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火防女009 アレン6

「魔種族の相手は国軍の仕事でしょう。

いつも通り国軍に任せておけばいいじゃないですか」


国軍とは対魔種族用に編成された軍隊だ。

平時は人類領と魔種領の境界線の巡回、監視や国内に出没した魔種族の討伐などが主な任務だ。

今回のような緊急事態の場合は国中に散らばっている国軍が集まり

人類領に侵入してくるまえに迎え撃つことになっている。

実際数十年前にあったという魔種族の侵攻は国軍が食い止めたという話である。


「そうね、魔種族との戦争は国軍の仕事だわ・・・。

だけど言ったわよね『最悪のタイミング』だって」


「最悪のタイミングとは?」


「・・・・・今人間領では謎の奇病が蔓延しているの

ある日突然高熱が出て、()()()()()()()()()が浮き上がってそのまま死ぬ奇病がね。国軍は今その病気の対応に追われて手が離せないのよ」


過去この国では何度も流行病で荒れたことがある。

その度龍神教から薬師や神父が国中に派遣され対応されていたが

今回の流行病はいつもより規模が大きく、龍神教だけでは手が足りず国軍の人間も駆り出されているらしい。

国軍は流行病の対応に人員を割いているせいで十分な戦力が前線に派遣できず、苦戦を強いられているようだ。


「そんな緊急事態だから王は一つの決断をしたわ

貴族の徴兵、戦闘能力を有する貴族を戦場に派遣したの」


貴族は人間の中でも特に魔力の保有量が多い

それ故に数も少なく、また魔法科学に欠かせない人員として需要は高い。

今や魔法科学は人間の生活に欠かせないものとなっており、その要である貴族を徴兵しなければいけないほど状況は厳しいものとなっているらしい


「私のお父様とお兄様も戦場へ連れていかれたわ・・・。

それでも勝てるかどうかはわからない、それほど戦力差があるの。

だからこそ・・・・・戦力差を覆せる圧倒的な力が必要なのよ。」


力強いジーナの瞳が僕を睨みつける。

状況が逼迫しているのは理解したが、それと火喰鳥がどう結びつくのか僕には未だよくわかっていなかった。


「事情は理解しました、あなたが戦争のために火喰鳥を求めているのも理解しました。

しかし火喰鳥は魔獣です、とても人が手なづけることができるとは思いません。」


魔種族と一括りにしているが、魔種族には大きく分けて二種類に分けられる。

魔物、魔種族の8割を占める多種多様な生き物、知性があり独自の文化を築き上げ同種族で群れを成し生活している。

魔獣、知性はなくただ本能のままに暴れる獣、人も魔物も関係なく襲いかかる危険な獣で意思の疎通は不可能と言われている。


火喰鳥は魔獣に分類されており、400年前も手当たり次第に暴れまわっていたとだけ記録が残されていた。

そんな火喰鳥の封印を解いたところで国が抱える問題を一つ増やすだけであり、なんのメリットもないとアレンは考えている。


「(封印が解かれたらその時点で人類の滅亡が決まるかもしれませんけどね。)」


不貞腐れたように心の中で吐き捨てる

そんな僕に気づきもせずジーナは答える


「安心して、私はビーストテイマーよ。魔獣の扱いには自信があるの」


「ビースト・・・・テイマー?」


聞いたことがない言葉に思わずオウム返しをしてしまう。

ジーナは信じられないというような顔をする


「ビーストテイマーを知らないの?最近すごく話題になったじゃない!!知らないはずが・・・・・・あぁ〜こんな雪山に引きこもってたら社会に疎くなるのは当然かしらね。」


ジーナはかわいそうな子を見るような目でこちらを見つめてくる。

田舎者とバカにされたが事実なのでぐうの音も出ない。


「まぁ百聞は一見にしかずってね、キリコ起きて」


ジーナが首に巻きつけている狐のエリマキを優しく撫でると狐のエリマキの目がパチッと開く

そのままジーナの肩から飛び降り、大きな尻尾を左右にゆらゆら動かしながらこちらを見上げてくる


「え、エリマキが動いた・・・!?」


思わずエリマキから一歩距離を取る


「驚いた?鬼火狐のキリコよ。私と契約してる魔獣よ。とても大人しい子だからそんなに怯えなくても大丈夫よ。」


キリコと呼ばれた、エリマキだった狐がきゅんきゅん鳴く。

鬼火狐といえば魔種領に生息する火魔法を扱う危険な魔獣だ。

気性は非常に荒く、人にも魔物にも懐かないと聞いている。

名前にもある『鬼火』という青白い炎を操り、鬼火に触れた生物は瞬く間に青白い炎に包まれ焼き殺されるという。

それがこんなに人に懐くなんて俄かには信じられない。


ジーナの足に体をこすりつけながらきゅんきゅん鳴くキリコをジーナが抱き上げる。


「この通り、魔獣とは思えないほど大人しいでしょ?これがビーストテイマーの力よ、魔獣と従属契約を交わして意のままに操れるの。」


「つまりその力で火喰鳥とも従属契約を・・・?」


「その通りよ、これでも私、王都では指折りのビーストテイマーなのよ。」


ふふんっと胸を張るジーナ

鬼火狐を連れ歩いているとうことは本人の言う通りかなりの実力者だと思われる、もしかしたら本当にこの人なら、火喰鳥をなんとかしてくれるのではないかと期待してしまう。


「・・・・・本当に可能なんですか?」


訝しげに問いかけてみると、ジーナは顔を引き締めて答える


「実際にできるかどうかは実物を見てみないと断言できないわ

だけど私はできると思ってる、従属契約は術者と対象の魔獣の属性が一致していれば成功率がぐんと上がるの。私の属性は火、火喰鳥の属性も火。きっと成功するわ。」


赤い唇をニヤリと歪ませて自信たっぷりにこちらを見返してくる。

その笑みは失敗するなど微塵も思っていない、自信に満ち溢れていた。

その顔を見ていたら僕の中に暖かい希望が湧き出てきた。

火喰鳥から解放されるかもしれない


「わかりました、ご案内します。」


僕は彼女に賭けてみることにした。


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