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ミッシングリンク   作者: ケサボン
2/8

チーム

野沢博樹は、バスケットボールの練習に向かう電車の中で、

さっきの出来事を思い出していた。



なんで探偵が俺のところにくんだよ…



博樹は自分自身がなぜこんなに苛立っているのか

わからなかった。


探偵が、大好きなバスケットボールチームのことを

根掘り葉掘り聞いてきたからか。


それとも、


昨日の夜から痛み出した右奥歯の虫歯のせいか。



チームのことを聞くなら、

代表のちょうさんのところに行けばいいのに……



30分前のことが走馬灯のようによみがえる。



あぁ、今日、練習があること、探偵に言っちゃったなぁ……



あの勢いなら絶対にくる。



そしてまた思い出す。



明菜さんが結婚してて、

2人の子供がいることも喋っちゃたよ……



でも、

なんで探偵がチームのこと聞きにくるんだろう。



ぜんぜんわかんねぇ。



このイライラの原因は、やっぱりあの探偵だ。



明菜さんことすげぇ驚いてたんだよなぁ……


まぁ、明菜さんは美人だし、

もしかして、あの探偵、明菜さんのこと……



電車のドアが開いた。

降りる駅までは、あと3つ。



「よぉ!」


「ひぇ!」


ふいに肩を叩かれたことと、変なことを考えていたせいで

甲高い声が出てしまった。


「変な声だすなや」


玉城浩二はにやけながら、博樹の頭をはたく。


玉城は、バスケチームのメンバー。

練習に参加するのだろう。大きなバックを持っている。


「たまさん、ちょっと聞いてくださいよ」


「うんこ?」


「なんでうんこなんすか。家でしてきましたよ。あっ、たまさんのところにもきました?」


「うんこ?」


「うんこじゃない! 探偵です、探偵!」


「探偵?」


怪訝な顔をしながらも、絶対にうんこを挟むタイミングを計ってる。

気をつけなくては。


「さっき、家に探偵が来たんすよ。チームのことが聞きたいって」


「まじかよ。うんこじゃなくて、探偵?」


「家にうんこが来たっておかしいでしょ。探偵って言ってましたよ。次は大吾さんと話がしたいから、立ち寄りそうな場所とか知ってたら教えてほしいって」


「大吾? そういえば大吾、みねぇなぁ。もう1ヶ月ぐらい連絡もねぇし、ツィートもないよな。でも、本当に探偵だったのか?」


「あっ、名詞もらいました。えっと、これだ」


ポケットにしまっていた、名刺を取り出す。


「くしゃくしゃにすんなよ。え~、琢己コスナ―。すげぇ、名前」


「今日の練習、見に来るって言ってましたよ」


「お前、教えたのかよ……」


「すんません」


電車が駅に滑り込む。

あと2つ。


「大吾かぁ、あいつ、身寄りがいないし、ちょっと心配だな」


「そうっすね」


「それにしても、なんで探偵がチームのことを聞くんだ?」


「それがわかんないっすよ。あぁ、大吾さんの捜索願を出したんじゃないっすか?」


「だから、誰が出すんだよ。身内もいないし、彼女もいなかったはずだろ」


「あぁ! たまさん、ここだけの話って約束してくれます?」


「なんだよ、まさか、おまえ…」


「……はい」


「うんこか?」


してやったり顔の玉城。


「………これは噂っすよ。大吾さんと明菜さんが付き合ってるんじゃないかって」


「まじかよ。おまえ、それって」


「俺もビックリしてるんですって」


「どこからの噂だよ」


「ユウマくんっす」


「お前なぁ、明菜さんの子供じゃねぇかよ」


「もう中1っすよ。わかる年齢っすよ」


「なんて言ってたんだよ」


「練習終わったあと、お母さんと大吾さんがふたりきりで体育館倉庫で話してた」


「中学生かよ!」


「中学生です」


「練習終わったあとなんだから、倉庫にも行くし、ふたりっきりになっちゃうことだってあるだろう。そんな程度で真に受けんなよ。お前、探偵に言ったのか、それ」


「言ってないっすよ。ちょうさんには言いましたけど」


ちょうさんとは、チームの代表。岡田長介。


「バカ。ちょうさんには言うなよぉ。ちょうさんが明菜さんを好きなこと知ってんだろうが」



電車が駅に到着。

あとひとつ。



「ヒロ、それをちょうさんに言ったのは、1ヶ月くらい前じゃない?」


「えぇ! なんでわかったすか?」


「だって、最近、ちょうさん変だもん。目がうつろというか」


「でも、ちょうさんだって本気じゃないですよ。だって、明菜さん、結婚しるんだから」


「まぁなぁ」


そろそろ練習場のある最寄り駅に着く。

この駅に着くと、気持ちはバスケットモードに入る。


ふたりでホームに降り、

改札口に向かって歩き出す。


平日の夕方だけあって、

帰宅を急ぐサラリーマンやOLでごった返している。



改札を抜け、駅のロータリーへ出た。


バスやタクシーが行きかうロータリーに

場違いな白いトラックが1台。


そのトラックの前に

男がひとり。


チームメイト

室塚公平が手を振っていた。


お読みいただき、ありがとうございます。

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