火防女000 プロローグ
初投稿です、日本語の練習も兼ねての作品です
ザクザク…ザクザク…
踏みしめる雪の音と視界を真っ白に染め上げる吹雪の音だけが耳に届く
叩きつけるような吹雪が僅かに露出した顔に叩きつけられる
ザクザク…ザクザク…
太ももまで降り積もった雪を掻き分けながら前に進む
ずいぶん前からもう足先の感覚がなくなっている。
それでも前に進む足は止まらない
ザク…ザク……ザク…………ザク……
『おい、無茶だ。引き返せ』
厚手のローブの下からくぐもった声が私を戒める
引き返す?どこに?帰る場所などもうどこにもないのに
私はその声を無視して黙々と歩き続ける
ザク………ザク……………
『バカが…このままじゃ死ぬぞ』
『おい!聞いてるのか!無視するな!』
『一度戻ってもっとちゃんと準備してだな…』
『無視するなよぉ…ほんとうに死んじゃうぞ…』
『……………ぐすっ』
無視し続けてたらとうとうベソをかきはじめてしまった
普段は不遜なくせに追い詰められると幼児性を出す彼に
思わず笑いがこみあげてくる
ザク…………………ザク……
もうどのくらい歩いただろうか
息をするのも苦しくなってきた
全身が凍りついたように動かしにくい
いよいよ限界がきたのかもしれない。
杖にすがりつくように体を引きずる
まだ止まれない、使命を果たすまでは…
………………………
頭がボーっとする…体に力がはいらない
杖にすがりついたままズルズルと座り込んでしまう
瞼が重い、このまま眠ってしまいたくなる
『おい!寝るな!死ぬぞ!!バカ!!おい!!エル!!起きろ!!!』
彼の声がどんどん遠くなる
意識が遠のいていく、私はここで死んでしまうんだろうか
一族の思いも自らの使命も果たせぬままこんな雪の中で…
悔しさと後悔に押しつぶされるように私の意識はそこで途絶えた。