人とかね」


 さっき買った飾りをひとつアイテムボックスから取り出してテーブルの上に置いた。()()がなんなのか、この人は知っているはずだ。


「奴の事を知っているのか? 確かにあいつは塩食い(ソルトイーター)位倒せるだろうが……」


「その人の情報も欲しいんですが、名前とか知っていませんか?」


「奴はライガとかユウジって名乗ってたな。姓があるから家名なのかって聞いたら、名字くらい誰でもあるだろって言ってたか。変わった奴だったぜ」


 ……雷牙(ライガ)勇慈(ユウジ)。初代ライジングブレイブの主人公の名前……。どういうことだ? 雷牙(ライガ)勇慈(ユウジ)の名前を使ってる第三者? でも、あの武器を使ってるって事は……。


「その人、ライジングブレイブって名乗ってなかったですか?」


「魔物と戦う時はそう名乗ってたな。こう、全身を覆う鎧というか不思議な姿で……な」


「っ!!」


 そいつ、ライジングブレイブに変身できるのか!!


 そりゃこの世界であの力があればどんな魔物でも倒せるだろうよ。そういえば、以前そいつは何かを探してるって聞いたな。


「その人、何かを探してるって聞いたんですけど、それが何か知りませんか?」


「あ~、何だったかな? もう十三年前の事だしな」


「以前、強大な力を持つ魔物の王を探していると聞きました。彼は黒龍種といっていますね」


「こ…黒龍種アスタロト?」


「思い出した!! そう、それだ!! なんだ、知ってたのか?」


 ありえねえ。ありえねえんだよ!! 黒龍種アスタロトは()()の劇場版に出たラスボスだぞ!! 十三年前に何で存在してるんだよ!! 大体ライジングブレイブシリーズだって始まってまだ十年だ。十三年前に初代ライジングブレイブの雷牙(ライガ)勇慈(ユウジ)がこの世界にいるなんておかしいだろ?


「十……三年前なんですよね? その時から黒龍種アスタロトをさがしてる? というかその時から黒龍種アスタロトがこの世界に存在していた? 馬鹿な……、ありえない」


 黒龍種アスタロトは邪悪な竜種を生み出す力を持つ。十年前に出現した竜。そして少し前に西の国に出現した魔物もそうだとすると……。


「奴がそう言っていただけだからな、実際に見たやつはいないぜ。そんなにあぶねえ魔物なのか?」


「本当に存在するのでしたら、世界を滅ぼしてお釣りがくる魔物ですよ。いえ、十三年前に存在している場合、もう世界が滅んでいてもおかしくない程です」


「それほどの魔物なのか?」


「今の俺なんかじゃ歯が立たないどころか、もし仮にその人がいて俺が手助けしようとしても、何の役にも立たないレベルの魔物です。もし本当に存在するのでしたらですけどね」


 状況的にはこの世界に黒龍種アスタロトが存在する可能性は高い。そして、雷牙(ライガ)勇慈(ユウジ)が本物の可能性も……。役ではなく、存在として本物のライジングブレイブがね。


 でも、黒龍種アスタロト相手だと初代ライジングブレイブの力だけじゃ倒せない。もう何人かこの世界に存在してくれたらいいんだけど……。


塩食い(ソルトイーター)を倒せた奴が役に立たないレベルの魔物か……。出会わねえことを祈るだけだな」


「そうじゃな。しかし、目の前におらぬ魔物に怯えても仕方が無いのじゃ」


「そういうこった。で、お前の活躍で塩田が取り戻せた訳なんだが……」


「以前塩田で働いていた人がいない状況だと、塩田に海水を撒く技術はすぐに会得できないでしょう。この機会にすべての塩田を流下式塩田に切り替えれば、塩の生産力も上がって一石二鳥ですよ」


「そこまで計算しての討伐じゃないんだろうが、ホントに恐ろしいほど見通せる奴だよ。此処で塩の生産力があがれば、ここの塩を他の貴族領でも売り出せる。供給が増えりゃ多少は値が下がるだろうが、トータルではかなりの儲けが出る筈だ」


 濃い塩の味に慣れたら、薄味には戻せないだろうしな。


 この世界は肉体労働も多いし、潜在的な塩の需要はかなり大きいだろう。


「ここで塩が生産できれば、ナイトメアゴートは放置できますからね。あいつまで倒そうとは思ってないですよ」


「そいつを聞いて安心した。こんな真似はこれっきりにして欲しいもんだぜ」


「俺が確実に倒せる力を手に入れて、その上であのナイトメアゴートが人里に姿を現した時は別ですけどね」


「そんな時でも見て見ぬふりをしてほしいものだが、お前にそれを言うのは無理だろうな。まったく、あいつといい口を開けば人助けだの魔物退治だのと……」


 ああ、ライジングブレイブ……、雷牙(ライガ)だったらそういうだろうな。この人雷牙(ライガ)と仲がいいのか? 作中の描写だと割と変人なんだけどな。


「今のままだと無理ですよ。そんな力も都合よく手に入るとは限りませんし」


「いや。お前は絶対にその力に手が届くだろうぜ。何かを成す奴ってのはな、人知を超えた何かに愛されてるもんさ」


 流石にあの力……、ライジングブレイブの力は流石に手に入らないだろう。大体変身用のブレスユニットやバックルの予備がこの世界に流れてきてるとは限らないしな。


「そうだ。お前は今後俺との会話で敬語なんて必要ねぇ。対等で行こうぜ」


「スティーブン様!!」


「いいんだリリ。今コイツと対等になってなけりゃいけねえんだ。こいつは一年後にゃ俺の手の届かねぇ場所まで駆けあがってるだろうよ。その時になって昔のよしみでなんて顔で近づけるか? ダサすぎるぜ」


「それでいいんだったら、こちらは問題ない。これからもよろしく」


 他にも頼みたいことはあるけど、今は塩の件だけで良しとするか。あまり一気に話を進めると、幾らこの人でもどこかで無理が来る気もするし。


「それじゃあ、この店自慢の料理を楽しもうじゃないか」


「楽しみなのじゃ」


 出てきたのはイタリア料理っぽい何かだった。砂糖やオリーブオイルだけじゃなくて、ヨーグルトなんかの乳製品まであったんだけど……。


 俺が料理に使われている物を当てたら、めちゃめちゃ驚いてたな……。というか、この料理考えた奴、絶対異世界人だろ?


 ヴィルナも喜んでたし、今度イタリア料理も作ってみるかな?





読んでいただきましてありがとうございます。

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― 新着の感想 ―
[一言] 何故に元の世界の話とイコールにしてるのか理解不能だがな
2021/05/23 22:24 退会済み
管理
[一言] 主人公が青臭過ぎてダメだった ここで購読終了します
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