上位災厄 決着
三月は二巻の作業に従事していたり、なんかリアルが多忙すぎて更新できずですみません!2時間睡眠が続くとハイになることを知れました!!
期間が空いたので前話で説明したのと同じようなことを書いている部分もありますが、あまり気にしないでください。暫くしたら多分該当部分の文章を消す程度のものです。
〜雑なあらすじ〜
ジル「なんやこの災厄めんどくさ」
災厄「■■■ーー!!」
ゾーイ「災厄退治の邪魔しないでほしいんですけど」
ビル「お前雑魚いから止めてあげてるねん。けど少しはやるやんけ。もう少しやれるやろ?やってみろ」
マーニ「たーのしいなー」
災厄の懐に飛び込み、拳による連撃を放つ。
しかしそれは、ピンポイントに展開されたスパークの障壁によって防がれていった。その硬度は最初のそれより高く、内心で思わず舌を打つ。
(範囲を狭めて密度が高まったことで防御力が上がった……だけではないな。単純に、防御に回す力を増やしてもいる。加えて、展開速度もかなりのもの。俺の打撃を完璧に凌ぐか……!)
猪口才な……と内心毒づきながら俺は災厄から離れた。
(ヘドロを介して俺から吸収した力を防御に回しつつ、持久戦を仕掛けてくる。本当に──)
──面倒極まりない。
勿論、犠牲を無視して構わないなら難易度は落ちる。ヘドロに触れている【光神の盾】から力を吸収することで防御力を高めているのだから、【光神の盾】を解除するだけでこの災厄は大きく弱体化するからだ。
だがそれをしてしまうと、当然ながら都市は半壊する。
災厄の足元から無尽蔵に湧き出るヘドロの海。【光神の盾】によって都市を呑み込む前に堰き止めてこそいるが、その水位は今も上昇しているのだ。仮に【光神の盾】を解除すれば、一瞬という言葉ですら生温い速度で都市全土を沈めることができるだろう。
故に、都市防衛を前提とすれば素直に厄介な手合いであることは間違いなかった。都市に一切の損傷なく完全に勝利を収められそうなのは、大陸上ではクロエくらいではないだろうかと思ってしまう程に。
(クロエならヘドロを凍結させながら本体を叩けるからな)
ヘドロのエネルギーを吸収するという性質ごと凍結させ、その隙に本体を叩けばそれはもう完封勝利である。超広範囲を攻める手段が求められる場合、彼女の戦力は一線を画している。タイマン勝負であれば【騎士団長】の方が脅威だが、戦略的価値ではクロエの方が勝る。そして、組織力で言えば本気状態のシリルが群を抜く。なんだかんだで、大陸最強格はバランスが取れているのだろう。なお、【人類最強】は外れ値とする。
(タイマン。そう、タイマンなのが厄介だ。俺が【光神の盾】でヘドロを止めている間に超高火力持ちが攻める……つまり、連携ができればそう対処が難しい話ではない)
だがその超高火力役が務まるゾーイは、未だに来る気配がない。かといってゾーイを待つという選択肢もなしである。それは即ち「ジル一人ではどうしようもないんだな」という印象を人々に与えることになるからだ。頑張って稼いできたジルに対する他人からの評価を、こんなところでで落とす訳にはいかん。
(このヘドロを介してエネルギーの吸収を行っている以上、ヘドロを消し飛ばしてやれば解決するんだが……火力と範囲がな)
俺が愛用している【光神の盾】を筆頭に、光神を由来とした【天の術式】は幾つか存在している。
だが、攻撃系の術式は非常に地味だ。数少ない攻撃系の術式である光剣にしたって、ヘドロを蒸発させるような火力と攻撃範囲を持ち合わせている訳ではない。
光剣を大量に創造して降り注がせたところで、この規模のヘドロを蒸発させることは叶わないだろう。【豊穣神の涙】クラスの密度があれば可能性がなくもなかったが、光剣を大量に創ったところで流石に地上全てを埋め尽くす規模の弾幕攻撃は不可能だ。
他の攻撃系の術式にしても、それは同様。このヘドロを一瞬でどうにかできる類のものは有していないのである。
(ヘドロを消し飛ばしてエネルギーの吸収を止める手段は諦めるしかないな……)
だがそうすると、エネルギーの吸収と、吸収したエネルギーを利用した高性能な防御を突破する手段が──
(──いや、待てよ?)
確かに、災厄はエネルギーを吸収している。
それも、都市が機能停止するレベルのエネルギーをだ。
だがそこから先……即ち、俺の【神の力】についてはどうだ? あくまでも【光神の盾】に込め続けている光神由来の力が吸収されているだけ。それも、等速で一定量のペースだ。【光神の盾】の展開が不可能になる速度でなければ、俺が疲労を感じる勢いでもなく、「流石に硬すぎる……いや待て、まさか」となってようやく気づく程度のものでしかない。
そもそも、持久戦を仕掛けてくる時点で答えは出ているようなものだ。
「……くくっ」
……本当に、バカバカしい。
以前相対した“何か“と類する能力を有していたことと、曲がりなりにも一瞬で都市を機能不全に陥らせたことから、俺は強く警戒し過ぎていたのかもしれない。
(複雑に考える必要はない。超広範囲を殲滅し尽くす一撃も必要ない。実に、実に簡単な話だった)
災厄処理を終える算段を整えた俺は、ゆっくりと口の端を吊り上げる。
そのまま悠然と両の手を広げて、災厄の前で静止した。
そんな俺の行動に反応して、災厄もこちらを睨んでくる。
簡単なコミュニケーションが通用する。その事実を再認識して、俺は更に嗤った。
「興が乗ったぞ、獣畜生」
エネルギーを吸収したければするが良い。
好きなだけ、満足するまで、思う存分吸収しろ。
お前には、これでもかというレベルで光神の力をくれてやる。
そう──過剰なレベルでな。
「不遜にも私の力を簒奪し、許可なく振るう暴挙。死罪ですら生温い処罰を与えるのが道理だが……許そう。故に褒美だ。貴様の吸収力と私の放出力……どちらが勝るか、魅せてみろ。災厄」
確かに、一定量ずつエネルギーを吸収する分には問題ないのだろう。
吸収したエネルギーを己の糧とし、自らの異能に還元することすら可能にし、循環を成立させているのだろう。
──だがしかし、急速にエネルギーを吸収した場合。果たして貴様の肉体は……保つか?
「これより貴様が試合うのは、有象無象の許容量を超えた力の奔流よ」
吸収したエネルギーを発散する時間も、溜め込む容量もないほどに注ぎ込まれた場合、お前は対処できるのか?
空気を入れすぎた風船が破裂するように。
限界を超えたダムが決壊するように。
──お前の肉体は、内側から弾け飛ぶんじゃないか?
俺が笑みを深めると同時、災厄の纏う空気が揺らぐ。
ある程度の戦略を立てられるということは会話が成立するということ。俺の意図を察した災厄が恐怖と焦燥に襲われ咆哮をあげるが──遅い。
「耐えてみせよ、災厄」
瞬間、俺は【光神の盾】に過剰なまでの力を注ぎ込んだ。
光量が爆発的に増し、太陽が地上に顕現したのではないかと錯覚してしまう程の眩い光が、世界を塗り潰した。
視界が真っ白に染まる。もはやジルの視力ですら、光以外を目視するのは不可能。それほどの領域に至り、そして。
「■■■■■■■■──ッッッ!?」
そして、災厄の叫びが世界に響く。
災厄の肉体では抑え切れないほどの力が溢れ、その体内を蹂躙していく。
ボコッ、ボコッと。災厄の内側から不気味な音が発せられた。
「持久戦による根比べなどくだらん。消化不良を起こすと良い、下郎」
災厄。お前は決して、無限にエネルギーを吸収できる訳じゃない。
無限にエネルギーを吸収できるなら、俺の光神の力を枯渇させるレベルで吸収できただろう。それはしないということは、つまりそういうことなのだ。
ならば話は単純で、俺はお前の許容量を超えるエネルギーを流し込むだけで良い。
限界を超えた時、それがお前の最期だ。
「どうした災厄。私はまだまだ上がるぞ?」
「────ッッ!」
バチンッと、電気の弾ける音が耳朶を叩いた。
俺の狙いを看破し、リアルタイムで体内に溜まったエネルギーを放出していく方針に切り替えたのだろう。
故に、ここからは真の根比べ。
俺の力が尽きるまで保つかどうか。ただそれだけの勝負だ。
お前のエネルギー放出が保つか、俺の光神の力が枯渇するのが先か。そんな単純な綱引き──
(──とでも、思ったか?)
内心で冷笑を浮かべる。
悪いが、ここまでの俺の発言と振る舞いは全てブラフだ。
いや正確には、内側から破壊するプランも確かに実行はしている。この策が成功して災厄を消せるのなら、それはそれで構わない。
(だが別に、本命は一つである必要はない)
確かにこの災厄は人の言葉を理解できる程度には知能があり、目的への筋道を構築し、悪くない戦術を取ることもできるのだろう。
だが、中途半端だ。
人類最高峰の頭脳には遠く及ばず、大陸有数の強者の上位勢の方が駆け引きに優れている。お前の行動パターンは、非常に単純なのだ。
そしてそんな中途半端な知能があるからこそ、こうして俺の演技を鵜呑みにする。
(まあ、騙されようが騙されまいが結末は大して変わらんだろうがな、
お前にできることは、そう多くない)
根性比べ? 綱引き? そんな真似を、何故しなければならない。そうしなければならないならそうするが、お前如きにそんな真似をする訳がないだろう。
──奴の中で急激にエネルギーが膨れ上がった部分。つまり、エネルギーを溜め込んでいるのは……そこか。
白く染まる世界の中では、俺の視界もないに等しいが……問題はない。
(人類最高峰の感知能力を、舐めるな)
直後。虚空に浮かべた光の剣が、定めた狙いを目指して飛翔する。
スパークによるピンポイントの防御障壁の展開は、ない。
視界を焼き尽くしたことに加えて、俺が過剰なまでに注ぎ込んでいる【光神の盾】から吸収しているエネルギーによって、災厄は感知機能も麻痺しているだろう。
加えて、先の俺の発言から災厄は根比べと余剰エネルギーの処理に集中せざるを得ない。
──故にこれは、詰みだ。
瞬間、災厄がエネルギーを溜め込む機関を、的確に光の剣が貫いた。
暴発し、爆散する災厄の肉体の一部。
風船を割った瞬間の爆発が如き現象が、災厄の肉体を大きく揺らす。
エネルギーを吸収する機能は停止し、災厄がみるみるうちに弱体化していく──!
「上位災厄と言えど、所詮はこの程度。終わりだ、下郎」
【光神の盾】を弱め、視界を元に戻す。
苦しむ災厄を冷笑を浮かべたままに見下ろし、俺は光神の力を拳に纏って振り下ろした。
§
地に沈む災厄。
それは、都市の脅威が去ったことを意味する。
災厄の脅威を言葉で認識していても、肌で感じ取った経験に乏しい住人にとって、今回の災厄はどう映るか。
そしてその災厄を処理したのが【絶月】でも都市管理人でも、災厄処理班でもないことを知れば──
「しかし成る程。思っていたより、後輩くんは慎重なのかもしれないね。あるいは遊んでいるのか。振る舞いからは後者に見えるけど、仮に僕なら慎重に動く場面だから、後輩くんの真意までは読めないのが残念だ」
「お戯れを。『──どちらでも構わないから考える気がない』……が正確でしょう?」
「さて、どうだろうか。ヒューキの言う通りかもしれないし、別にそんなことはないかもしれないよ。神は気紛れで、身勝手な存在だからね」
そう言って、金髪の青年は玉座から動くことなく微笑んだ。
「そろそろ僕も動くかな。……と言っても、大したことはしないんだけどね」
ようやくここまで来れたか……って感じの部分に辿り着いた。長かった。
なろう様が色々アプデしたから投稿に手間取ったらもしたらしい。作品設定が以前のままだと新規エピソードの投稿ができないとはね……。
実は災厄討伐にはもう一つパターンがあってどちらにするか忙しいながらも悩んでいたんですが、今回書いてるパターンにしました。もう一つのパターンについてはいずれ触れます。
という感じで締めて、作者は貯めていた感想の返信作業に入りたいと思います。返信内容は感想読んですぐ考えていたんですが、数ヶ月単位なので流石に忘れてしまった。久々にレビューも頂きまして、誠にありがとうございます。
今月はまだ更新予定です。よろしくお願いします。
そして何より今話の感想も、めちゃくちゃお待ちしております…!
〜以下、書籍版についての話なので興味がない方はブラウザバック推奨です。でもイラストだけは見てほしい〜
書籍作業についてはwebの3章に該当する部分が個人的に「ここ変えたい〜〜」ってずっと思ってて、その辺色々変えたりしてました。
加筆もそこそこあります。ニュアンスとか言葉選びとかその辺の細かいところをめちゃくちゃ(本当に細かいけど)色々変えたので、二巻はめちゃくちゃ読みやすくなったと思います。まあ変更後も僕の趣味なので癖はあるかもですが、webをここまで読んでくださってる方々ならむしろ好きな変更かと思います。きっと。
Twitter(X)で公開しているのでご存じの方もいらっしゃるとは思いますが、カバーイラストを公開します!
察しの良い方ならお気づきでしょうが、大きく映っているのは今章でも登場しているシリルくんです。顔が良いですね。
本屋さんの少年漫画コーナーに置かれないかな……流石に無理だしそれはそれで違うかな……。
というのも、僕自身こう、「ラノベの表紙を野郎が飾るような作品があってもええやないか」の精神で書き始めたのが本作ではあるのですが…12月くらいに本屋行ってネットの情報とかなしにラノベコーナー行って購入意欲が湧いたのは美少女が表紙の作品で、少年漫画コーナーで購入意欲が湧いたのはカッコいい野郎が表紙の作品だったんですよ。
なのでこう、ラノベコーナーと少年漫画コーナー半々ずつとかどうですか。本屋さん。
まあ男が活躍するラノベが読みたい方々は絶対いると思うんで、知名度上げ頑張ります。




