我!目覚めの時!
唐突に思いついたネタ
「ふふふ・・・封印されてからはや500年、あの汚らわしい封印をぶち壊すのに500年もかかるとは・・・あの人族なかなかやるではないか名は確か・・・ユウーシャとか言ったか、確かにあいつは強かった、我の五割の力とは言えそれを危なげなく受け止めたのだその点は誉めてやろう・・・だが!!
一対一の神聖な戦闘と契約をあちらから申し建てておきながら我の隙をつくように膝を短剣で刺すとは!!しかも聖なる武器だぞ!魔帝といわれた魔族の王の我でさえも神の力を宿した武具で攻撃されれば我も痛い、陥入爪になった親指を五回連続でぶつけたぐらいには痛かったぞ。
悶え苦しんでいる最中にあっけなく封印を施されてしまったわけであるが・・・
そもそも人族の難癖から始まったなのであったなあの戦争は、確か・・・我ら魔族の一般人が人族の一般人の娘を切り殺したなどといういちゃもんをつけられたものだ・・・切り付けたという男も事情聴取を行ったが至って誠実剛健な曲がったことが許せない魔族であったな、もちろん我とて否定したが
人族はそれを否定し続けてあっけなく戦争になったな、むやみな戦争はしたくはなかったが人族が武器のごとく突進を仕掛けてくるのだ、こちらも対抗せざる負えなかったのだ・・・魔族、人族ともに多くの犠牲を払った・・・
人族は強かった、確かに一人一人はちっぽけな力だったが数がそろった時の突破力は偉大であったな、我もその点に関しては感心したものだ。
そして魔族は次々に殺され、少数となってしまった・・・ユウーシャが我のもとに現れた
降伏を勧めてきたな、なぜいちゃもんをつけてきたあやつらに下らねばならぬ、我は否定し戦った。
痛みに悶える中封印された我であるが封印される瞬間に神官を一人怪我を負わせたおかげでこうして封印を解くことが出来たわけだが・・・まずは我ら魔族が心配だ、我が封印されてから非道な扱いをされていないだろうか・・・同胞が苦しんでいなければよいが・・・ここは我が王城か・・・ふむ、ほこりが一切ないな、手入れされておるのだろう。
さしずめ我と我が王城は見物小屋とその見物にされていたのだろう・・・どれ我が城の見物としようか
」
魔王は自身の城を見て回る、見て回った感想であるが
「妙であるな、便所から馬小屋・・・牢までも手入れが通っているのが不思議でたまらないのだが・・・見物小屋になっている割には人族を一人も見かけないではないか」
不思議なことに人間を一人としてみていない、しかも魔帝の同胞である魔族を一人として見つけることが出来なかった、誰がこの500年もの間城を維持していたのだろうか、疑問が残る。
そんなことを考えながら歩いていると謁見の間にたどり着いていた、最後にここに来たのはユウーシャと対面した時以来だろうか、ところどころさび付いていたり色あせているが間違いなく魔王の城といえるであろう謁見の間が確かにそこに存在する
謁見の間の扉が開いている、建付けも悪くはない定期的に使われているのであろう
当然魔王はこの先に誰かいるのかと思い浮かべながら空間の中に入っていく
中には玉座の前で膝を折り祈りを捧げている娘が一人いるのに気が付いた、魔王はこの娘に近づき問いかけることにした
「娘よ、熱心であるな」
その声に驚いた少女は後ろを振り向き言葉を発した、だがよく見ればこの娘は封印される前の魔王と同じくらいの年齢であろうか。
魔王からしてみればすべての魔族はみな自分の子供だと言いたいのだろうか
「祈りを、魔王様に祈りを捧げておりました」
「そうか、熱心なことだな。そんなに魔王を崇拝しているのか?」
「いえ、そういうわけではありませんが・・・そう、誓いを魔王様に誓いと宣言をしておりました」
「・・・ならばここではなく封印結晶の前で誓いを立てればよかろう」
「それは、そうですが恐れ多くて・・・」
「ふむ、では我がその誓いと宣言を聞いてやろうではないか」
この発言に娘は少しだけ笑う、この男は娘からしれ見れば知らない魔王の口癖を真似た好青年であるのだが、不思議と嫌な感じは起きなかった
「ふふ・・・では魔王様、僭越ながら私めの宣言をお聞きしていただいてよろしいでしょうか」
「うむ、何なりと申してもよ」
「では、私アリス・ディープワンはこの生涯を魔族の発展と世界の平和のために戦うと誓います、できれば素敵な殿方様とも出会えますように」
「後半が本音ではないか?」
「全部本音ですっ!・・・ふふ、なんだかあなたといると落ち着きますね、初めてお会いしたはずなのですのに・・・なんだかおじい様とおばあ様といるような、落ち着く感じがします・・・」
娘の発言に魔王は落ち着いては居られなかった、名前もそうだが姓に関しても聞き覚えのある名前だった
「とても良い祖母と祖父だったのだろうな・・・」
「はい、とてもやさしい人でした・・・今からおばあ様とおじい様にあいさつに行くんです、よければ着いてきませんか?」
「良いのか?我は赤の他人であろうに」
「問題ありません、お二人とも寛大なお方ですから」
「そうか、では我も行こうか」
そういって娘の・・・アリスの後ろをついていく、アリスにとっては先祖の墓参りであろうが魔王にとっては子孫の墓参りになるのだろうか、気持ちとしては複雑な気分だった。
魔王の名はジル・ディープワン
最強にして溺愛の魔王と呼ばれたその人である
アリスの道案内のもと調理場の扉から城を出た
「なぜ門を通らぬのだ?」
「えぇ、あの門から出ていくと目立ってしまいますから」
「目立つのは嫌いか?我は好きだ」
「ふふ、はい・・・それにしても目立つのも好きだなんて本当に魔王様みたいですね」
アリスはおかしそうに笑うが魔王は少しだけ不貞腐れていた、小さな声で本当の魔王だから当然であろうと呟いた
「何か言いましたか?」
「いや、なんでもないでは案内してくれるか?」
「はい・・・お墓詣りに行った後どこかでお昼にしませんか?リンゴパイなんてどうでしょうか?」
「うむ、そなたに任せるとしよう」
ジルは驚いた、500年前の大戦でボロボロになっていた城下町がこうも変貌するものなのかと、そして人間がいることにも驚いた。
人と魔族が手をつなぎ歩いている二人とすれ違った魔王は平和そのものを感じながら少しだけ感動を覚える、あれほど憎み合っていた二つの種族がこうやって日常を共にしているのか・・・とそして魔族が非道な扱いをされていないことにだけはすべての人間に感謝していた。
道行く人々にアリスは呼び止められていた、町の人気者のようだ。
手に余る贈り物で躓きそうになるアリスを見て魔王は仕方がないと言いたげにすべての荷物を受け取る。
「我が持とうか?」
「いえ、そんな迷惑ですし」
「そんなことを言っているが足元がふらついているぞ、足元もちゃんと見えていないのだろう?先ほどからすれ違う人と魔族のすべてに気を使って避けているぞ、なぜだか知らぬがお主を見る目は暖かい気もしたがな」
「うっ・・・それもそうですが・・・すみません、お願いしてもよろしいですか?もうすぐ家のものとが来ると思いますので、その時に全部預けてもらっても構わないので」
「良いぞ、どれ・・・かなり重いな。このようなものを娘が持っていては危険ではないか、我が責任もって運ぶとしよう」
「ありがとうございます、それと私こう見えても力にだけは自身があるんです!リンゴも割れちゃいますよ!」
と力こぶを見せつけてくるがそんな細身でどこからと思いつつも実際は見えていない、アリスが受け取った荷物で視線がアリスの腕へと動かせなかった。正直早くこの荷物を受け渡したいと思う魔王である。
「つきました、ここが私の祖父と祖母・・・私の一族のお墓です。」
とついていった先はやっぱりと思う場所だった。
そこは500年前にも存在した魔王の一族が代々眠る墓でもあった。
500年前とは墓の数も違っており、封印されていた年月の重さを実感する瞬間でもあった。
アリスは自身の祖父母の墓へ行き挨拶をしている。
時間は少しだけ待っただろうか、入り口の方から男が一人入ってくるのが分かる、初老の魔族だろうか
魔王が見ている荷物にため息をつきながらアリスへと声をかける
「お嬢様、またご挨拶ですか?さすがに三日に一回は多すぎると申しているではありませんか、降霊の時でもお二方から言われているではありませんか、来てくれることはうれしいが自分の時間を大切にしなさいと、お約束を守れないのですか?」
「・・・じい、何度もいいっていますがこれは私の決めた行動であって私の大切な時間なんです。私のしたいことなんですが・・・不満がおありですか?」
「・・・頑固なところはマーサ様とそっくりでございますね・・・ところでそこのお方、お嬢様のお荷物をお持ちしていただきありがとうございます、ここからはわたくしがお持ちいたしますのでどうかお荷物を」
「うむ・・・すまないな、正直くたくただ」
「では・・・お預かりします。」
魔王は執事に荷物を渡した、荷物を持った姿に魔王は懐かしさを感じる。
「・・・そなたはクレイ家のものか?」
「はい?・・・えぇ600年前から魔王の一族にお仕えしております、カイン・クレイでございますが・・・?」
「そうか・・・相も変わらずこのように支えてきたのか、なんとも変わった一族よ」
「あの・・・何を言って」
「うむそうだった、まだ我の名を教えておらんかったな」
そういって一番大きな墓の前にこの国の礎を築いた王の墓の前で答えた
「初代大王の孫にして三代目魔王・・・最強にして溺愛の魔王と呼ばれたジル・ディープワンとは我のことだ・・・うむ、その顔はまだ信用していないようだな・・・では封印結晶が砕けているのが分かるはずだ、あとで確認してみるがよい・・・どうした?アリス?我が愛しい子孫よ」
「・・・き」
「き?」
「・・・きゅうっ」
気絶して頭から後ろに倒れたのだった。