第十八話 とりあえずこのトイガンと剣の威力を確かめないとな
連続更新中。本日二回目の更新になります。
楽しんでいただければ幸いです。
さて、冒険者としての初任務!!
上着はいつもの綿シャツだけど、その上からアーマメントベストを着ているから多少の衝撃は吸収してもらえるし、斬撃に関しては鎖帷子並みかそれ以上に通さない。
ズボンも同じ斬れにくい素材で、ブーツは山歩きに適したブーツに履き替えてるぞ。そしてカバンの中に入っていた重要な装備!! 黒の指貫グローブ!! こいつがあれば気分的には戦闘能力三割アップだ!!
着替えた服は収納ボックスにしまい込んで、【修復】すればある程度のほつれも直されてるし、綺麗にクリーニングして貰える事が分かった。
この装備も少し破れた程度だったら買い直さなくて済みそうなので、物凄い助かってる。流石、怖い位チートなアイテムボックスだな。俺自身にチート能力貰えてないけど、あのアイテムボックスと寿買だけでお釣りが来そうなほどだよな。
「ソウマ。今日はわらわが飯を喰らうだけの穀潰しではない事を教えてやるのじゃ」
「別にそんなことは思ってないけど。気にしていたのか?」
「あたりまえなのじゃ。今のままではわらわは単なる大飯喰らいのお荷物じゃろう。一応わらわとしてはソウマの護衛気取りでおったが、今までこの力を発揮する機会が無かったからの」
まあ、基本食っちゃ寝だったからな。昨日それ以外の事も増えたけど。
昨日の風呂上りに元の世界の石鹸とかシャンプー類をヴィルナに買ってやったら、物凄い喜んでたし。その後でまた隣の部屋に引き摺り込まれたんだよな……。
おかげであの日は二回目の風呂に行く羽目になっちまった……。
んっ、ん。まあ、あの事はいいとしてだ。
「とりあえずこのトイガンと剣の威力を確かめないとな」
「トイガン? そのような小さな武器が何か役に立つのか?」
「分からん。何か適当な目標に向かって撃ってみるけど、ダメだった時は腰のショートソードで頑張るさ」
買ったトイガンはX十七式拳銃ってタイプだけど、グリップの中に超小型の細長いバッテリーと氣チャージカートリッジをセットし、その後ろに特殊加工BB弾三十発入りの細長いマガジンを差し込む構造になっている。
小さなBB弾だから可能なんだろうけど、装弾数が多いのは助かるな。
「チャージシステムってのは緊急用らしいから、とりあえずそのまま撃ってみる。あの石なんかちょうどいい」
シューティングターゲットに定めたのは二十メートルくらい先の大きな岩。普通のトイガンだったらBB弾が当たった後ではじけ飛ぶだけだろうけど、こいつはどうなるんだ?
「とりゃ!! …………バッカじぇねえかこれ作った奴と、寿買に流した奴!! 何考えてんだよ!!」
「恐ろしい威力じゃな。トイガンというのは全部あのような威力なのか?」
「んな訳ねえだろ!! 元の世界でこんな威力のトイガン持ってたら、あっという間に刑務所行きだよ!!」
色々説明が書いてあったが、トイガンだし魔物が追い払える威力があればいいなと思ってた。
まあ、ふつうそう考えるよな。
で、このトイガンで二十メートル離れた場所に撃ち込んだ弾がどうなったかというと、着弾と同時に直径十センチほどの光球を生み出して、でかい岩をその光球の大きさだけ綺麗に抉り取った。ヤバくね?
「こんなの実銃より危険じゃないか。しかも弾が狙った所にほぼ真っ直ぐ進んだぞ。風とか重力の影響もほぼ無視していいって事だよな」
七十三万した小銃はこの威力の弾を連射できるって事か。いや、いったい何と戦うのを想定して作られてんだよ!! 実銃じゃなくてトイガンだぞ、これ。こんなのでサバゲとかしたら、凄惨な事件現場が出来上がるだけだよ。
「わらわの力を発揮する機会はなさそうかの?」
「いや、まあ銃は弾数制限あるし、このショートソードの威力次第かな~って」
とりあえず銃を右腰のホルスターに収めて、左側に括りつけているショートソードを鞘から引き抜いた。
昨日一度出した時はそこまで詳しく調べなかったけど、この鍔の部分にはめられてる宝石がなんか綺麗なんだよな。
ん? 指で触れたら急に光が……。
【ザザッ…ァ……ワェ……、ガャ……、…………ゴッデスブレッシングシステムヲキドウシマス、…………起動者の魂魄情報から基本言語と思考言語を確認、生体情報を登録。氣量を測定……、マスターロック作動。使用者保護システム起動、オートリペア機能起動………】
手に握っていた剣が消え、俺に右手の中指に剣についていた宝石があしらわれた指輪が現れた。でも、今の状態は宝石以外アイテムボックスから取り出した時の様に半透明な状態で、音声を発しながら複雑な魔法陣のような物を幾重にも展開していた。
【女神の祝福付与が制限条項に抵触しました。状況改善までは本来の威力の百分の一以下での運用となります。使用者自身が必要能力を基準値まで到達させた場合は自動的に解除されます……】
ああ、これもやっぱり曰く付きのヤバい武器か……。
普通の武器はこんな風に指輪に変形しないし、魔法陣展開しながら起動だのなんだの音声なんて発生しないもんな。もしかして、寿買で取り扱い始めた武器ってこんなのばかりなのか?
【起動音声を登録してください。剣に名前を付ける方法もあります】
起動音声というか、剣の名前か……。昔見た特撮ヒーローの武器でいいのがあったよな……。確か無衝炎斬。
まあ、あの説明文から予測するとこの武器は衝撃波だけで炎とかでなさそうだからあまり似合わないか……。
【起動音声を登録しました】
ちょっと考えただけで登録されちまったか。……この剣の名前というか起動音声は無衝炎斬で確定っぽいな。まあ、エクスカリバーとか完全にそっち系の名前にならなかっただけでもよしとするか。
じゃあ、試してみるぜ。
「行くぞ!! 無衝炎斬!!」
起動音声を叫んだ瞬間、俺の右手にさっきのショートソードが握らされていた。
前に持った時も軽かったけど、今はあの時よりもすごい軽いというか、これが鉄とか金属製の何かの塊とは思えないんだけど。
「その武器はどんな感じなのじゃ?」
「なんか衝撃波が出るっぽいからもう少し近付いて、あの岩に向かって素振りをしようと思う。確かこの鍔の部分についてる宝石の力って事だよな? お、手で触れたら宝石が赤く輝き始めたぞ」
あの岩……、さっき大きな穴をあけちまったけど、ここから斬りつけてどうにかなるかな?
「距離は十メートルくらいか。そりゃっ!!」
普通に振っただけで二メートル近い長さの衝撃波の刃が空を斬り裂き、まるで何もなかったかの様に岩を真っ二つにした。その後すぐに消えたから衝撃波の射程はちょうど十メートルくらいか? で、これで本来の百分の一以下の威力? ホントに何を倒す為に作られたんだよ? その世界の神か何かか?
「……わらわは帰ってよいか? できればあの森へ…、じゃが」
「ちょっと待ってくれよ。まだ付き合いは短いけど、その、あれした仲だし……。やっぱり一人はつらいから一緒にいないか? ほら、俺ってこの世界の常識とか疎いし……」
「冗談じゃ。これならばおぬしをひとりで森へ行かせても安心じゃな」
「一緒に行こうぜ。ヴィルナには石胡桃がどんな木とか実なのか教えて貰わないといけないし。一緒の方がきっと楽しいぞ」
そういうと我が意を得たりといった表情で微笑み、俺の横に来て腕を絡ませた。
「しょうがないの。そこまで言われては無下にできぬでな」
「ありがとうな。さてと、これでなんとかなりそうだ。東の森で採集するついでに剣猪を狩るのも悪くない」
いわくつきの怪しい武器だろうが何だろうが、俺がこの世界で生きていく為には何だって利用してやる。
ヴィルナは出会った時の話で俺の事を喰おうかといってたが、ヴィルナはとてもじゃないが人を食っている悪い竜には見えない。
まだ出会って数日だけどその位は分かるし、間違いないだろう。
読んでいただきましてありがとうございます。