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第二十四話 問題はこれが転売にあたらないかという事だけど……

連続更新中です。

楽しんでいただければ幸いです。



 商人ギルドから帰還した俺は、白うさぎ亭の部屋に飛び込んで居心地のいいソファーに腰を下してみる。相変わらずいい座り心地だ……ってそうじゃない。くつろいでどうする?


 気を取り直してすぐにアイテムボックスを呼び出して寿買(じゅかい)で塩を探してみた。


 一口に塩といっても寿買(じゅかい)ではいろんな物が売られている。小さな瓶に入ってる一般的な塩はもちろん、各地で採れたカラフルな岩塩、何処どこの海で採れたなになにの塩系が基本で、後はクレイジーソルトやマジックソルトなどの加工塩系がほとんどだな。といっても大体こういう塩は取引単位が少ないし、購入額がかなり高額になる事が十分に予測されるから候補から外すしかない。


 となると大容量の工業系や業務用の塩を買うのが理想的だな。そのあたりを探す必要があるぞ。


「並塩、食用普通塩、工業用塩……、この辺りが理想的か。売価に差があるけど、その中から特に安くて良さそうなものを……、食用の普通塩かこれがいいな」


 食用の普通塩は二十五キロ千円。純粋に九百キロ用意する場合は三十六袋あればいいから三万六千円。


 しかしお目当ての塩が安いのはいいんだけど、このまま売ると寿買(じゅかい)で禁止されている転売になるからな~。まったく困った規則だよ。今回の塩の販売は流石に人命に関わる特例にはあたらないだろうし、何か方法を考えないといけないぞ。


「塩か……、日本で売られている塩って確か殆ど塩化ナトリウムの塊なんだよな……。逆に岩塩とかはミネラルが多かったり……、ミネラル…成分? そうだよ!! 塩化ナトリウムの塊なこの塩にミネラルと……、ついでにうまみ成分を加えて加工塩にして売ればいいんだよ!!」


 混ぜ物の比率は一割程度でいいか? 業務用うま味調味料のグルタミン酸ナトリウムが一キロ千円、ミネラル成分豊富な粉末状の岩塩が一キロ千円。


 さっきの普通塩にこの二つを加えると二十七キロ分の加工塩ができる。


「問題はこれが転売にあたらないかという事だけど……。あとは加工時間か……」


【予想加工時間、二十七キロをワンセットとして約五分。※この商品は加工品になりますので安心してお売りいただけます。また完成品を入れる麻袋や紙袋もご購入いただきますと、梱包した状態で出力されます】


 本当に便利なアイテムボックスだよ……。これ、もしかして俺の脳か何かにリンクしてるのか?


【現在は設定されていませんが、脳波リンクの設定を有効にしますか? 有効にされますと、収納ボックス内のアイテムの取り出しなどを、脳内のイメージで操作できるようになります。※たまに完了音やお知らせの際に音声が鳴ったりします】


 …………もうしてるよね? これ? もしかして俺が今まで承認してなかったから、おおっぴらにリンクされてなかった感じ? ……毎回アイテムボックス呼び出して指で操作よりは早いか……、よし、承認!!


【承認されましたので、今後はアイテムボックスの画面を音声入力無しで呼び出すことも可能です。脳内イメージでも全ての操作が可能ですが、慣れるまでは手動での操作をお勧めします】


 こういった所までフォローしてくるのか……。まあ確かにいきなり脳内で操作して、変な事しても困るからな。


「さて、問題は麻袋か……、割と高いからな。お、米が三十キロ入る無地の米袋が百枚五千円……。紙袋だけど丈夫そうだからこれでいいかな」


 業務用の食用普通塩を四十個、業務用うま味調味料のグルタミン酸ナトリウムを百個、ミネラル成分豊富な粉末状の岩塩を百個購入、これで完成する加工塩が合計千二百キロで塩そのものが千キロ、うま味調味料が百キロ、粉末岩塩が百キロだけど岩塩はほぼ塩でいいだろうから添加物の合計が約一割位だな。


 購入に必要な金額は、塩が四万円、その他が二十万円。それと袋が五千円で、合計二十四万五千円か……。


 元になる塩よりも添加物の方がはるかに高いけど、これを入れないとこの世界で売る事すらできないから仕方が無いんだよな。それに高くなるけれどもグルタミン酸ナトリウム入りの塩は旨味が強い。普通の塩よりも人気が出るはず。


「現在の残高は五万五千二百円。当然不足するからこっちの銀貨でチャージしないといけないな」


 銀貨の残数は六百三十二枚と銅貨がいくらか。やっぱり今回分を卸してなければ元々の銀貨の残量が三十二枚しかなかったから、完全にヤバい状況に陥ってた所だ。


 何せ必要な銀貨の枚数が二十五枚という事は、本当だったら銀貨は七枚しか残らなかった計算になるしな。カツカツにもほどがある。


 売値だけど、一キロくらいの岩塩が百シェルで売られていたから、それを基準にして半値で卸しても一キロ五十シェル。千二百キロで六万シェルになる。六万シェルは銀貨で六百枚だから儲けも十分にある。偶然だけど今回の飴を売った額と同額か。利益率は飴に比べたらかなり劣るけどね。


「偶然としては出来過ぎだけど、今回の飴の買い取りを促した理由にはなりそうだな。さて、【加工塩】フォルダを作ってそこに全部ぶち込んでっと……、調合開始!!」


【調合開始】


 これでとりあえず任務完了。完成予測時間は約四時間後……。


 まあ、まだ袋に余裕があるから塩はもう少し加工するけど……。ん? もう少し? 本当にこの量であのニドメックの奴らの息の根を止められるのか?


 最低数は負けない為の量だ。あいつらを完膚なきまでに叩き潰すには、ニドメック商会の倉庫に積んである塩の山が無価値になるだけの量が必要なんじゃないか?


「……資金はまだ十分ある。あいつらの想定したゲーム盤をひっくり返せるだけの塩を用意する事も可能だ。まあ、あいつらの倉庫にある塩も腐りゃしないだろうけど、あんな商売をする奴らだ。絶対商品の塩に砂とか混ぜてるだろ。まあ塩に砂は古来からある常套手段だしな」


 それを駆逐するには、砂など一つまみも入っていない高品質の塩が大量にあればいい。そうすれば、その混ぜ物入りの塩の価値を最終的にはゼロにする事も可能か。


 砂の混ざった塩から砂を取り除ければ売る事もできるだろうけど、そんな真似が出来るならしてもらおうじゃないの。


「銀貨追加!! 調合量を今の五倍の六千キロまで引き上げてやる。これだけあればしばらくはこの塩を売り続けられるだろうし、奴らの抱え込んでる塩の価値は大暴落だ」


 五倍にした場合の完成予想時間は約二十時間後、明日の夕方までには何とか完成する計算か。いける、いけるぜ!!


 まるでスロットにコインでも突っ込むかのように、二百枚の銀貨を次々とアイテムボックスの現金系投入口に追加投入する。


「チャージ、チャージ! チャージ!! ひゃっほう、乗ってきたっ!! ジャックポットはあのニドメック商会の首だぜ!!」


 業務用の食用普通塩を百六十個、業務用うま味調味料のグルタミン酸ナトリウムを四百個、ミネラル成分豊富な粉末状の岩塩を四百個追加購入。これで材料は揃った!!


 そしてトイガンのタグに移動して帝都角井製(ヴリル)対応沢姫(さわき)式複合型(エックス)十七式小銃防衛軍バージョンを選択して多装弾マガジン、予備バッテリー、予備カートリッジと特殊BB弾を追加購入した。


 塩の追加購入金額も含めると全部で百九十万近い出費になったが、これがあればニドメック商会の襲撃があっても撃退可能だ!!


「こんなものを使わないで済むんだったらそれに越した事は無いが、まあ備えておけば憂いもないだろうよ」


 とりあえず今度こそ任務完了だ。


 これで奴らがどう出てくるかはわからないけど、あちらさんがやる気だったらこっちも受けて立つってもんだ。



◇◇◇



 塩の調達を終えてソファーに深く腰掛けると、後ろからヴィルナが抱き着いてきた。なんだ、俺が塩の手配を終えるのを待っててくれたみたいだな。


「ひと仕事終わったようじゃな。というか、ソウマは塩を持っておったのか?」


「あ、ヴィルナ。まあ、俺のアイテムボックスにはいろいろ入ってるからな。今回の塩も何とかなったよ。あんな事の後なのに碌に構ってやれなくてごめんな」


「という事はあの男が言っておった量の塩が用意できたのか? あの量の塩を持っておる事も驚きじゃが……、ん? あんな事? ああ、朝の無礼者の事か? もう覚えてもおらなんだわ」


 あんな連中は覚えておく価値なしって事か。


 まあ、いやな事は忘れるに限るしな。


「いい時間になったし、晩飯でも食いに行くか」


「そうじゃな。此処にも迷惑をかけた事じゃし、今夜は少し豪華に頼むとするかの。あ、わらわの食い代は今回からちゃんと自分で支払うのじゃ」


「別に食事代くらいは問題ないぞ。冒険者ギルドの分は山分けだけど、商人ギルド分は流石に分け前を渡せないし」


「ソウマの持ち物で稼いだ金を集り続けるようで、わらわの方が居心地が悪くなるのでな。此処の宿泊費用だけで十分なのじゃ」


 ここの宿代も折半とか言われたからそれは却下したんだよな。


 俺の都合でこんな高い宿を選んだわけだし。


「それじゃあ、そうするよ。今回の件が片付いたらもう少し冒険者ギルドで依頼を受けないとな」


「あの獣も売れば、結構な額になるのじゃ。じゃが、冒険者として活躍するというのも悪い話ではないぞ」


「俺も武器とかで結構出費があるからその分は冒険者ギルドの依頼で稼ぎたいしな。その時はまたいろいろ頼む、頼りにしてるぞ」


「まっかせるのじゃ~♪」


 やっぱり仕事が無いというか、役目が無いのはつらいんだろうからな。


 あのクソ商会の一件が片付いたら、しばらく冒険者として活動してみるか。




読んでいただきましてありがとうございます。

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