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第四十一話 人以外の種族、エルフとかドワーフはいないのか?

連続投稿中。

楽しんでいただければ幸いです。



 北エリアの散策と称したデートはまだまだ続いていた。魔物討伐とか商人ギルド相手の取引とか割と殺伐とした日々だったし、こうして誰かと何気なく過ごせる時間があってもいいよね。


 この商店街というかエリアを歩いてる人の数はかなり少ない。貴族街に近いからといっても貴族が歩いたりしてる訳じゃなさそうだけど、この辺りを歩いている人の身なりは、ぱっと見で分かる位にかなりいい。


 富裕層というか、流石に金持ちが主に来るエリアなんだと思う。


「この辺りはホント道も綺麗だよな、街路樹も整備されてるし彫刻も飾られてる」


「十年前にあの馬鹿竜が姿を現す前までは、町全体を整備する計画だったそうじゃ。もしあの竜がいなければ、この町は地方都市になっておったじゃろう」


「その場合は塩不足で今よりも苦労しただろうけどな。規模がデカくなるって事は、何かあった時のリスクも大きい。まあ、冒険者の数も今より多くて塩食い(ソルトイーター)やナイトメアゴートを倒せたかもしれないけど」


「無理じゃな。一定レベルを超えた魔物を討伐する場合、並の人間が万集まるよりも、人を遥かに超越した者がたったひとりいた方がいいというのは常識なのじゃ」


 まあ、それはそうだろうけどね。


 でも、そんなに簡単にはいないだろ? 超越種というか、規格外の人間なんて。


「人以外の種族、エルフとかドワーフはいないのか?」


「この辺りでは滅多にみかけないのじゃ。北の鉱山地帯に行けばドワーフがゴロゴロおるという噂じゃな。エルフに関して言えば、この辺りは魔素の溜まる森が多いからの、エルフが住みつきはせんのじゃ」


「魔素が多い森にはエルフがいない? 人とか亜人種は魔物化しにくいんだよな?」


「エルフは長寿じゃからな。人では何ともなくとも、何百年も魔素の集まりやすい森に住み続ければ、やがて魔物に姿を変えてしまうのじゃ」


 なるほど、長寿種ゆえの弊害か……。


「という事は、あの魔物を人間だけでなんとかしないといけない状況は変わらないって訳か」


「何ともならんじゃろうな。諦めが肝心というか、あの馬鹿竜の時のように放置という手段に出る事も多いからの」


「倒せない敵とは戦わないって事か。それもまた一つの選択だよな」


 完全放置された場合はやっぱり別のどこかへ移住するのが一番か?


「ヴィルナはこの辺りにいないといけない理由とかあるのか? 別の町に引っ越すのに抵抗があったりしない?」


「ソウマが行くというのであれば、何処にでも行くのじゃ。この町に思い入れもそこまではないしの。他の町に行く予定なのか?」


「状況次第だな。ナイトメアゴートはともかく、塩食い(ソルトイーター)の被害が大きくなればこの先どうなるかわからない。選択の一つとして、この町を出るって手段もあるって話さ」


 塩だけで済めばいいが、塩食い(ソルトイーター)が周囲の村やマッアサイアを襲えば、そこにいる住民は町や村自体を捨てて逃げるか塩に変えられて食われるかの二択だろう。


 その時は他国からの輸入品も激減するだろうし、交易ルートの中間拠点に位置しているこの町にもかなり大きな被害が予測される。そうなった場合、おそらく領主や商人ギルドは俺を括りつけてでもこの町から出れなくするだろうし、下手すりゃ一生軟禁生活なんて事態も十分に考えられるからな。そうなる前に逃げなきゃいけない。


「ソウマが行くならば、わらわはどこまでもついていくのじゃ」


「そう言ってもらえると嬉しいな。さてと、今日の所はあの店とかかな?」


 気になっていた店の一つ。この世界の服屋。


 どんな形でどんな物を売ってるのか気にはなってたんだよな、俺の着てる服は基本的に寿買(じゅかい)で買ってるけど、ヴィルナの服まで買う訳にはいかないし。


「あの店は服をはじめとする身に着ける物を売っておる店じゃな。取り扱っておる商品の種類も豊富なのじゃ」


「あの店でヴィルナの服を買おうと思ってるんだ」


「そうじゃな。今着ておる服も少し前のものじゃし、買うのはいいかもしれんな」


「それじゃあ行こうか。へぇ、ほんとにいろんなものがあるんだな。吊り物は殆どないけど」


 かなり広い店内にはいくつもの商品が並んでいた。布製だけじゃなくて、革製の商品も多い。服や毛皮の外套はもちろん、カバンやベルトといった小物まで幅広く扱ってるみたいだな。


「当店では中古流れの服はあまり扱っておりませんので……。採寸をして仕立てる形です」


「店員さんですか? 彼女の服を仕立てて貰いたいんですが」


「ご予算次第ですが……」


「予算は二万シェル位で、意匠は彼女に聞いて頂ければ」


「に……二万シェルですか? ああそういう事ですか、いい旦那さんですね」


 指輪を見て一発で納得された!! まあ、確かにこの指輪も結構したけど……。


「良いのか? 二万シェルじゃぞ?」


「女性の服は高いって相場が決まってるからな。いい物を作って貰えるんだったら、それなりに出すさ」


 俺の服はどっちかというと丈夫で長持ちが身上だしな。それに寿買(じゅかい)の商品はどれも品質が高い。わざわざ高くて劣る商品に手を出す必要もないし。


 というかヴィルナも俺がこのくらい出す事にはそこまで抵抗は無くなったみたいだ。塩の売り上げだけでも四百万シェル以上あるしな。


「それでは採寸などがありますので、そちらでお待ちいただけますか?」


「分かりました」


 女性の服だ、採寸だけならまだしも、デザインとか色々話し合ってたら一時間や二時間はかかるだろう。


 まあ、反則ではあるけど俺には時間つぶしの方法があるしな……。ライジングブレイブの劇場版辺りだったらちょうどいいかもしれない。見逃してる作品もあったしな……。おおっ、これこれ……。ホント寿買(じゅかい)様々だよな~♪



◇◇◇



「観終わったけどまだかかってるみたいだな……。しかし、寿買(じゅかい)アーカイブはほんとに凄い力だ。今度別の世界の特撮物も観てみよう」


 いろいろ面白そうな作品も多かったし楽しみなんだよな~。いや~ほんとこの一点だけは本気でこの世界に来たことに感謝した位だよ。お、ヴィルナが戻ってきた。


「待たせたのじゃ。ずいぶんと長くかかってすまなかったの」 


「全然待ってないぞ。で、服はいつごろに仕立て終わりそうなんだ?」


「凄い彼氏さんですね……、()()の指輪を送ってるのに、()()結婚もされてないって聞きましたけど……。これだけ待たせて文句の一つも言わない人ってほんとに珍しいんですよ」


「わらわのソウマじゃからな。そのあたりの男とは違うのじゃ」


「ごちそうさまです。ご注文いただいた服は一週間ほどで仕立て上がります。代金は一万八千シェルになりますが」


 一万八千シェルか、大銀貨十八枚だな。


「それじゃあ大銀貨で十八枚ちょうど」


「はい確認させていただきます。少々お待ちいただけますか?」


「大丈夫ですよ」


 まあ偽造というか、偽物って可能性もあるだろうしな。ただこの世界の銀貨って割とキッチリした形だし、アレを偽造するには結構な技術がいると思うぜ。


 通貨の偽造は元の世界でも重犯罪だし、貨幣システムの根幹を揺るがしかねないから許されざる犯罪だ。


「お待たせしました。確認が出来ましたのでこちらが注文票になります。このカードをお持ちいただければ、どの店員でも対応ができます」


「冒険者ギルドのカードシステムの流用? まあ、あれだけ優れたシステムだったらこういった使い方もできるか」


「お詳しいんですね。このシステムは便利ですのでいろいろな業種で活用されていますよ」


 何をどれだけ登録できるかってところだな。


 こういう基本的なシステムの話もどこかで聞ければいいんだけど。


「ではそのカードは彼女に」


「畏まりました。では、一週間以降ですと、いつでもお渡しできると思いますのでよろしくお願いいたします」


「分かったのじゃ」


 どんな服を作ったのかは気になるけど、それを今聞くのは野暮だよな。


 出来上がった服に着替えて、それを披露するまでどんな服なのかを聞かないのも礼儀だろう。


 こんな穏やかな日々がいつまでも続けばいいのにな……。





読んでいただきましてありがとうございます。

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