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火防女014 エル4

痛い描写があるので苦手な方は注意

グズグズと私の胸の中で泣き続けていたセンはしばらくすると

何事もなかったかのように胸を張り私の目線の高さまでふわりと浮く


『我はまた姿を隠すことにする』


突然そんなことを言い出したセンにポカンと口を開けてしまう。


「なんで?アレンさんがセンの言ってた協力者じゃないの?」


『いや、違う。我が言っていた協力者は貴族だ。

あの小僧からは貴族ほどの魔力は感じない、おそらくただの下働きだろう。だからまだ姿は晒さない、お前はリークイド家の者はどこにいるかあの小僧から聞き出せ。』


こちらをズビシと指差し偉そうに命令したセンは、そのままスゥっと壁の中へ消えていく

相変わらずの偉そうな態度に少しイラっときたが、センとの他愛のない会話で先程までの不安な気持ちがどこかへ吹っ飛んでいった。

本当は私にも姿を表すことなく隠れ続けるつもりだったのだろう

しかしアレンさんに殺気を向けられ怯えていた私を見て仕方なく出てきてくれたのだろう。

不器用な優しさにクスリと笑い、小さくありがとうと呟く


センに出鼻を挫かれたが、改めてアレンさんと話そうと立ち上がる。

足がズキリと痛むが、目覚めた時と比べるとだいぶマシになっている。

痛む足をゆっくり踏み出し部屋から出る。

部屋から出ると人が二人並んで歩ける程度の広さがある廊下にでる

廊下を見渡すと、私が寝ていた部屋と同じような扉がいくつか並んでいた。

5・6部屋ほどあるので結構な広さがあるお家だった。

廊下には部屋だけではなく下へと降りる階段もあった、

階段を目指し、壁に手をつけて慎重に歩みを進める。


時間をかけて階段まで辿り着き、階下を覗く

下の階は食堂のようで、長テーブルが1つと椅子が何脚か置かれていた。

食堂には二つ扉があり、片方だけ開いている。

アレンさんはあの扉の先かと目処をつけて、引き続きゆっくり慎重に階段を降りていく。

一段一段に細心の注意を払う、ここでズッコケたらせっかく治ってきた怪我がまた増えてしまう。

手すりに縋り付きながらぷるぷると震える足を下ろす。

あと3段で下り切ると思った時、突然閉まっていたほうの扉が開く

階段を降りることに集中していた私は、突然の乱入者に驚き、まさに今降ろそうとしていた足を盛大に滑らせ階段から落っこちる。


「ふぎゃぁあ!!」


猫の子のような悲鳴をあげながらズダンッと大きな音を立てて階段を転げ落ちる。

幸いにもほとんど降りきっていたので、転げ落ちた高さも大したことがなかった。

それでも強かに打ち付けたお尻はジンジンと痛む

涙目でお尻をさすっていると、先程扉を開いて食堂に入ってきたアレンさんがこちらをジッと見下ろしている。


「何をしているんですか?」


いつもの微笑を取り払い冷酷な真顔で問いかけられた。

怖い・・・。

殺気は感じられないが、身に纏う雰囲気はいつものアレンさんとは別人のように冷たい、今も座り込んでいる私をただ見下ろすのみで、手を貸そうとはしてくれない。

私が知ってるアレンさんなら大丈夫かと問いかけながら手を差し伸ばしてくれるはずだ。

今目の前にいるアレンさんはいつものアレンさんじゃない。

そう感じて座り込んだまま少し距離をとる


「あ・・・・アレンさんとちゃんと話しがしたくて・・・。」


「話?なんの話ですか?」


アレンさんが一歩こちらへ近寄ってくる

反射的に体がビクリと震える


「わ、私の目的の話です・・・。」


「あなたの目的・・・・あぁ火喰鳥のことですね・・・・」


アレンさんが私を見ながらフッと蔑むように鼻で笑う


「どこから聞いたのか知りませんが、あなたも火喰鳥の力を求めてやってきたんですか?バカバカしい。あれが人の手でどうにかできると本気で思ってるんですか、あなたのような大バカ者が今まで何人来たと思います?そしてどうなったと思います?」


まくし立てるようにそう言うと、アレンさんは私の胸ぐらを掴み上げ、無理やり立たせ近くの壁へと叩きつける

思ったより強く叩きつけられ肺の中の空気がコフっと漏れ出る

そのまま私を壁に押し付け顔を近づけてくる


「最後の警告です、帰りなさい。」


ゾッとするような冷たい目をしたアレンさんが私の目と鼻の先でそう告げる。

あまりの恐怖に手足に力が入らず涙が溢れてくる

震える唇をどうにか動かし


「いやです・・・・。」


はっきりと拒否した。

瞬間、強烈な殺気が私を襲う。

目の前のアレンさんは目を細め眉根を寄せ、こちらを射殺さんばかりに睨みつけている。


「そう・・・・ですか。」


そういうと私の胸ぐらから手を離す。

私は解放された胸ぐらに手を当て怯えたようにアレンさんを見上げる

一瞬だけ、アレンさんがものすごく辛そうな顔をしているように見えた。

しかし次の瞬間には先程までの冷酷な顔に戻り、私の左手をひねり挙げた。

痛いという暇もなく私の左手を壁に押し当て、その手のひらにナイフが突き立てられていた。


「あ、あああああああぁぁぁぁ!!!!」


鋭い痛みが左手に突き刺さり、言葉にならない悲鳴をあげる

ナイフは手のひらを貫通して、手と壁を繋ぎとめている。

微妙に高い位置に突き立てられたので、背伸びをしないとナイフがジリジリと私の手のひらを引き裂いていく。

痛みから逃れるように背伸びをしてナイフを抜こうとする

しかしその手はアレンさんに止められた。


グッと私の右手を握ったアレンさんは左手と同じように壁へと叩きつける

口からッヒ!と小さな悲鳴が溢れる、これから右手に何をされるのか、左手を見たら予想ができた。


「や、やめ・・・・」


縋るようにアレンさんに懇願する

しかしアレンさんは冷酷な顔のまま顔を横に振る


「警告はしました」


そうポツリというと右手にナイフを突き立てられた


「あああああああああああああ!!!!!!」


喉が枯れんばかりに叫ぶ、痛い、痛い、痛い

私の両手はナイフによって壁に張り付けにされ身動きがとれなくなった。

それを確認したアレンさんは私から離れると、今度は手に刺したナイフよりすこし小ぶりなナイフを私の目に突きつけた


「あなたは何者ですか?

火喰鳥のことを誰に聞きました?

どの貴族があなたを先導したんですか?

全て正直に答えてください、嘘だと判断したら・・・・わかりますよね?」


目の前でゆらゆらと揺れるナイフの切っ先を目線で追う

殺される、きっと全部正直に話しても信じてもらえず殺される。

恐怖と痛みで口からは言葉がでず、ヒュッ、ヒュッといった空気が漏れる音だけが出る。


「黙秘・・・・ですか、いいでしょう。」


目の前で揺れていたナイフが私の左手の小指に当てられる

何をされるか一瞬で理解してしまい、必死に顔を横に振る


「まぁ・・・・20本ありますからね、ゆっくり聞いていきましょう。」


ナイフに力がはいり、小指の薄皮が斬られ、ぷくりと血が溢れ出てくる。

もう嫌だ、こんなの嫌だ。

必死に顔を振り口をパクパクと開閉するが、それでも言葉がでてこない

ジワジワと小指の痛みが増していき、目からは止めどなく涙が溢れる。

そしてアレンさんが小指を切断しようとスッと息を吸い込んだ瞬間



アレンさんが私の目の前から消えた





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