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第二百十九話 という訳で今日から仕事だから少し家を空ける事が多くなるよ。ずいぶん暖かくなってきたしヴィルナと外出する機会が増えるはずなのに悪い

連続更新中。

楽しんでいただければ幸いです。



 今日は四月四日、四月第一週目の木曜日だ。なんとなく四が並んで縁起が悪い気がするが、今日が魔法学校の入学式だったりする。もう一つの学校も今日が入学式だけどね。


 魔法学校は基本週五日。土曜日は自由研究日として学校を開放しているが授業はない。


 毎日普通の授業だと、才能がある生徒の時間を完全に奪ってしまう形になるからね。新しい魔法とか魔法技術なんかの研究をする日があってもいいと思うんだ。まだそこに至らない生徒はその時間で他の生徒と仲を深めればいいし、何が正しいかなんて結果が出るまでわからないさ。


 今日から魔法学校に行く日は割と早起きになるしヴィルナはまだ寝させててあげようと思ったら、一緒に起きて朝ご飯を食べるって話になった。まだ眠いだろうし、そのまま寝ててもいいのに。


「という訳で今日から仕事だから少し家を空ける事が多くなるよ。ずいぶん暖かくなってきたしヴィルナと外出する機会が増えるはずなのに悪い」


「……わらわは余程の用事でなければ来月まで家から出ぬのじゃ。家で料理の練習をするか、あの小娘に料理を教えておるじゃろう」


 やっぱりそうか。


 今年は去年より暖かいからそろそろ外に出るころかなって思ったんだよな。種族特性というか、聖魔族ってほとんど森から出ない種族らしいしそれはヴィルナにとっては当たり前の感覚なのかもしれないけどさ。それにしてもエヴェリーナ姫って……。


「エヴェリーナ姫ってさ、まだまともに料理を作れないの? 結構長い間ヴィルナが丁寧に教えてるよね?」


「相変わらず最後に余計なひと手間を加えるのが好きなようじゃな。来月には結婚式じゃというのにアレではあの男も大変じゃろう」


「そういえばそんな時期になったんだな。この前雷牙(ライガ)の奴は三日寝込んだらしいけど、何食べさせたんだ?」


「あのチョコに砂糖や果物を入れた物じゃ。アレであの男が寝込んだ訳ではないのじゃがな」


 その組み合わせだとよく聞くし、失敗する要素が無いもんな。


 それじゃあ何を食べさせたのさ。


「あの大岩牡蠣とかいう物を手に入れたらしくってな」


「牡蠣に当たったのか!! それは流石にエヴェリーナ姫の問題じゃない気がするぞ」


 どれだけ警戒してても当たる時は当たる。それが牡蠣。


 生でもいいし、焼いて良し揚げて良しとどう調理してもおいしく頂ける貝だけど、運が悪いと当たるんだよな。


「あれだけよく確かめよといったのに、生煮えの牡蠣フライを食わせたそうじゃ。かなり濃いめの味付けじゃったらしくてな、旨い旨いとあの男が喜んで喰いまくった結果といっておったが」


「生煮えというか、基本牡蠣は中心まで火が通ってたら問題はない筈。今回の件に関してはあいつに運が無かっただけだ」


 エヴェリーナ姫の腕だと本気で生な可能性も捨てがたいけどね。これでしばらくあいつは牡蠣を食わないだろうな。


 ……多機能傷薬も渡してあったし、アレを使えば毒とかは消えるはずだよね? 食あたりは対象外なのかな?


【多分その存在を忘れていたか、あの子に悪いから使わなかったんじゃないかな? 多機能傷薬なんて使ってる所をみられたらあの子も流石にショックだろうし】


 でも牡蠣に当たるって結構きついんだぞ。


 くだるし戻すし、エヴェリーナ姫にも悪いだろうに。


【あたしが知ってる限りだと、そんな事は無かったみたいだよ】


 ん? どういう事?


【流石にあの子でも果物の皮を剥いだり切ったりできるしさ、三日間その状況を楽しんでたんじゃないかな?】


 仮病か!!


 いや、あいつは最初からそんな真似をする奴じゃない。たぶん牡蠣に当たったのは本当で、体調を崩したりもしたんだろうけどすぐに回復してエヴェリーナ姫に甘えてたってわけ?


【それが正解じゃないかな? 牡蠣は当たると怖いから、他の貝料理とか海産物料理とかない?】


 新年会で出したオニキスアワビの入った海老しんじょは?


【あれ、おいしそうだよね!! ちょっと多めに送って貰えるかな?】


 海老しんじょはいろいろ種類があるから全部送るよ。でも貝類も基本焼くか炒めるかだけどいいかな? パスタの具とかパエリアの具とか。


【それでもいいからお願い。あ、そろそろ見つかりそうだから。じゃあね】


 ……相変わらずせわしないな。


 他にもいろいろ保管しておくか。頻繁に頼みに来てるように見えるけど、向こうは時間の流れが速いから下手すると数か月ぶりとかそんな感じなんだし。


「相変わらずなのじゃな」


「いろいろお世話になってるし、美味しいもの位いくらでもあげるよ」


「……そういえば、ソウマはそろそろ出かける時間じゃろ?」


「もうそんな時間か。ごめんね今日は俺に付き合わせて早起きさせちゃったし」


「朝食位一緒に食べたいからの。晩御飯もできれば一緒がいいのじゃ」


「仕事を早めに片付けて、全速力で帰るよ!!」


 行ってきますを済ませて、魔導車で魔法学校に向かう。


 生徒の馬車も結構多いな。街から通う生徒の数から考えたらこんなものなのかな?


◇◇◇


 講堂というか体育館? そこで行われる入学式。目の前にはずらっと生徒と教師が並んでいる。これに関しては無駄だと思うんだけど、こうして顔を見せないと俺や教師の顔を一度に紹介できないんだよな。


 パッと見た限り生徒の男女比は最終的に二対八くらい。魔法学校に入学を予定してたのに向こうの普通の学校に行くことにしたり、その逆のパターンもあったそうだ。圧倒的に女の子の方が多いから男子生徒はやりにくいだろうな。というか、元々魔力というか魔法の才能は女性の方が高いらしいんで、二割も男性がいた方が驚きだ。


 来賓に関しては呼ばなかった。カロンドロ男爵は向こうの学校の入学式に出席するらしいけど、今までマッアサイアで療養してた孫娘が向こうの学校に入学するらしい。年齢的には問題ないけど大丈夫なのか?


「理事長の鞍井門(くらいど)です。これから五年間、生徒諸君はこの学校で魔法や様々な事を学んでいくと思いますが、私から言う事はひとつだけ。人の数だけ人生や未来があります。理解できない事もあるかもしれませんが、他人がやっている事を安易に否定しない、馬鹿にしない。否定の先に得るものなど何もありません。あと身体や出身などで色々と違う生徒もいます。関わらないのは自由ですがそれを誰かに強要した瞬間それは問題行動です。その辺りは生徒手帳にも書いてありますが、厳罰が待っていますので気を付けてください」


 いじめに関してはかなり厳しくさせて貰った。いじめという言い方は良くないな。校内での犯罪行為には割と厳しくすると生徒手帳や職員室の壁にも大文字で書いてあるし、状況次第で一発退学まであるからね。それだけで済まさない事もあるだろうけど。


「教頭のダリアだよ~。理事長先生の言う通り、誰かを攻撃するのはいけないね。それ以外は割と自由な校則にしてあるから、出来れば五年間この学校で多くの事を学んで欲しいかな~」


「それではこの後はオリエンテーリングを行う予定です。第一回、探せ校内大宝探しゲーム!!」


「なにそれ?」


「いったい何があるの?」


 生徒だけじゃなくて、教師陣も驚いてる。偽物の予定表にはこの後説明会って事にしてあったからね。これは直前まで秘密にしてたし、一部の教師にしか教えてなかったからな。


「ルールは簡単。各教室、廊下、この体育館、校庭、運動場にこのカードを隠してあります。見つけたカードは一人三枚まで保有する権利があり、ゲーム終了時に書かれている番号に対応した賞品が与えられます。四枚以上もってた場合、反則で失格になる場合もあるからね。トイレや学食にはないから、故意にそこに入らない様に」


「そういえば言ってたね~。教師の多くも驚いてるけど」


「参加できるのは準備に関わった教師以外全員。生徒だけじゃなくて教師にも参加権があります。協力してカードを探すもよし、ひとりで推理能力を発揮してカードを探すもよし。制限時間は昼食前のお昼の十二時ジャスト!!」


「賞品って何ですか?」


「半数以上はシェルとの引換券です。学生証や教師の資格証にチャージする形になります。ほんのちょっとだけ賞品の一覧……」


 番号は書いてないけど賞品の一部が書かれた垂れ幕が天井から降りてきた。半数以上は今いったとおりにシェル引換券だけどさ。


 他にも小説セットとか、装飾品などもある。私服の仕立券とかは決められた範囲であれば街の服屋で好きな服を仕立てて貰える物だ。



「最高額一万シェルって!!」


「嘘っ!! その下も五百シェル刻みで五千シェル迄ある……」


「一部高額なものもありますが、後の発表時に見つけた人は祝福してあげるように。奢りの強要は勧告対象です。それでは、スタート!!」


「急いで!! ああっもう、出口付近の人が有利じゃない!!」


「急げいそげっ!! ……ここにもあるって言ってたよな? 物事を成す時はまず足元を確かめよ。昔の偉人の言葉だ」


 ……そんな格言もあるんだな。上手い事皆をここから追い出して体育館を探し始めたグループがいる。


 悪くない発想だけど、ここには最高額のカードはないけどね。割と高めのカードはあるけどさ。


「窓枠の横!! カードみっけ!!」


「カーテンの裏にも隠してあった!! 一人三枚までか。とりあえずキープしてトレードしたりする?」


「三枚見つけたら体育館に集合。ゲームは全員帰還するか十二時に強制終了します。見つけた時点で後は発表を待って下さい」


 全校生徒に伝わるように校内放送でも流してみた。


「トレードもダメか。でも三枚見つけられたから運がいい方だよね?」


「見つけられない子もいるだろうし……」


 一応残念賞も用意してある。


 だから一枚も見つけられない生徒や教師にも何か一つは手に入る事になってるんだよね。


「ク……理事長先生。あの一覧にあった小説セットって」


「ああ。ちゃんと新品だよ。書店で無理を言っていくつかシリーズを揃えて貰った」


「……ラウロの書いたアレも入ってるとか言わないよね?」


「全巻集めるのは苦労したよ」


「って!! なんであれを入れちゃうかな~!! 気が付く子はいるよね?」


「むしろすでにバレてるまである。生徒たちの会話にラウルって単語が出てたし」


 あれだけ人気にシリーズだ。持ってる生徒がいてもおかしくはない。


 それならばこうして賞品にした方がいいだろ。隠してる訳じゃないんだよって意味でさ。


「あの小説の収入で暮らしてる訳だしさ、いいんだけど。生徒たちにからかわれそう」


「俺よりマシだろ? 生徒や保護者に何度勇者扱いや聖人扱いされたか」


「そっちも仕方ない事でしょ? あ……割と早く戻ってくる生徒もいるね」


「ここにもまだまだカードはあるし、番号の発表はしないぞ」


「この後天国と地獄が見れるよね」


 高額カードばかり見つけたら、しばらく豪遊できるだろうしな。


 生徒や教師がアレを見つけられたらの話だけど。




読んでいただきましてありがとうございます。

誤字報告ありがとうございます。とても助かっています。

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