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第三十六話 この世界には図書館とかないのか?

新章十話目。

楽しんでいただければ幸いです。




 ライジングブレイブシリーズ。


 日曜の朝に放送されている子供向けの特撮ヒーロー物。初代のライジングブレイブから始まり、その後十年間世界観はそのままで、毎年新しい主人公に切り替えて続いている。


 特殊能力保有生物犯罪対策組織のブレイカーズが開発した特殊スーツを身に纏い、悪の秘密結社や宇宙人などを相手に地球を守り続けているというストーリーだ。


 一度平均視聴率一桁という最悪の事態を招いて打ち切られそうになったが、玩具関係はそれでも何故か売れ続けているのでシリーズは続いている。


「問題は()()が使えるかどうかなんだよな……。といっても、セットアップに必要なブレスユニットもバックルもありゃしないし……」


 しかも玩具でなくて、本物の変身用ユニットとかがな……。


 これがここにある事を前提にして、いくつか考えられる状況だけど、この世界がライジングブレイブシリーズの世界にリンクしている可能性。世界は無関係で俺と同じくこの世界に迷い込んだ奴の力で作り出された可能性。何らかの形でアイテム類だけがこの世界に紛れ込んだ可能性……。


 そしてもうひとつの危険な可能性。この世界にあるこれ系のアイテムが、ライジングブレイブシリーズだけじゃなかった時……。その場合はかなり厄介だぞ。俺も知らないアイテムの場合、俺が見ても気が付かない可能性すらあるし……。


「これを道具屋かどこかに売った奴が見つからないと、実際には何の解決にもならないな……。特撮ヒーロー好きだったらそこまで悪い奴はいないだろうし、とりあえず放置で問題ないかもしれないな。そいつが敵や悪人だったら、わざわざ強力な力を秘めるこれをどこかに売ろうなんて考えないだろうし」


 よく考えりゃ、このチップだけあっても何の役に立たないか。そういえば元の世界だと、このチップは欲しかったけど買えなかったんだよな。販売数がかなり少なかったらしくて、即日完売、即ネットでバイヤーが高額転売コースだったし……。


 やめやめ、こっちは放置でとりあえずこの世界の状況というか、ここがどんな世界なのか詳しく調べる必要がある。それも、かなり詳しくね……。


「ヴィルナ。この世界には図書館とかないのか? この世界の事が詳しく書かれている本でもいいんだけど」


「王都や割と大きな地方都市にはあると聞いた事があるのじゃ。魔法学院や魔法使いのギルドがあることが最低条件じゃな」


「この町……にある訳ないか。普通の学校とかもなさそうだもんな」


「私塾……というか寺子屋レベルじゃな。読み書きができる者が近所の子供に教えておる位じゃろう。当然、有料でな」


 私塾とか寺子屋は俺の脳内で変換された単語なんだろうな。ま、似たようなシステムは世界中にあるんだろうし。


「出来たばかりとは言わないけど、何十年かかけてこのクラスの町に発展させるのが精いっぱいなのか?」


「僅かな平野に森。塩も穀物もない状況で勝手に町が成長する訳なかろう。あの領主が半生をかけてここまで町を発展させたのは偉大な事じゃぞ?」


「確かにな……。で、他の町ってどんな規模なんだ? このアツキサトがこの辺りで一番でかいんだよな?」


 人口三万人程度の町が領都って酷くないか? 確か男爵領だろ? ここ。


「ちょっと大きな村といった感じかの? 人の行き来としては行商人が偶に寄る位じゃな。わらわも七年ほど前に一度行ったきりじゃ」


「……ほんとに辺境なんだな。これだけ人口が少ないと、商人ギルドや冒険者ギルドがあるのが不思議なぐらいだよ」


「十年前に竜が目撃されたせいじゃな。あの時までは森の恵みや穀倉地帯の小麦などを目当てに人が集まり、この町は今より賑わっておった。何事もなく町が成長しておれば、今頃この町には二十万人近い人がいた事じゃろう」


「竜の出現で人が寄り付かなくなったって訳か。というかその口ぶりだと町民が逃げたとか?」


「そんなとこじゃな。ま、仕方なかろう」


 まあ竜が出たら討伐なんてできなさそうだしな。塩の産地を潰されて、それを放置してるくらいだし……。


「もし例の竜が王都まで進撃したとして、この世界にはその竜を倒せる奴らはいるのか?」


「あの馬鹿竜をも倒す力を持つ勇者と呼ばれる者や、人外の力を持つ化け物は何人か存在しておるみたいじゃな。噂でしか知らんので、本当に存在しておるのかは怪しい所じゃが」


「噂って奴は尾鰭(おひれ)がつきやすいからな……。強くなるったって限界があるだろうし」


 普通の人間の場合はね。もし仮にあのチップを売った奴があの力をフルで持っていたら、この世界でも最強の部類に入るんだろう。いや、最凶の可能性もあるか……。


「わらわは殆どあの森の奥で暮らしておったのじゃ。人の里に出向くのは五年ぶりといった所か?」


「あの森の奥にヴィルナの仲間というか家族とかいないのか?」


「十年前、ひとり残らずあの馬鹿竜に食い殺されたのじゃ……。あの時はまだ幼かったわらわを残してな」


 っ!! 家族とかいないのかと思って聞いたけど、触れちゃいけない話題だったか。


「その……、ごめん。軽はずみに聞く事じゃなかったな」


「いいのじゃ。今のわらわにはソウマがおるしの」


「ヴィルナ……」


 しかし、あの竜ってヴィルナの家族……、竜も食い殺せるほど強いのか?


 いや、よく考えたら、今までヴィルナは()()()()()()()()()()()()()()()()()()


 でもあの強さは人だとは思えないし、間違いなくかなり強力な何かだ。気にはなるけど今は聞き出せそうにない……。ヴィルナはヴィルナだし、とりあえず別にいいかな。


「何か甘い物が食べたいのじゃ。桃でもよいのじゃが」


「そうだ!! まだ暑いしこれなんかどうかな? バタークッキーもつけるぞ!!」


 気を使ってヴィルナが話題を変えてくれたことだし、アイテムボックスから器に盛られたアイスクリームを取り出してスプーンを添えた。更に目の前にバタークッキーのはいった箱を取り出してこっちも何枚か皿に並べてみる。アイスとクッキーって相性いいしな。


「これは何なのじゃ? こっちの丸い方はなにやら良い匂いがするのじゃが」


「器に盛られてる方はアイスクリームっていう冷たいお菓子だよ。丸い方はバタークッキー。どっちもおいしいぞ」


「これは……冷たくて甘くてものすごく美味しいのじゃ!! 間にこのクッキーとやらを食べるともうさいこうなのじゃっ……」


 アイスをスプーンで食べて、口が冷たくなったらバタークッキーを食べる……、幸せの無限コンボだよね。やりすぎると体重も無限コンボになるけどな。


「気に入ったみたいだからもうひとつ食べてもいいぞ。って、クッキーがもう無いのか?」


「もうひと箱欲しいのじゃ!!」


「仕方ないな……。はい、追加分」


「流石はソウマなのじゃ!!」


 俺の失言から生まれた変な雰囲気はとりあえずなくなったし良しとするか。


 この世界を調べるって事だったけど、ヴィルナの正体が何なのかって謎が増えたな……。


 別に時間制限がある訳じゃないし、ゆっくり調べればいいか?


 世界の危機が迫ってるとか、魔王がこの世界を支配しようとしてる訳じゃないんだろうし……。




読んでいただきましてありがとうございます。

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