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第三十八話 なんでできないんだろう? 俺に魔力が無いからなのか?

連続投稿中。

楽しんでいただければ幸いです。




 もし仮に俺に特別な力があれば……。そう考える時がない訳じゃない。力への渇望はそれこそ子供の頃から始まり、今に至るまで一度たりとも消えた事は無い。


 若い頃には空いた時間で体を鍛えていたし、いくつか格闘技も齧ってみた。それでも俺の望む力に手が届くことは一度もなかった。俺が望む力、それは特撮ヒーロー作品を見た時に感じ、今もたまに何か力が手にできないかとあがいてみる事もある。


 と、ここまで考えてあることに気が付いた。そう、この世界には魔法がある。この世界だったら、俺が望む力が手に入るかもしれない。生きる為に必要な金を得る仕事に疲れ果て、もう望む事すらできないと思っていた力を……。


「じゃから。火の魔法は手元に()()魔力を集中させるのじゃ!!」


()()……じゃねえよ!! なんでできないんだろう? 俺に魔力が無いからなのか?」


 以前トイガンなんかの威力を試した場所。そこで俺はヴィルナに魔法を教えて貰っていた。この辺りは周りに物はないし、森へのルートからも少しだけ外れてるからあまり人通りが少ないんだよな~。だから最初の時もここで試したんだけど。


 ヴィルナはまるでライターに火を付けるように火を生み出せるのに俺と来たら……。練習開始からすでに一時間以上経っているのに、小さな火すらも作り出せないと来た。うう……割とガチでへこむぜ。


 ヴィルナは今まで魔法を使った事は無いと思ってたけど、剣猪(ソードボア)突撃駝鳥(チャージオストリッチ)と戦っている時は身体強化系とか風の刃系の魔法を使っていたんだそうだ。そりゃ強いよな。


「……うむ。魔力はあるようじゃな。少ないというのは間違いないのじゃが」


「俺にも魔力があるのか? だったら魔法が使えるはずだろ!! うおぉぉぉぉぉぉっ!!」


 力を集中するというか、顔が真っ赤になりそうなほど掌に魔力を流したつもりでも、誕生日ケーキの上に指す蝋燭の火程度も生み出せない。ちっきしょぉぉぉっ!!


「魔力の扱いになれてない者によく見かける光景じゃな。ほれ、これでやりやすかろう」


「ちょ!! ヴィルナ……、背中にその……」


 いや、背中にすっごい柔らかい感触が……。最近はよくアレしてるから、別の戦闘モードに移行しちゃいそうで……。


「今から背中に魔力を少し流してやるのじゃ。その流れを掴むのじゃな」


 ……めっちゃ(よこしま)な想像をした俺を誰か叱ってくれ!! いや、でもこの感触で、……これ、感じるぞ!! これが魔力の流れか!!


「火……、小さいともしびを……。よしっ!! 掌の上に火が生み出せた!!」


「ふむ。思ったよりセンスはいいようじゃな。まずは小さき力から試みて、次第に強き力を求めるものじゃ」


「さっきより高速に……。よし、なんとなくイメージは掴めた。これを飛ばせればもっといいんだけどな」


 今のままだと掌に小さな火を生み出せるだけ。ないよりマシだけど、ぶっちゃけそれだとライター辺りを寿買(じゅかい)で買った方が早い。


 それに俺の目的はこんな火を生み出す事じゃない。もっと大きく、もっと強力な炎の魔法を……。


「ソウマに火弾(イーグニス・グロブス)はまだ無理じゃな。しばらくはその発火(イーグニス)を練習するがよかろう」


「……そうするか。まずはこれをすぐに使えるように訓練して、強力な魔法はその後だな」


 強力な魔法。魅力的ではあるけど、魔法のまの字も知らなかった俺がそれをすぐに使えるようだと、この世界には魔法使いがあふれているはず。


 現実にはヴィルナとダリアくらいしか魔法使いにあった事は無い。この町が辺境だという事を考慮に入れてもあまりにも少なすぎる。才能の問題なのか、それともほかに問題があるのかは知らない。


「この魔法の火。熱くないのか? 自分で触っても火傷とかしない?」


「触れても平気なのは、使用者は魔法発現時に対応した魔法を無効化するフィールドが自動で展開されるからじゃな。こうして……、ほれ、このように簡単に火が付くであろう?」


「なるほど。枯れ木に火が付いた……」


「ただし、このフィールドは使用者本人にしか展開されぬ。わらわが今まで魔法をあまり使わなんだのは、ソウマを巻き込まない為でもあったのじゃぞ」


「たしかに。俺がいると高火力の魔法は巻き込みそうだよな。売り物になる、魔物を焼かれても困るんだけど」


 高火力で焼かれると買い取り額はゼロだろうし、炎系の魔法で倒すのは売れない魔物だけにしないとだめかな? 流石に討伐報酬だけだときつい。いろいろと。


「即死させても獣を傷つけにくい雷撃系の魔法はあまり得意ではないのじゃ。わらわの魔法は風で切り裂くか、炎で焼くかのどちらかじゃな」


「それじゃあ仕方がないか……。雷撃系、このライジングブレイクとか使えたらいいんだけどな」


 ライジングブレイクのフィニッシュブロウチップを取り出してみる。こいつはシリーズでも上位の雷撃系必殺技だ。


 これだけあっても役に立たないんだけど、そうだ!!


無衝炎斬(ブレイズ)!! これでこの宝石部分にチップをセットアップとかできないかな? ま、無理だろうけど」


【外部チップの情報を読み込みました……。メインシステムに追加機能を実装します……。データリンク完了、発動音声ライジングブレイクで行使可能です。内部エネルギーの消費量を計測、連続使用は三回までで、三回分のエネルギーを使用した場合は再チャージに最低一時間程度必要となります】


 ……できちゃった。


 というか、なんでできるんだよ!! このチップって第五世代以降のブレスユニット専用チップだぞ!!


 ホントにできたっていうんだったら、試してみるしかないよな?


「ヴィルナ。俺の後ろまで下がっててくれ。……その位置だったら大丈夫」


「またあの斬撃か? あれも凄い威力だと思うんじゃが……」


 今回試すのは衝撃波じゃないんだよな……。多分威力はこっちの方が上。斬撃が本来の威力だったら分からないけどもっ!!


 目標に定めた岩との距離は二十メートルほど、ライジングブレイクはこの距離でも十分に届くはずだ!! 行くぞ!!


「決めるぜ!! ひぃぃぃっさぁぁぁぁっ!! ラァァァァイジィィィング、ブレイクッ!!」


 この掛け声でも音声認識され、刃を駆け抜けた雷が空を焼き岩を直撃して目標を爆散した。ああ、アレって演出じゃなかったんだ……。


 直径五メートルほどの地面を焦がしたライジングブレイクは、目標を完全に消滅させた。あれ? あの技の威力ってこんなもんじゃなかったよな? やっぱりブレスユニットで俺自身が変身してないから、本来の威力はないみたいだな……。って、目標を爆散させちゃダメじゃん。炎の魔法や斬撃以上に使えない技だよこれ。


「ソウマよ、お主が何の為に魔法を習っておったのか聞いてもよいか?」


「そんな怖い顔するなよ。ほら、俺ももう少し強くならないと、ヴィルナと一緒にこの世界で暮らせないだろ? その為に力を……な」


「あれだけの力を持ちながら、まだ力を欲するのか? あの竜とまではいかぬが、あの雷であれば、ほとんどの魔物は倒せるじゃろう」


 まあそうだろうな。第五世代の二つ目の必殺技とはいえ、ひと月ぐらいは活躍したもんな。本物の技はもっと強かったけど。色々な大人の事情で後半はほとんど使われなかったのは残念だったな……。


 でもこれが使えるんだったらもしかして、あいつも何とか出来るんじゃないか?


「もしかして、これが使えれば塩食い(ソルトイーター)も倒せそうか?」


「……状況次第じゃな。塩化毒をどのように使うのかが分からん以上、断言はできぬが。あれほどの攻撃であれば、当たれば一撃じゃろうて」


「もし確実に勝てるんだったら、あの魔物を何とかしたいな」


「塩がそこまで大切なのか? 何とかなりそうなんじゃろ?」


「人が塩に変えられるとかそんなの怖いし、その町に住んでる人も安心して暮らせないだろ? 岩塩の方は人里から離れてるだろうけど、マッアサイアの方は町から近いだろうしね」


 別に俺はヒーローじゃないけど、俺の力が及ぶ相手であれば倒したいと思ってる。


「お人好しというか、ソウマのそういった面は本当に感心するの。誰かの為に命を懸ける事は並大抵ではない」 


「そこまでの覚悟じゃないんだ。でも、救える人は救いたいじゃないか。もしこの先、塩食い(ソルトイーター)がマッアサイアを襲ったりしたら、数千人規模で犠牲者が出るだろ? それを未然に防げるんだったら……、防ぐ力を俺が持っているんだったら、何とかしたいと思うのは普通じゃないか?」


「普通ではない。そのように考えるのはソウマぐらいじゃ。まったく……」


 そうかな? 確かに俺はこの辺りの領主じゃないし、別に平和を維持しなきゃならない訳じゃない。


 でも、ヒーローってそういう存在だろ? 特撮物が作りものだという奴もいるけど、その意思が誰かの魂に宿ることだってある。


 俺にはまだヒーローって言えるほどの力はないし、この手で救えない人も多いだろうけど……。




読んでいただきましてありがとうございます。

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