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管理人会議 前

お待たせしました。お待たせした甲斐はありまして、無事三巻の作業が9割終わりました。

(原稿は提出しました)

個人的には、webより面白くなったと思います。web版(4章該当)から前半部分はかなり変わったし、文章も読みやすくなったかなと。


そして、Twitterで23時になったらどんだけ中途半端でも投稿する宣言したので、最新話投稿しました。続きもすぐ書いて近日中に投稿できるよう頑張ります!!

感想も返していきます!目には通してます!ありがとうございます!!


〜あらすじ〜

マーニに招かれたジルくん、マーニの独特かつ異様な空気感に呑まれつつもいつも通り思考を回す。

そして話がひと段落すると、マーニから「管理人会議に参加してくれ後輩くん」と言われ……


 マーニが棲まう建物の一室にて、その五人は集まっていた。中央が空いた円形のテーブルを囲うように八つの椅子が置かれ、それぞれが座っている。

 

 ギャルのような雰囲気をした寝巻き姿の少女。

 煙管を片手に、妖艶な空気を纏った少女。

 貴人のような衣服を着込み、厳格な重圧を放つ青年。

 神聖的な衣装に身を包んだ、聖母が如き少女。

 深みのある笑みを携えた、どことなく仄暗い男。

 

 彼らこそが、各都市を治める管理人。月の頂点たるマーニから、各都市の管理自治を任命された傑物達。

 マーニに仕えるという共通目的を持つ彼らは、マーニが来るまでの間仲睦まじく談笑を──していなかった。

 

「第三、第四……そして第九都市の管理人が不在みたいなんだけどー。何かあったのかな?」

 

 第五都市管理人──アリア。

 

「第九都市の管理人が不在なのはいつものことじゃからどうでも良い。まあ仮に来たとて、罪人収容都市の管理人風情が妾と同等の席に座ることなんぞ許し難いがのう」

 

 第六都市管理人──カミラ。

 

「くだらん。お前の感情の方がどうでも良い。マーニ様のご意思こそが、全てにおいて優先されると知れ」

 

 第八都市管理人──セシル。

 

「……第四都市には上位災厄が出たと聞きます。シャロン様がまだ現役の【絶月(ナハト)】でもあらせられる以上、後処理で手間取っているのかもしれません」

 

 第二都市管理人──グラシア。

 

「クハッ。上位災厄相手ともなれば、あの女も奔走するだろうな。……にしても、俺は第一位を派遣しなかったが、【絶月(ナハト)】の第二位も派遣しなかったってのは、本当か?」

 

 第七都市管理人──グレッグ。

 

「事実じゃ。妾は第二位を派遣しておらぬ。救援要請もなかった。シャロンにしろゾーイにしろ、上位災厄を被害なく退けるのは不可能だと思うがな?」

「……確かに。シャロン様は全盛期より衰え、ゾーイ様はまだ青い。上位災厄を処理できたとしても、確実に死人が出るでしょう」

「ちっ、シャロンのゴミめ。マーニ様の所有物である住民を死なせるなど、管理人としての役割を果たしているとは言えんな。他の都市に借りを作るのを嫌ったのだろうが、それでは本末転倒だろう。私情を優先するなど、カスの所業と知れ」

「んー、でもシャロちんってさー、めちゃくちゃ優しいじゃーん? そんな判断ミスするかなー? 自治能力の証明云々より、住民が死ぬことを嫌がると思うけどー」

「あの女の行動の是非は知らんがね。マーニ様は今回、何も言ってこなかった。この事実にこそ真相が隠されていると思わねえか?」

「悲しいことですが、私も同意見でございます。マーニ様のご慈悲を与えるのに、第四都市の方々は相応しくなかったのかもしれません」

「ふむ。マーニ様にミスはない。故にマーニ様の介入がないのであれば、その判断に問題はないという考えか。じゃがのう、“マーニ様が何も言わないから何もしない“というのは、怠惰……甘えではないか? そのようなトップなど、案山子(カカシ)と変わらんじゃろて」

「この女に同意するのは癪だが、私としてもお前達に問いたいところだ。代行権限を賜りながら、マーニ様のご指示を待つしかできぬなど能無しも良いところではないか? 管理人としての役割を果たす気がないのなら、その座を降りろ」

「耳の痛い話だ。だが、ならば逆に問いてやろう。管理人に相応しいかどうかを決めるのは、お前達じゃないと理解しているか? 俺達は、あくまでもマーニ様に選ばれた身だ。その資質を疑問視するのは、越権行為も越権行為じゃねえか? クハッ、せっかくの機会だ。マーニ様に訊ねてみるとしようか」

「狸が……」

 

 ──実のところ、管理人同士の仲は決して良くはない。


 それを示すように、彼らの会話は互いを蹴落とすものが中心の内容で、更には相手に重圧(プレッシャー)を与え続けている。

 

 マーニに対する忠誠(信仰)を抱いているのは間違いない。マーニが死ねと命じれば死ぬし、マーニが白と言えば黒も白くなる。そういう価値観の者達であることは事実だ。

 

 しかし、マーニに仕えている者全てを自らの同格、同志として扱っているかと言われれば、それは否である。

 

 マーニのことを絶対視しているし、マーニの選択に間違いなぞあり得ないという共通認識がある。にも拘らず、こと管理人の選抜についてのみ、彼らはとある解釈をしていた。

 

 即ち──『己以外の管理人は消去法で選ばれたにすぎない。謂わば最悪の中の最善手であり、仮に己が八人いれば全ての管理人の席を埋めていたに違いない』という、なんとも都合の良すぎる解釈である。そして実際問題として、彼らは複数の都市を管理できるだけの能力を持ち合わせていた。それ故に、彼らは他の管理人のことを同志ではなく、競争相手として認識しているのである。

 

「無駄に争うみんなには管理人って役割が向いてないと思うなー。正直、私だけで良いんじゃない?」

「狐がしゃしゃり出るな。妾以外は下も下であることは明白じゃ。第六都市を軍事都市として確立させた妾こそが至高よ」

「ああ本当に煩わしい。お前達は、この私と同列に位置していると本気で思っているのか? おめでたい頭だ。お前達が享受しているあらゆる技術は、我が第八都市の技術が起源であることを忘れたか?」

「悲しいことですが、私以外の方々は管理人としての能力がマーニ様がお求めになる水準に達していないかと。第二都市とは、そういうことですよ?」

「オイオイ。まさかこの場でおっ始める気か? そういうのは嫌いじゃねえが、場所を選ぶことすらできねえんなら管理人なんざ辞職しちまえ」

「──少し静かにしろ、管理人ども」

 

 と、一色触発な空気を裂くように、テーブルの中央にヒューキが現れた。自然と、管理人の口が閉ざされる。

 

「お前達の優劣はどうでも良い。マーニ様の前では等しく同列だろう。口を閉じ、座っていろ」

「随分と機嫌が悪い……いや、これは機嫌が良いのか? なんにせよ、どうしたヒューキの旦那。これから愉快なことでも起きるのかい?」

 

 投げられた問いに対して、ヒューキは応じない。一瞬だけ視線を送ったかと思うと、すぐにその瞼を閉じた。その様子を見て、疑問を挟んだグレッグは肩を竦める。


「クハッ。取り付く島もねえな」

「【三煌士(グランツ)】の思考は読めんのう」

「ビル様はある意味分かりやすいと思いますが」

「アレはもはや災厄じゃろ」

 

 とはいえ、とカミラは先程まで放っていた重圧を収めた。

 いやカミラだけでない。

 この場にいる全員が重圧という名の矛を収めていた。そんな彼らの胸中は、至極単純。


(【三煌士(グランツ)】に喧嘩は売れぬ)


 これが仮に自分の都市の中であれば、メンツの問題もあるので多少は強気な態度を見せたかもしれないが……この場でそうする気にはならなかった。だがこれは決して【三煌士(グランツ)】を恐れているからではない。


(関係性の観点から見て、【三煌士(グランツ)】の方々はマーニ様に近いですからね)


 管理人と【三煌士(グランツ)】の間にある力関係は、非常に繊細だ。各都市において、マーニの代行を許される管理人であっても、【三煌士(グランツ)】の存在は軽視できない。それこそ【三煌士(グランツ)】を無碍にしたせいでマーニの考えに背いてしまった、なんてこともあり得るのだから。


 ──と。


「やあ、待たせてしまったかな」


 その声を聞いた瞬間、管理人達は一斉に椅子から降り、頭を下げて跪いた。


「別に僕が現れたからといって畏まらず、楽にしてくれて構わないんだけどね。どう思う? ヒューキ」

「申し訳ございませんが、あまり興味がありません」

「だろうね」

 

 ゆっくりと、マーニが腰を下ろした。

 円形のテーブルに置かれた椅子の一つ──ではなく、高座にある豪奢な椅子に。


「顔を上げてほしい」


 マーニがそう言うと、管理人達は素早く顔を上げた。


「今日はキミ達に人を紹介したくてね。第四都市の件……と言えば分かるだろうか? 他の都市に対する興味関心は薄いだろうけど、それでも上位災厄案件ならば話は変わるだろう?」


 災厄。

 管理人達が都市の自治運営をするにあたって、最優先に注意すべき事項である。何せ、一応対策がほぼ確立されているとはいえ、それでも未知の災害。それも、人々を問答無用で殺す災害だ。仮に無能な者が管理人になれば、住民全てが死に絶えた死の都市と化してしまうだろう。特に、災厄処理における最高戦力たる【絶月(ナハト)】の手綱を握れるかどうかは、管理人にとって重大な案件だ。


「不思議に思ったんじゃないかな? 上位災厄が発生したというのに、第一位も第二位も派遣されなかったという事実を。ならば第四都市は半壊したのか……と言われれば当然そんなことはなくてね。完璧に、上位災厄を処理してくれた立役者がいたんだ」


 ほう、と管理人達は感心を覚えた。

 同時に、「欲しい」と。

 特に、第一位と第二位を有していない管理人の目には仄暗い光が宿っている。


「是非とも、キミ達に彼を紹介したい」


 入ってくれ、とマーニが言って──現れた銀の青年を目にした瞬間、管理人達の脳に電流が如き衝撃が奔った。



 


久々の更新で新キャラが多いのはどうなんだと思いつつも、まあそれぞれがどんなキャラなのか今回の会話で妄想とかしていただけたらなと。


そして締切一時間を切ってから告知するなよ、もっと早く告知しろよって案件になるのですが、よければこのラノにご投票いただけますと幸いです!!

書籍版読んで「オモシロイ!!」ってなった方々、是非!!!


https://questant.jp/q/konorano2025

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― 新着の感想 ―
ちょっと気になったんですけど、この世界の女性って少女か童顔しか存在してない? ここまで少女しか出てないから流石に違和感あるけども 少女じゃなくて、「女」表記もたまにあるけど、幼さのある顔立ちだったり容…
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