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火防女011 アレン7

「では僕の後についてきてください」


ソコナイ・ジーナと傭兵たちを引き連れて吹雪の中を歩きだす。

教会から出た瞬間に視界は白に染められ、真後ろにいるはずの人間がまともに見えなくなる。

はぐれないために僕にロープを括り付け、全員にロープを握ってもらい、ついてきてもらう。

1時間ほど黙々と歩くと例の氷の洞窟にたどり着く


「すげぇー」

「綺麗だな」

「これ売れないか?」


傭兵たちは口々にそう言って洞窟内を見渡している

ソコナイとジーナも洞窟の美しさに目を奪われ辺りをキョロキョロと見回している。

もうすぐ最奥部というところで一度止まり、ジーナたちに振り返る


「もうすぐ火喰鳥が封印されている最奥部です。今は聖女様の結界に囚われ動くことができません、しかし結界は外からの衝撃に非常に脆いです。くれぐれも攻撃など仕掛けないようお願いします。」


傭兵たちはコクリと頷いてくれた

そのまま最奥部に向けて歩き出し、火喰鳥と対面する。

そこには15の誕生日に見た時と変わらず、巨大な怪鳥が氷の中に閉じ込められていた。

暗く深い眼孔がまた僕を睨みつけているように感じられた。

その視線から逃れたくてジーナたちを振り返る。


皆一様に火喰鳥を見つめて固まっていた。

ジーナは綺麗な金色の瞳をこれでもかと見開き、陸に打ち上げられた魚のように口をパクパクと動かしている、あまりの恐怖に言葉がでないようだ。

その足元では鬼火狐が全身の毛を逆立てながら威嚇している。

ソコナイはその場にへたり込み、顎が外れんばかりに口を開いている。

傭兵たちも武器に手をかけ硬直している者、ただ呆然と火喰鳥を見上げる者、その場から逃げ出そうとジリジリと後退してる者と様々だった。


僕もはじめてのときは同じような反応だった。

彼女らの気持ちは痛いほどわかる

気持ち強めに手をパンッと叩くと硬直していた全員がビクリと肩を跳ね上げる。


「落ち着いてください、あれは封印されています。こちらに危害を加えることはできません。」


「ぼ、坊や?これ・・・・コレが火喰鳥なの?」


ジーナが顔を青ざめながら僕に問いかける。

その声は震え、違うといって欲しそうな目をしている。

その反応だけで僕は賭けに負けたのだとわかってしまった。

内心の落胆を隠しながら答える


「えぇそうです。これが400年前ネーヴェ様に封印された魔獣、火喰鳥です。さぁジーナ様、ビーストテイマーとやらの力でこの化け物を調伏してください。」


大仰に手を広げジーナを促すが、ジーナはゆっくりと首を振る


「む、無理よ・・・こんなの・・・・こんなの調伏できるわけがない」


頭を抱えて座り込むジーナがポツポツと言葉を零す


「なんなのこの魔力・・・・私の何倍・・・・いや何百倍あるっていうのよ・・・。こんな魔力の塊、()()()()()()()()()()()・・・。無理、私の魔力じゃ全然足元にも及ばない、無理よ・・・。」


「ジ、ジーナ様!?」


正気に戻ったソコナイがジーナに駆け寄りその肩を掴みユサユサと揺らす

しかしジーナは狂ったように頭を掻き毟りボソボソと「無理・・・無理よ。」と呟いている。


先程までの自信たっぷりだったジーナの姿はもうなく、そこには火喰鳥に怯える女が蹲って泣いているだけだった。


「(やっぱりダメだったじゃないか・・・。)」


僕は軽蔑と落胆を込めた視線をジーナに投げかける。

期待していた、彼女ならどうにかできるんじゃないかと

しかし結果はこの様だ、彼女も僕や師匠と同じように火喰鳥に怯え絶望してしまった。

やはり僕を救える存在はこの世界にはいないのだと思ってしまう。

心に灯った暖かい希望が一気に萎み、氷のように冷え切る

やるべきことをやろう、そう思いジーナに近づく


「ジーナ様?もうよろしいでしょうか?」


自分でも驚くほど冷たい声がでた

ジーナがびくりと震えてこちらを見上げる


「・・・・え?」


僕は腰からナイフを抜き、突き上げるようにジーナの胸に突き刺す。

何が起きたかわからないジーナは恐る恐るナイフを握る僕の手に触れた。


「ど、どうして・・・?」


その瞬間、ジーナの口から大量の血液が吐き出された。

ゴボッと嫌な音と共に吐き出された血液が僕の袖を濡らす。

その光景を真横で見ていたソコナイは信じられないものを見たように驚き硬直している。

ジーナに刺したナイフを抜き出すと傷口から大量の血液がこぼれ落ちる。

抜いたナイフをそのままソコナイの喉に突き刺す。


「ぐっぇ・・・」


ソコナイは踏み潰されたカエルのような声をあげながら苦悶の表情で仰向けに倒れる。

そこで傭兵たちが事態に気づく


「て、テメェ!!!何してやがる!!」


武器に手をかけ硬直していた男が武器を抜きこちらに襲いかかってくる。

ソコナイに刺さったままのナイフを抜き取ると、迫ってくる男に向かって構えた。

男が上段に構えたロングソードを僕に対して振り下ろす。

師匠に比べると遅すぎるその攻撃を容易に躱し、剣を振り下ろしたことでピンと伸びる腕をナイフで切りつける


「っぐ!!テメッ・・・」


腕を切りつけられた男はそのまま剣を取り落としてしまう。

その隙を見逃さず男に足払いをかけ、倒れたところに馬乗りになる。

そのまま男の胸にむけてナイフを振り下ろし心臓を突き刺す。

ゴボッとジーナと同じく血を吐き出した男はそのまま絶命する。


男の死亡を確認して立ち上がろうとすると、真横から鋭利な爪が僕の頭を狙って振り払われる。

間一髪、振り払われた爪とは逆方向に転がり爪を回避する。

攻撃のきた方を確認すると、そこには5つの尻尾をもった、身の丈2mほどの大きな狐が怒りに瞳を染めてこちらを睨みつけていた。

ジーナの連れていたキリコだ、先程までのエリマキサイズは仮の姿で、今の姿が本性なのだろう。

主人を殺されたことで怒り狂っている、今すぐにでも噛み殺してやるというように牙をむき出しに唸り声をあげている。


ついでに残りの傭兵たちを確認する、ロングソードを持った頬が痩けている男は剣を抜きこちらを牽制している、弓を構えている髪の長い男も矢をつがえこちらに狙いを定めている、もう一人メガネをかけた魔術師風な男がいたがすでに姿は見えない

メガネの男は先程火喰鳥を見たときにジリジリと後退していたので

この騒ぎに乗じて逃げ出したのだろう。


逃げたのは後回しでいい

目前の鬼火狐と傭兵2人に向けナイフを構える。


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