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閑話 現世に堕ちし者

ちょっとアホみたいな文字数になりかけたので分割投稿になります。伏線撒く回及びローランドたちがどうして行動したのかな的な詳細説明。ただまあジルくん出てこないし、ローランドたちの行動そこまで気にならないなら正直最悪読まなくても大丈夫と思います多分。単純に物語読みたいだけなら読み飛ばしてOK。

「いい国だな」


 純粋に思ったことを、ローランドは吐露していた。その言葉にレイラも頷き、町を駆ける子供たちに視線を送る。

 町の光景を尻目に、魔導具を使って自分たちにしか聞こえない会話を続けた。


「王都だけじゃなくて、辺境の村とかも平和だったしね」

「ああ。まるで『終末』とは真逆だな」


 言外にこの国は違うんじゃないか、とローランドは口にする。


「そうだね。私の感覚にも、特に反応はないし」


 自分たちは『世界の終末』を回避するため聖女による『祝福』を授かっているが、レイラのそれが反応した様子は今もない。


 レイラの授かった『祝福』。それは未来予知じみた直感能力。

 聖女の予言ほどの精度はないし、使える場面も非常に限定的だが──副次効果によって単純な勘も鋭くなっている恩恵は大きい。尤も『祝福』とは関係ないただの勘を盲目的に信じるほど、彼女たちは愚かではないが。


「お前の直感が本当に『世界の終末』に対して働くのかよく分からんけどな。前例がないし」

「でも勘は良くなったよ。それに、世界を滅ぼせるだけの力を持つ相手なら常に反応してるんじゃないかな。これ、ようは自分の死に対する危機察知能力でしょ」

「ただの勘だろ。後者に関しても、お前より強い相手なら常に反応しそうだからあんまりアテにはならん」

「私より強い人っているのかな」

「大陸の頂点連中は強いんじゃないか」

「かもね。そういう意味では、ローランドの力って便利だよね」

「便利ではあるが、『世界の終末』回避にそこまで役立つかは微妙じゃないか? 正直、『聖女』ももうちょっと凄い『祝福』をくれよって思うんだが」


 一方でローランドの『祝福』は、相手の嘘を見破るという能力だ。相手が嘘をついていたら「あ、こいつ嘘をついているな」と分かる異能。


「そんなに凄い力を与えられるなら、『聖女』本人が世界を救えよってなるでしょ」

「いやまあそれはそうかもしれんが……」

「つまり『聖女』はそこまで凄くないんだよ。限定的に未来を見れるだけで」

「いや十分凄いけどな?」

「ていうか、ローランドの場合怪しい奴に『聖女の名の下に尋ねる。お前は、世界に終末を齎す者か?』とか聞いたら勝ちじゃん」

「……勝ちじゃん。もしかして俺凄いのか?」


 そして彼らは知る由もないが、ジルが目下一番脅威に感じている力でもある。彼が愚痴っていた「心当たりが存在してしまう時点で全て終わりだ」とはそういう意味であり、それ故にジルは高速で策を巡らせているのだ。嘘を見破られればその後付きまとわれるのは確実であり、最悪の場合戦闘に移行するのはジルとしては好ましくないだろう。


「まあ返事をされなかったらなんの意味もないけど」

「……」

「でも、聖女の予言に対して返事をしないってことは何かしら下心はあるでしょ。ならとりあえずそいつ殺しとけば良いんだよ」

「物騒すぎる……。ていうか、聖女の名前ってそこまで効果あるのか? 大国を退けた聖女本人ならまだしも。今の聖女の名前に」

「さあ。でも、全く無視はできないでしょ。小国が大国を退けるのは、何かしらがないとあり得ないことなんだから」


 小国と大国の力関係は一目瞭然だ。


 大陸に存在する小国の全てが呑み込まれていないのは、大国の領土同士が隣接して正面衝突しないための緩衝材として利用しているだったり、小国を気に入っている強者がいた場合どういう動きをするのか読めないだったり、そもそもあまり興味がないだったりという『小国側の都合を一切考慮していない理由』が多い。


 小国の全てが連合を組んでも大国の一つにすら勝つことはほぼ不可能とされており、それ故に大国を退けた『聖女』の名は大きい。


「当時の聖女って、めちゃくちゃ強かったのかね」

「どうだろう。一応、お淑やかだったらしいけど」

「そんなの絶対嘘だろ。絶対未来を読みながら山とか消し飛ばして高笑いするような筋肉ムキムキ女だぞ。いくら未来を読めたところで、大陸頂点と戦える戦力はないと厳しいだろ」

「逸話とかは大体脚色されるものだしね。後世で自分の権威を示すためにとかさ」

「聖女の場合は、清楚な女性を演じたんだろうな」

「まあ筋肉ムキムキな聖女よりは、清楚な聖女ってことにしておいた方がファンは増えそうだよね」

「当時の人たちが今に残されている逸話見たら爆笑してそう」

「ありそう」


 彼らの中で、聖女は筋肉ムキムキという認識が強まる。となると、今祖国でクッキーを焼いてそうな彼女も筋肉ムキムキなのかもしれない。岩とか片手で握り潰す系の聖女。なんとなく嫌だなと思い、逸話では清楚な聖女ということにしている説が真実味を帯び始める。


「ていうか、それよりはこの国だよ。どう思う? ローラン」

「いやだから、平和な国という印象だが」

「見た感想はね。──じゃあ聞くよローラン。考察したらどう思う?」


 レイラの声が一段と低くなり、その瞳から暖かさが消える。それに応じるように、ローランドは一度瞳を閉じた。


「……とてもじゃないが大国を退けた国とは思えない。少なくとも、今この国を見て回った限り判断できる戦力では不可能だ。つまり、戦力を伏せている」

「城の前に立っていた女の子は?」

「彼女は強いな。でも、御前試合全勝したんだろ? 一人だけ強くても意味がない」

「大国側が手を抜いた可能性は?」

「ない。あったとしても、小国に敗れるなんて結果だけは回避するだろう。そんなことをしたら、大国の威信に関わる。特に帝国は、その成り立ちからしてナメられたら終わりだ。内乱だって起きる可能性がある。世論は大事にしてくるだろう」

「『龍帝』は動いたのかな」

「『龍帝』が動いてなお敗北したなら、帝国は没落していてもおかしくない。まあ帝国に『龍帝』に勝てる存在がいることはないだろうから、鎮圧はできるか」

「手は抜いていないのに、『龍帝』は動かなかったの?」

「さっきも言ったろ……国にとって、世論はバカにできないんだ。『龍帝』が敗北することの意味は大きい。それだけは是が非でも回避する必要がある。『龍帝』の威信さえ残っていれば挽回は可能だからな。最悪の最悪は回避できる」

「じゃあさ──『龍帝』よりも強い人が、この国にはいるのかな」

「そうなる」

「……」


 レイラの表情が険しくなる。

 だが、ローランドの表情は変わらなかった。


「戦力を伏せていること自体は、なにもおかしいことじゃない」

「……なんで? ここは大陸の外れにある国だよ? 力を示しておかないと、大国に支配される可能性だってある。力を隠すのは、メリットよりデメリットの方が大きいんじゃないかな」

「そうとも限らないぞ。ここから一番近い大国は、あの魔術大国だからな」

「……あー」

「触れたくないだろ?」

「触れたくないね」


 即答だった。


「それに、見たまんまの印象ってのも大事だろ」

「?」

「裏を読むのは大事だけど、表向きの姿だって真実の一側面ではある。この国を見た印象は、平和な国……だろ?」

「……うん」

「なら、そういうことじゃないか。力があるからって、世界を終末に導くなんて結びつけるのは早計だ」

「だね」

「とはいえ効率を考えたら、力を持ってる連中片っ端から消すのが一番楽なんだけどな。でもまあ、違った時に不敬罪とかめんどくさいしなあ」

「それは言えてる」


 物騒な言葉で締めくくるも、しかし彼らの中ではこの国が世界を終末に導く可能性は非常に低い。であれば、このまま調査を続けてもあまり利益はない。骨折り損のくたびれもうけは、彼らにとって非常に回避したい行為であった。


 まずは他の国や地域を見て回り、何も分からなければ再びここに来るべきだと判断して──。


『いや、ローラン。それは早計だぞ』


 判断して、ローランドの腰あたりから声が響く。


「なんでだ? 普通にいい国じゃないか。難民の受け入れも行っているし、迫害されてた民族の人も多くいるらしいぞ。賢君そのものじゃないか?」

『ああそうだな。強者と弱者は、当然ながら弱者の方が多い。ゆえに多くの人間にとって、この国は善き国なのだろう。ある種の箱庭ではあるが、弱者の住みやすい世界を生み出すというのは支配体制における極致のひとつではある。だがそれゆえに、この国に今後の発展は望めん。弱者を一般的な基準として受け入れ続けるということは、競争という概念を生み出してはいけないということ。ゆえに、停滞し続けるしかない』


 世の中には必ず、強者と弱者の二つが存在するとソルフィアは語る。

 そしてそれは、どうしようもない事実だった。平等という言葉はこの世界から程遠く、それゆえにこの国を『非常に平和である』とローランドやレイラは判断したのだから。


『意思を有した生命の全てをありのままで受け入れるなど、神々でも不可能だ。この国は、弱者の受け入れ先としての機能は十分だろう。ようは受け皿だな。だがこの国が世界の覇権を握ることだけはあってはならない。そうなれば、世界はいずれ終わる。覚えておけローラン……進化なき世界とは、地獄そのものよ』

「……つまりなんだ。この国が大きく広がり続ければ、この世界は終わるってことか?」

『それはこの国の王の行動次第だ。だがこの国の在り方のまま進み続け、世界を支配しようとするなら終わるだろうな』

「……」

『言っておくがな、善悪の問題ではないぞ。善人が世界を救うとは限らんのだ。逆もまた然りだがな』


 祝福に反応しない。

 つまり、少なくとも嘘は言っていない。

 実際問題、本当の意味で全てを受け入れるなんて不可能ではあるのだろう。この国の王が全てを受け入れるつもりがあるかどうかは別として、現状のまま進み続ければどこかで破綻する。


 それこそ、一種の同調圧力が生まれるかもしれない。同調圧力に虐げられてきた者たちが、同調圧力で人々を虐げる。

 それは──


「しかしソルさんのそれは、長期的な視点で見た場合でしょう? ソルさんが言っている世界の終わりは、聖女の語る『三年以内の世界の終末』には当てはまりません」

『だがお前たちが存命中に、世界が終わらないとも限らんぞ』

「……それは。いえそれ以前の問題です。ソルさんの言葉は、少しばかり恣意(しい)的な気がします」

『ふん。それはそうだろう。これはあくまでも、我輩の意見なのだからな。我輩の価値観が多く含まれるのは当然だ。そこからどう判断するかはお前達次第。我輩は、我輩の意見を述べたに過ぎん』

「……それはそうですが」

『話を戻すが世界の終末など、神代ではありふれた話だ。お前達が回避しようとしている「世界の終末」の直後に、別の要因で世界が終わる可能性だってある。さらに言うならばこの世界は今、少しずつだが回帰していっているしな』

「……?」

『まあそれは置いておくとしよう。我輩の見解になるが、この国は歪だ。一体どのような方法で、ここまでまとめあげたのやら』


 彼らの頭上にて「ジル様の威光に触れ、服を脱げばこうなるのは当然の帰結だ。全身で余すことなく威光に触れ、なおかつ我々の全てを曝け出す。分かるか? これこそが真の信仰の──」などと口にする幻影が浮かんだが、彼らがそれに気づくことはなかった。なおその幻影は言葉の途中で「お前ちょっと黙ってろ」と殴られ、「口を慎めよヘクター!」と叫びながら吹き飛んでいった。


『とにかくだ、お前たちが自分たちの未来を守りたいのであれば……相手の都合など無視しろ。世界を救うというのは、世界を壊すよりも難しい。ならば相手の都合、意思、覚悟、その他全てを粉砕してでも自分たちの未来を勝ち取れ。それが一番の敬意というものだ。同情などするな』

「いやそんなのは当たり前だろ」

「相手の事情とかどうでも良いもんね」

「ああ。自分たちの命が一番大事だ」

『……我輩が言うのもなんだが、聖女とやらもこの者たちに世界の命運を託したのはどうなのだろうな。他に人選はなかったのか』

「国で一番強いのが私たちだったので。ね、ローラン」

「お前がアホみたいに賞金首狩りに俺を連れて行くからだろうが……」

『だが、ある意味理想ではあるのかもな。自分本位でなければ相手の目的によっては心が折れるやもしれんし……国ひとつを滅ぼしてでも、世界を救う必要があるかもしれんからな』


 ソルフィアの言葉に耳を傾け──ふと思った。


「なあソルフィア」

『なんだ』

「お前の言葉は、この国が大陸を支配するという前提で成り立つものだろう?」

『そうだな』

「ならそれはないんじゃないか。いやそもそも、弱者を受け入れるという形で結果として勢力の広がっている国が、大陸の支配に乗り出すのか……? 戦争とか好きじゃなさそうなんだが。調べた感じだと帝国との御前試合でも、誰も殺さなかったらしいし」

「ローランの言う通りだね。前提として大陸の支配がないなら、この国の在り方で世界が終わるなんてあり得ないよ」


 この国の政策は、弱者の救済のようなもの。現に町の人々は平和に暮らしていて、笑顔に満ちている。

 そんな国の王が、自ら大陸を支配しようなどと行動するのだろうか? 正直、ローランドにはそう思えない。

 

『武力による支配はないだろうな』


 そんなローランドの疑問に、ソルフィアはあっさりと首肯する。首肯して、続けた。


『だがなにも支配とは、武力だけで成立するものではない。この国ならそうだな、神殿のようなものが建っているし宗教的な支配を……待て、王に対する信仰心が強い。強すぎる。なんだこれは、異常だ。かつての神々を彷彿させる……特にこの人間はなんだ。あり得ない。なんだこいつ。なんだこいつの信仰心。本気で意味がわからんぞ何者だこいつ。順当にいけば神々の洗脳すら弾くであろう信仰心……本当に人間かこいつ……?』

「ソルフィア?」

『それにしてもこれほどの信仰……神格化が始まってもおかしくはない。天界への回帰などという現象が起きているのはまさかこのためか? そしてこのところ、それは加速している。……待て、だとすると──』

「ソルさん?」

『いや前提が違うのか? もしやこの国の王は、神の一柱か? 本体での降臨は不可能であるがゆえに、人間の肉体に堕ちたのか? この大陸を支配下においていた神々は確か北欧の連中だったな……悪神辺りであればやりかねんか。あるいは──』

「この大陸? 北欧? 悪神? なんだ、ソルフィア。なにを言っているんだ」

『ああ我輩としたことが、うっかりしていた。一度記憶をリセットさせねば。すまんなローラン。こればかりはまだ、お前でも触れない方がいい』

「おいソル──」


 ガクン、とローランドとレイラの頭が落ちる。糸の切れた操り人形がごとき挙動だが、しかし彼らの体自体は崩れ落ちていなかった。

 

『いずれにせよ一度この国の王を直接見る必要があるな……ローランには一度、王と対面してもらうとしよう。そしてその上で、ローランにも利益があるように……』


 そんな彼らをよそに、淡々とソルフィアは言葉を続ける。


『この国の人間で、我輩の「権能」に対して完全に抵抗できる生命体はこの国の王のみか。だがその王は現在一人と。ならば問題ない。これはあまり使い勝手が良くないし、次に使えるまでが長いが……神々の可能性があるなら捨て置けん。この国の人間全ての常識を、一度変えるとしよう。この程度の変化であれば、壊れる人間もいまい。よし、この案でいこう』














『一度この国の王に、面会を希望するのが良いかもしれんぞ。どうせお前達に損はない。世界の終末とやらを引き起こす者が、直接世界を終末に導くとは限らん。「うっかり世界を終わらせてしまった」なんてオチかもしれんからな』

「いや、一国の王相手に面会を希望をするのは難しいんじゃないか? 可能性としてはそこまで高くないんだし、後回しにして帝国あたりを一度調査すべきじゃないか? いずれ深くまでは探る必要はあることは否定しないが──この国の状況を見るに、ある程度情報を集めてからの方が効率がいいだろう。仮にも相手は、一国の王だ。村長じゃないんだぞ」

「いえ先ほど町の人が話していましたが、この国の王は他国の一般人であろうと都合が合えば謁見をしてくれるそうです。ならば一度、この国の王を見定めてみるのも悪くはないかと。効率的ですし」

「まじか……太っ腹な王様なんだな。無駄骨になるならめんどくさいが、そうじゃないなら話くらいしにいくべきか」

『決まりだな。世界の終末に関する情報を、是が非でも引き出せ』

「この国の王がそうとは決まってませんよ」

「そうだな。それに、謁見だけで分かるとは思えない」

『お前たちは視野が狭い……いや違うな。お前たちは焦りすぎなのだ。正直我輩としてもあまり気は進まんが……ひとつ、策を伝授してやろう』

「……?」

『いいか。この国は現在、水面下で勢力を広げている節がある。意図的にか結果としてそうなっているのかは分からんが……大国を実質的に取り込んだ以上、いずれは大陸全てを呑み込む可能性だってあるのだぞ? お前たちが隈なく探す必要がある、大陸の全てをだ』

「……まさか」


 だが確かに否定しきれない、とローランドは思う。

 この国が大陸を支配した結果世界が終わる可能性があるというならば、確かにその辺ははっきりさせるべきだ。

 

『加えて、城を見ろ。あの王が、こちらを見ているぞ』

「!」


 ソルフィアの言葉を受けて逸りそうになる心を抑え、ローランドはゆっくりと顔を上げた。

 直後、ローランドと『王』の視線が交わる。

 時間が停止したような錯覚を抱くと同時に、曲がりなりにも強者の一人であるローランドの体内を電流が駆け巡った。


(……あれは、強い)


 ドクン、と心臓が脈を打つ。

 一目見た瞬間に分かった。あれは、あらゆる意味で人類として完成されていると。

 何もかもが、あれは人類として最高峰の代物を備えている。完璧な人間などというものが存在するとすれば、それはあの『王』こそがそうなのだろうと第六感が訴えてくる。


 まさしく神のごとき存在。

 天上の領域に至りし者。

 ()の自分とは、文字通り格が違う。


(……? 「今の」ってなんだ。いや、それ以上に……なんだ?)


 それ以上に、あの『王』を見ていると肌がざわつく。己の中の『何か』が、あれを討てと叫んでいる。

 自分はそのためにこの世界に生まれ堕ちたのだと、何かが訴えてくる──!


「っ!」

『ローラン?』

「……なんでもない」


 視線を外し、呼吸を整える。

 なんだ、あの感覚は。

 親の仇でも目の当たりにしたかのような感覚だった。別に──世界を終末に導く相手と確定しているわけじゃないだろうに。


 だが。


「……レイラ」

「なに?」

「あの王様。もしかすると、あまり良くないかもしれない」

「……奇遇だね。私も、似たようなことを思ったかもしれない。あの人が殺した人の数……もしかするかもしれないし」


 だが自分たちの第六感を完全に否定する気にも、なれなかった。



ジルとローランドたちの謁見も合わせたら一万四千文字とかになりそうで「あかんやつ」ってなったので分けました。


ソルフィアさんの力で国民全体の常識が変えられたんですが、前話でジルが考察した「ステラだから」もずれてはないんですよね。

ただその場合原作主人公たちは多分面会希望してなかったんですが。

これも勘違いの一種!(迫真)


今話だけみても「?」な箇所多いだろうから早く次の話投稿するため執筆頑張るぞ。次回こそジルくんと原作主人公の謁見回です。


-追記-


ソルフィアのコンセプトはノベルゲーとかだとルートによったら敵対するdead end確定キャラです。


ソルフィアの「権能」で割と阿鼻叫喚な方が数名いるんで、現状のプロットでは今後ソルフィアはこの「権能」を使わないもとい使えない(=明かされることはない)ので軽く設定を。


とりあえずジルの国でソルフィアの「権能」に対する耐性の持ち主たち。


ジル「完全無効」

キーラン「ジルへの信仰心高すぎて殆ど効かない。ジルに関することなら完全無効」

セオドア「加護によって耐性あり。違和感を抱けば自分で過去の記憶のバックアップから記憶を戻して勝手に治す」

ステラ「加護によって耐性あり+魔術狂すぎてあまり効果なし。クロエの魔術食らってる最中は無効化」

ヘクター「加護によって耐性あり。強敵と戦ってる最中は無効化」

辺境の町の方々「そこそこ耐性あり」


ソルフィア本来の力出せないんで、基本的にある程度『神の力』を持っているなり強すぎる信仰心抱いてるなり強烈すぎる自我のある奴は弾いてきます。

例えば熾天とかなら全部満たしているので余裕で弾いてきますし、クロエは天然極めた自我の持ち主なのと僅かながら『神の力』を持ってるので普通に弾きます。エーヴィヒを筆頭とした『魔王の眷属』の方々はとある事情からソルフィアの「権能」自体が機能しません。とある事情はエーヴィヒを中心としたエピソードで明かされます。


洗脳系だけど、そこまで便利じゃありません。「常識を変える」「壊れない」などと言っていたように、あり得なくはない範囲で常識や認識をズラす程度。

ジルは亡命者受け入れで割と最近謁見行っているから出来る芸当であって、仮に原作ジルのように完全に姿を見せてない状態だとソルフィアが権能使おうが効果ないです。


ちなみにローランドとレイラは「権能」による洗脳は無効化してきます。

記憶のリセットはまた別の要因が絡んでいて、それは物語終盤あたりで明かされるネタになるので伏せます。ただ一応現在明かされている情報内でも憶測を含む考察でたどり着くこと自体はおそらく可能です。不可能ではないと思います。


能力の弱点を自ら暴露するやついねえだろに則って基本能力の弱点は言葉にさせない主義なんですが…ソルフィアさんのアレはノーリスクと思われたら流石にエグいのと、なんでもありやん思われるのでちょっとだけ弱点仄めかせるようにセリフを修正しました。内容としてはインターバルが長いってやつです。


ちなみに原作ではソルフィアさんは洗脳系の「権能」使ってないです。ローランドたちの記憶のリセットは「失言した時」だけやってます。


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― 新着の感想 ―
[一言] なるほど、これ以上ないくらい納得した。
[一言] 大分かっ飛んでんな神器さん どんな物語だったんだろ
[良い点] ワクワクさせる伏線でこれからが楽しみになりました。色々考察を勝手に考える楽しみが出来て良いです。 [一言] 原作世界にもこのソルフィアがいる上に主人公視聴範囲でこの洗脳能力が未登場というこ…
感想一覧
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